中国でも猛暑グッズバカ売れ、男性向けおしゃれ商品も人気に【中国マーケット点描】
元中国国立大学日本語教師の翻訳ニュースライター 浦上早苗さんが、
中国消費者のリアルから中国マーケットの今を浮き彫りにする
【中国マーケット点描】
今年は中国も日本と同じく猛暑の夏となっていて、暑さ対策商品の消費が急増しているようです。現地のニュースと調査データから中国の「猛暑」消費の傾向をご紹介します。
中国でも全域で「猛暑」な今年の夏
7月中旬から続く猛烈な暑さ。一昨年まで住んでいた中国・大連は冬は氷点下10度まで冷えるが、夏は30度を超えることは滅多になく、エアコンがなくても過ごしやすかった。行きつけのマッサージ屋で中国東北部出身の女性スタッフに「夏だけでも大連に戻りたい」と言うと、「今年は東北も暑いですよ」と返って来た。
中国は国土が広く、上海のように日本と同じ気候の地域もあれば、夏は蒸し冬は凍る内陸部もある。大連やハルピンがある東北部は、日本で言うなら北海道に近い。しかしこの夏は、ごく一部の地域を除いて、日本同様に猛暑に襲われている。
北京では6月1日から8月1日までの2カ月間で、最高気温が35度を超えた猛暑日が17日あった。気温上昇に伴い、北京やその周辺の河北省では、大気汚染の深刻化も懸念されている。
吉林省、遼寧省などでも猛暑日が連続し、遼寧省本渓県(39.2度)、吉林省集安市(38.4度)など全国24カ所で観測史上最高気温を記録した。
「猛暑手当」がバズワードに。東北部でも熱中症対策
日本と同様、熱中症で倒れる人も続出している。日本では高齢者や子どもなど、体力がない人々を中心に影響が出ているが、中国で熱中症が最も心配されているのは「屋外労働者」だ。
炎天下で作業する労働者向けに「猛暑手当」なる制度は以前からあったが、今年は、かつてなく猛暑手当が注目され、バズワードとなっている。江蘇省、浙江省、江西省、四川省、天津市はこの夏、猛暑手当基準額を引き上げ、うち江蘇省、浙江省、江西省の3省は、手当を月額300元(1元=17円換算で5100円)以上に設定した。
西安市は、猛暑の中屋外作業する労働者を十分に保護するよう通達。企業が労働者に手当をきちんと出しているか、暑さをしのげるサプリメントを提供しているかなど調査を始めた。
中国は日本ほどエアコンが普及していないため、ショッピングセンターやプールには涼を求める人々が押し寄せ、麻雀やトランプをして時間を過ごしている。
セントラルヒーターが整備されている一方で、学校や病院など公共機関でもエアコンがあまり導入されていない東北部では、これまでほとんど関係のなかった熱中症対策の必要性がしきりに訴えられている。
中国最大のECサイト「淘宝(タオバオ)」発表の「猛暑グッズ人気10選」
気温が上がると暑さをしのぐための消費が増える点は、日中共通している。商業施設は涼みにやって来る消費者をターゲットに、セールを拡大している。中国最大のECサイト、タオバオ(淘宝)では、夏の気温が1度上がるごとに、1日の売り上げ点数が3万点増えるとのデータもある。
タオバオ(淘宝)は7月、「猛暑グッズ人気10選」を発表した。いくつかは日本にもある、あるいは日本発の商品だったが、いくつかはどう日本語にすればいいか、商品写真を見ても分からなかった。
以下が、その10点だ。
画像出典:http://3g.163.com/news/article/DMER83GS0519CH97.html
①虫よけシール、②ウォーターベッド、③カットスイカ、④液体を冷たく保つグラス、⑤ミストファン、⑥ソーラーファン帽子、⑦フェイスキニ、⑧蚊取り器、⑨UVカット衣類、⑩熱冷まし用冷却シート
「フェイス」と「ビキニ」を組み合わせたフェイスキニは日焼け止めマスクで、この数年は日本のニュースでも取り上げられることが増えた。
2005年ごろに山東省の青島市で生まれたと言われるが、年々デザインが派手になり、今年はウルトラマンやピカチュウなど、日本のアニメキャラクターのデザインも登場した。一緒に遊びに来ている友達を判別できるのか、海につきもののナンパはどうやって行われるのか、気になる点は多いが、現地のメディアによると、フェイスキニを巡る今年最大の特徴は、購入者の半分が男性という点だ。
この夏は、上海市など南部を中心に化粧品用クーラーボックスも売れているが、こちらも3割は男性が購入している。さらに、今年は男性向けスキンケアの売れ行きも目立って好調だという。
もしや、日本で話題になっている日傘男子もいるのではと調べてみたが、今年6月にSNSで「男性も日傘を差していいのではないか」という議論が盛り上がったものの、「実際に日傘を差している男は見かけない」(北京在住の20代男性)とのこと。ただし、「日本で日傘男子が増えている」「埼玉県庁で男性の日傘の使用が推奨されている」というニュースは、中国でも報じられており、日本で本格的にはやれば、中国にも輸出される可能性が高いだろう。
猛暑グッズ生産からみる中国ご当地気質
タオバオは、どこの地域がどんな猛暑グッズを生産しているかも分析し、ご当地気質と関連づけまとめている。こちらも、簡単に紹介したい。
北京人……仕事をいかに快適にするか。
主な生産品:衣服用クールミスト、クールベスト
広州人……食は広州にあり。食べて体温を下げる。
主な生産品:スイカカット器、かき氷メーカー
山東人……風で何とかする
扇風機クッション、ソーラーファン帽子
江蘇人……節約しつつ冷やす
体に貼る冷却シート、エアコン送風袋
(エアコン送風袋とは、エアコンから放出される冷気を別の部屋などに送るホースのようなビニル袋)
浙江人……遊ぶために冷やす
モバイルゲーム用指サック、ウォーターベッド
上海人……美容は冷却から
化粧品用クーラーボックス、美尻クッション
ようするに、北部は実用性重視で、南部は遊びと絡めると言いたいようだが、このようなまとめができること自体、中国の広さと製造大国ぶりを反映している。それでも、肌につける冷却スプレーや制汗剤などは日本の方がバラエティーも豊富で、信頼性も高く、中国の気温が1度上がるごとに、日本の猛暑対策グッズもかなりの恩恵を受けることだろう。
浦上 早苗(Sanae Uragami)
大学卒業後、新聞記者12年半。その後、中国政府奨学金を取得し、2010年に中国・大連の博士課程に国費留学。現地の小学校に通う息子と留学生寮で二人暮らしを始める。
2012年から2016年まで少数民族向けの国立大学で日本語教師。
現在は中国語と英語の経済ニュース翻訳・編集、ライター。ニュース翻訳で中国全体の状況を把握しつつ、大学で中国学生のリアルな声を聴けるのが強み。
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