中国IT動向をキャッチアップ!月刊中国ネットニュースまとめ【2019年10月号】
中国在住ITライター山谷剛史さんが現地で集めたネット関連ニュースを
まとめてお届けします!
変化の速い中国の状況を把握するために、ぜひチェックしておいていただきたい中国のインターネット関連ニュースを現地在住のITライター山谷剛史さんがまとめてご紹介します!
今月も日本からはなかなかつかみきれないリアルな動向をまとめてキャッチアップ出来ますので、ぜひ最後までチェックしてください。
■中国ITの顔であるアリババのジャックマー氏、引退
中国国外のお土産屋で売られているイラストにもジャックマー氏(左から3番目上から2番目)
今の中国で数少ない世界的な有名人だ
アリババ(阿里巴巴)の会長であったジャック・マー(馬雲)氏がアリババ20周年を機に退任した。ジャック・マー氏は、アリババを20年引っ張っただけでなく、中国ITの顔といえる人であった。ジャック・マー氏退任の日には、アリババの本社がある浙江省杭州で盛大なイベントが開催された。8万人を収容できる杭州奥体博覧中心に社員がぎっしり入り、引退を惜しんだ。
後任はダニエル・チャン(張勇)氏。中国最大のECセールで、11月11日の単身の日セール「双十一」の発案者だ。
■Jayの新曲「説好不哭」、オンラインで記録的セールス
9月16日23時にリリースされた、人気歌手「周杰倫(Jay)」の新曲「説好不哭(泣かないと約束したから)」が、爆発的に売れた。この曲の価格は3元(約50円)。
23時25分、つまりリリースから30分と経たずに、QQ音楽、酷我音楽、酷狗音楽の3プラットフォームでの販売数は229万ダウンロードで、売上額は1億円を突破。テンセントのQQ音楽の単体ではリリースから40分で販売数は246万ダウンロードを記録し、その後QQ音楽のサーバーが停止する事態に。リリース後2週間では1000万ダウンロードを記録した。
Jayの説好不哭の爆発的セールスは有料音楽ダウンロードのマイルストーン的なタイトルとなった。またこの曲のミュージックビデオは、一部が日本を舞台にしたものとなっていて、その後の国慶節の旅行において日本の撮影地を巡る人も続々と現れた。
■盒馬鮮生、賞味期限切れ直前の食品にシェア冷蔵庫を用意
アリババのニューリテールのスーパー「盒馬鮮生」が賞味期限1日前の商品を処分してもったいないという声がネットであがり話題に。去年には盒馬鮮生が賞味期限切れの食品について賞味期限を書き換えて再販売することが話題になったが、逆に処分を早めても話題になったわけだ。この話題に応えて、盒馬鮮生は上海の一部店舗で入口に、21時半以降に賞味期限切れ前の食品を無料で提供する「シェア冷蔵庫(共享氷箱)」を用意。こちらも話題となった。
■百度、自動運転タクシー「Robotaxi」の試験営業開始
百度のRobotaxi
百度は、湖南省長沙で自動運転タクシー「Robotaxi」の試験営業を開始した。百度は検索以外の柱として、AIや自動運転に注力している。
Robotaxiは、ライセンスを受けた45台が走るもので、一汽紅旗の「紅旗EV」に、百度の自動運転プラットフォーム「Apollo(アポロ)」を搭載したものとなっている。ドライバーの運転を必要としない自動運転Level4を実現しているが、サポートとして運転手がいる。Robotaxiとはいうが、どこでも行けるわけではなく、決まったルートを走るというもので、2020年上半期にはライセンス発行済の一般道、高速道、専用道などを含む一周135kmのルートを巡回する予定だとしている。
■ショートムービーでアップされた危険な行為を真似た14歳が死亡
山東省の14歳の女性の哲哲さんと12歳の女性の小雨さんが、ショートムービーでアップされた「缶でポップコーンを作成する」という動画を真似て、缶が爆発し、ふたりとも全身に大やけどを負い、哲哲さんは死亡した。ネット論壇ではオリジナルの投稿主の責任を問う流れとなったが、指摘された投稿主も「残念なニュースだが、ネタ元は以前からある」と責任は認めなかった。
このニュースを扱ったメディアは多く、記事の中でショートムービーで人気なのは、「~を作ってみた」「~をやってみた」系だと指摘。まだこうした問題を未然に防止するための法制度はできていないが、大学の教授などの専門家は、「危険を予め告知すべき」「より厳格な実名制を導入すべき」といった意見をだしている。
■AIによる学生の動きの徹底監視に「プライバシー侵害」の声
曠視科技のAI技術は教育以外にも様々なシチュエーションで提供されている
学校内での学生の一挙一動をAIで監視するサービスに、「プライバシー侵害」だと多くの声が上がった。貧乏ゆすりや、うとうと寝てしまう行為や、教科書を読む行為や、挙手といった行為をAIで識別し、分析するというもの。
話題になったのは北京のAI企業「曠視科技(Megvii)」のプロモーションビデオでの一場面だ。曠視科技はこの騒ぎに、「あくまで当社の技術をこう適応できますというものだ。また導入するとしても正当性をもとにプライバシーの保護などを行い、社会全体からアドバイスやチェックをうける」とコメントしている。
曠視科技がアップした動画にすぐに反応があったわけではなく、以前からあったものが話題になったことから、多くの中国人はこうした最新テクノロジーの見聞がないともいえる。
山谷剛史(Takeshi Yamaya)
フリーランスライター。
2002年より中国・アセアン諸国・インドのコンシューマーIT中心に、「ニュース+実体験」をもとにリアルな現地事情を執筆している。
連載は『中国トレンド通信(日経トレンディネット)』『ニーハオ!中国デジモノ(同)』『ミライチャイナ(ITMedia)』『アジアIT小話(ASCII.jp)』など多数。
著書は『中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立(星海社新書)』など。
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