中国はまもなく国慶節連休突入!今年は「プラス1日」で旅行者は1億人以上増加か【中国マーケット点描】
元中国国立大学日本語教師の翻訳ニュースライター 浦上早苗さんが、
中国消費者のリアルから中国マーケットの今を浮き彫りにする
【中国マーケット点描】
今回は訪日観光客の増加期待でも注目される中国の大型連休「国慶節」に関するリアルな今をご紹介します!
国民の2人に1人が旅行する?!「国慶節」は旅行業界最大の書き入れ時
中国人で春節(旧正月)に次ぐ大型連休、国慶節が近づいてきた。家族や親せきとの時間を大事にする中国人は、春節は実家に帰省する傾向が強いため、旅行市場にとって最大の書き入れ時は「秋のゴールデン・ウイーク」と呼ばれる国慶節期間になる。特に今年は、10月1日~7日の国慶節に連なる形で、8日が「中秋節」の休みになり、例年より1日長い8連休が形成される。連休が「1日」増える効果は大きい。
中国旅行研究院は今月18日に発表した「2017年国慶節・中秋節長期休暇旅行市場予測」で、8連休中の旅行者数をのべ7億1000万人と予測。この数字は7連休だった昨年の国慶節期間の旅行者数(5億9300万人)を大きく上回っている。
また、オンライン旅行予約最大手のシートリップ(携程)によると、今年の国内の宿泊予約は8月22日にピークが始まり、例年より2週間早く動き出している。
恩恵を受けるのは、中国国内市場にとどまらない。休みが長いことに加え、元高基調が続いているため、「海外に行くなら今」というムードが高まっている。
中国の国金証券は、今年の海外旅行者数が前年比12~15%増加するとの予測を発表している。
「韓国」の代替地として日本人気が上昇
では、日本旅行の動向はどうだろうか。日本国内では、プラスとマイナスの両方のニュースが報じられている。
日本にとってプラスなのは、春先から韓国旅行が減り始め、代替地として日本に流れていることだ。北朝鮮問題の緊迫を受け、韓国が米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)を配備したことで、中国と韓国の関係はさまざまな面でひずみが生じている。
マイナスのニュースは、中国の地方政府が現地の旅行会社に対し、日本旅行を減らすよう求めているという情報だ。ニュースソースは、口頭で通達を受けた旅行会社で、外資流出の抑止が目的だと言われているが、中国政府が公に認めているわけではないため、どの程度の規制なのかは分からない。
9月に入って、日本のメディアが「日本旅行の規制」を報じ、国慶節期間の訪日旅行への影響を懸念する声も聞かれるが、九州の旅行関係者は「国慶節中に福岡に寄港するクルーズ船は満席状態」と話しており、中国の報道を見ても、短期的な影響はほとんどないのではないかと思っている。
むしろ、中国メディアは「国慶節の人気海外旅行先は日本」と報じている。シートリップが9月下旬に発表した「国慶節ゴールデン・ウイーク人気海外旅行先ランキング」によると、日本はタイに次ぐ2位につけた。日本は2016年から順位を一つ挙げたのに対し、昨年トップだった韓国はベスト10圏外だった。
また、河南省の地方メディアは、複数の旅行会社を取材し、「国慶節期間の日本旅行は9月初めに全て売り切れた。今申し込んでも11月までは行けない」「旅行会社の想定を超える人気」と報じている。河南省の旅行協会幹部は、取材に対し「韓国ツアーの数そのものが激減し、その分日本に流れている。次が東南アジアだ」と話している。
日本メディアは、中国と日本の二者関係で訪日旅行を分析することが多いが、北朝鮮のミサイル報道でグアム旅行を取りやめた人の多くは、旅行そのものをやめるわけではなく、他の場所に振り替えている。同じように今年の日本は、中国人にとって「振り替え需要」の受け皿としても選ばれているようだ。
日本旅行での買い物欲求も再燃傾向
また、自分の肌感覚では、日本商品の購入意欲の盛り返しを感じることが多い。つい最近、中国人の友人から「白内障治療用の目薬は、処方箋がなくても日本で買えるか」と質問された。具体的な商品名も提示された。聞けば、中国のECサイトで売られている人気商品で、日本サイドのルール変更で、サイト経由での購入が難しくなり、日本旅行のついでに買うことを計画しているという。
中国最大のECサイトタオバオ(淘宝)で2014年から個人店舗を出店している日本人によると、今年9月ごろから、注文が急激に増えているという。中国在住の日本人の「一時帰国のときに買い物を頼まれることが増えた」という声もあちこちで聞く。今の為替は1元約17円。20円目前まで行った2年前の水準には及ばないが、昨年からは円安に振れているのは確かだ。以前も指摘したが、人は外国でお金を使うとき、一旦自国の通貨に換算して高いか安いかを判断する。2015年時のような爆買いは見られないかもしれないが、以前から欲しいものがある人達にとって、今は「買い」の時期なのかもしれない。
体験重視の旅行者増加で人気化する「撮影スポット」
さらに、中国では「撮影旅行」も流行している。中国人は元々写真を撮ることが好きで、SNSには自撮り写真が並ぶが、最近は景色、日常風景を軸にしたフォトジェニックな写真も増えてきた。
人気アニメに登場するシーンとそっくりな鎌倉の踏切が、台湾人や中国人の「聖地」になっているのは有名だが、太宰府天満宮(福岡)のスターバックスなど、自分のSNSでも「中国人旅行者の定番になっている」と気づくスポットが少しずつ増えている。
中国のネットでは他にも「京都旅行撮影ポイント」「着物を借りられる場所一覧」といった情報が見られるようになった。これらのスポットは、団体旅行ではまだ行きにくいだろうが(受け入れる側も、団体旅行で来られると迷惑かもしれないが)、「写真撮影ツアー」のようなものも人気を集める日が来るかもしれない。
浦上 早苗(Sanae Uragami)
大学卒業後、新聞記者12年半。その後、中国政府奨学金を取得し、2010年に中国・大連の博士課程に国費留学。現地の小学校に通う息子と留学生寮で二人暮らしを始める。
2012年から2016年まで少数民族向けの国立大学で日本語教師。
現在は中国語と英語の経済ニュース翻訳・編集、ライター。ニュース翻訳で中国全体の状況を把握しつつ、大学で中国学生のリアルな声を聴けるのが強み。
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