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爆買いの一端を担う「代購」ビジネスは今も健在…中国人はなぜ友達に買い物を頼むのか【中国マーケット点描】

 

元中国国立大学日本語教師の翻訳ニュースライター 浦上早苗さんが、中国消費者のリアルから中国マーケットの今を浮き彫りにする【中国マーケット点描】

今回は「爆買い」の裏で発達した「代購」ビジネスの今をご紹介します!

 

爆買いの一端を担う「代購」ビジネスは今も健在…中国人はなぜ友達に買い物を頼むのか【中国マーケット点描】

 

 

「爆買い」は今や誰でも知っている言葉になったが、「代購」を知る日本人はまだ少数派だろう。

代購は、中国人が欲しがる海外製品を、代わりに購入して送ってあげるビジネスだ。

注文する中国人にとっては、送料と手数料を払っても国内で買うより安く済むことがあるし、国内で売っていない物も入手できる。代わりに買ってあげる人は、商品価格に上乗せした手数料が収入になる。まさにwin-winというわけだ。

 

代購ビジネスをする人々は、中国のSNS微信(WeChat)の「朋友圏」(Facebookのニュースフィードに相当)で、取り扱える商品を宣伝する。アリババが運営するECサイト淘宝(タオバオ)に個人ショップを開設し、そのリンクを拡散して集客する人もいる。

彼らの主要な顧客は、SNSでつながっている人、つまり知り合いである。FacebookやLINEのタイムラインが知人の商売の宣伝で埋まる様子を想像してみてほしい。日本人には相当違和感があるが、それが実際に起きている。

 

微信(WeChat)のタイムラインで、オーストラリア商品の子ども用バッグの宣伝をするユーザー。送料込みで360元

微信(WeChat)のタイムラインで、オーストラリア商品の子ども用バッグの宣伝をするユーザー。送料込みで360元

 

この「代購」ビジネスの主力は、各地の留学生だ。代購が流行し始めた数年前、勤務先の大学の教え子は、「留学生10人のうち9人は代購をしている」と話していた。

留学生だけでなく、主婦や残業のない会社員など、時間に余裕がある中国人の相当数がこのビジネスに手を出していると言っていいかもしれない。日本と中国を行き来している私も、これまで何度も「一緒にやろう」と持ち掛けられた。

 

海外に住む中国人が隙間時間を利用して、中国人に売れそうな物をドラッグストアや量販店で購入、郵便局から発送して、小遣いを稼ぐ。そのあおりを食うのは、正規のルートで商品を仕入れ、貿易にかかる規定の税を納めて商売している業者である。

関税や流通にかかる中間費用を上乗せすると、正規の業者が販売する商品価格は、「代購」よりも3~5割割高になる。

中国政府は2016年4月、越境ECに関する新制度を導入し、個人が海外で買ってくる物(個人輸入品)も一般貿易のスキームで課税することにした。代購や個人輸入がビジネス化し、きちんと税金を納めている業者との不公平感を無視できなくなったことも、背景の一つだ。

 

この新制度によって、個人輸入や代購は大きな打撃を受けるとみられていた。昨春は空港での荷物検査が厳しくなったという声があちこちから挙がった。けれど1年経った今も、代購の勢いはほとんど衰えていない。

今年春日本に留学した中国人に尋ねたところ、こんな答えが返って来た。

「多くの留学生は、アルバイトを探すより先に代購の準備を始める。代購のために留学する人もいるし、早い人は来日2日後にはビジネスを始める」

留学生にとって、先輩の大半が手掛けている代購を自分もやるのは、ごく自然な流れであり、中には、苦手な日本語を使いたくないから、代購で稼ごうとする学生もいるという。何とも本末転倒な話である。

 

「どれくらい儲かるの?」と聞くと、「ひと箱の純利益は最低700元(約1万1000円)。月の稼ぎは平均5000元(約8万1000円)くらい」と返ってきた。中国人留学生はさらに「本当にいい物は、利益が出ないから売らない」と続けた。

少しでも安い店を探して、免税品扱いで購入し、写真を準備して、SNSに掲載し、梱包して、発送して……。彼らがやっているのは、非常に原始的で、スマホ1台で始められる商売である。しかし、中国政府が「貿易」とみなすのも当然なほど、その規模は大きくなっているし、当人たちの儲けへの意識もはっきりとしている。

 

大連で開かれた日本商品展覧会に出店していたブース。日本から個人で持ち込み、関税手続きを逃れた商品を売る業者もいた

大連で開かれた日本商品展覧会に出店していたブース。日本から個人で持ち込み、関税手続きを逃れた商品を売る業者もいた

 

ではなぜ、中国に住む人々は、「代購」で物を買うのか。私は当初、単純に安いからだと思っていた。しかし、今の為替レートだと、日本での価格に送料を上乗せすれば、中国のネットショップでの販売価格とあまり変わらないことが多い。代購をしている留学生によれば、日本円で400円の商品を100元(約1600円)で売ることも普通にあるという。もし日本人なら、海外在住の友達に化粧品や日用品の購入を頼むくらいなら、ちょっと高くても通販やデパートなどで購入するのではないだろうか。

 

中国で代購ビジネスが成立するのは、多くの中国人が、「知り合いから買う方が、国内のネットや店舗で買うより信用できる」と考えているからだ。

かつて、日本から帰国した教え子に、ブランド品の香水をもらった。受け渡しの際に彼女はわざわざ、「これは、日本で買った物だから、安心してください」と言い添えた。

 

中国にも日本製品を売るECサイトや店はある。が、「友達」から買った方が、購入元を追跡でき、本物の可能性が高いと考える中国人は少なくない。

中国人にとって、友達は、企業のCMや広告よりも信用できる情報源でもある。大きなことから小さなことまで、真偽不明の情報が回ったとき、彼らはだいたい「友達」からその情報を仕入れており、なぜかオーソリティに確認しようとはしない。

日本人は「雑誌に掲載された」「テレビで紹介された」という枕詞に弱いが、中国人の場合は、メディアで商品が紹介されているのを見ると、「金をもらって宣伝してる」と考えることもあるという。

 

面白いのは、中国人は代購というシステムに信頼を置いているが、その中でも、「中国人の友達」より、「日本人」に買い物を頼みたがる傾向がある点だ。

中国人の同僚に頼まれた薬を持ち帰り、代金を告げると「以前、教え子に頼んだ時は倍の金額を請求された。教え子なのに、そんなにマージンを取っていたのか」と驚いていた。

日本人は、「〇〇を買ってきて」と頼まれても、手数料を徴収することは少ない。たとえその商品を買うために複数の店を回っていたとしても、頼まれた商品をスーツケースに詰めるために自分の荷物を減らしたとしても、その商品価格以上の代金は受け取らないことが多い。せいぜい受け渡しの際に食事をごちそうになる程度だ。

中国人から見れば、日本人が日本で買ってきた商品が、最も「本物」である可能性が高いうえに、支払う価格も最も安く済むことが多い。

日本人のスマホに、普段あまり会わない中国人から「いつ帰国するの?」と突然メッセージが入ったら、それはほぼ間違いなく、「代購」の依頼である。中国企業で働くある日本人は、買い物を頼まれないように「日本に帰国するときは誰にも言わない」と苦笑いしていた。

 

中国人の日本製品への信用は非常に高い。しかし、中国人が日本製品をできるだけ日本で、そして日本人を通じて買おうとするのは、単純な品質だけでなく、その作り手や売り手である日本人の倫理観や誠実さへの信用の表れでもあるのだろう。

 

 


浦上 早苗浦上 早苗(Sanae Uragami)

大学卒業後、新聞記者12年半。その後、中国政府奨学金を取得し、2010年に中国・大連の博士課程に国費留学。現地の小学校に通う息子と留学生寮で二人暮らしを始める。
2012年から2016年まで少数民族向けの国立大学で日本語教師。

現在は中国語と英語の経済ニュース翻訳・編集、ライター。ニュース翻訳で中国全体の状況を把握しつつ、大学で中国学生のリアルな声を聴けるのが強み。


 

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