中国IT動向をキャッチアップ!月刊中国ネットニュースまとめ【2017年12月号】
中国在住ITライター山谷剛史さんが現地で集めたネット関連ニュースをまとめてお届けします!
変化の速い中国の状況を把握するために、ぜひチェックしておいていただきたい中国のインターネット関連ニュースを現地在住のITライター山谷剛史さんがまとめてご紹介します!
日本からはなかなかつかみきれないリアルな動向をまとめてキャッチアップ出来ますので、ぜひ毎月チェックしてください。
■中国最大のECデー「双十一」、今年も去年を上回る新記録
写真左、中央:スマートフォンの待ち受け画面にも出てきた双十一の広告
写真右:家電量販店「蘇寧易購」も広告を出して双十一セールをアピール
11月11日は「双十一」と呼ばれるECデーで、阿里巴巴(アリババ)の天猫や、京東(ジンドン、JD)や、蘇寧易購(スーニン)など、様々なECサイトがセールを行った。
この日の天猫の売上金額は1682億元(約2兆8600億円)で、昨年よりも1207億元をさらに上回る結果となった。また天猫や淘宝網で利用される決済手段の「支付宝」(アリペイ。アントフィナンシャルによる)による決済件数が前年比41%増の14億8000万件、配送数は7億5000万個を記録した。こうした1日に莫大な処理が集中したが、アリババによるクラウド「阿里雲」が処理を行い、システムの反応が遅いといった問題はなかった。
天猫を追う京東は、11月1日から11日までの11日間に、前年同期比50%増の1271億元(約2兆1600億円)の売上を記録した。総合ECサイトとしてはじめた天猫に対し、京東は家電通販ではじめたサイトなので、家電販売に強いイメージは持たれている。金額ベースではスマートフォン、フラットテレビ、エアコンの順に売れたとのこと。スマートフォンでは、アップル、ファーウェイ、シャオミの順に売れ、また家電では美的、格力、ハイアールが売れた。家電3社の後にはシャープが続いた。また浄水器や食洗器が新たによく売れたという。
天猫と京東の差でいえば、物流の違いも挙げられる。天猫の物流は、アリババ系のビッグデータで複数の物流企業に荷物を振り分け最適化する「菜鳥(ツァイニャオ)」というサービスを活用する。一方京東は、自社物流を無人倉庫建設などブラッシュアップすることにより、配送効率を高めている。結果として京東のほうが迅速に商品が到達し、商品到着が遅延した阿里巴巴(菜鳥)は双十一での課題を残す結果に。
例年、双十一の問題として、物流が対応できず荷物があふれかえるという問題があったがそれはほぼ解決している。もうひとつの問題が、双十一前に商品を値上げし、双十一のときに値引きをする価格偽装問題がある。この問題については今年も多くの店舗が価格偽装を行っており、こちらも課題となった。
各ショッピングモールそれぞれが双十一セールを行った
■騰訊(テンセント)、時価総額でFacebookを超える
11月21日、騰訊(テンセント)の時価総額(5285億ドル)がFacebookの時価総額(5183億ドル)を超え、アップル、グーグル、マイクロソフト、アマゾンに続く、世界第5位のハイテク企業となった。
騰訊はまた11月15日には、9月30日までの第3四半期の四半期決算を発表した。これによると、メッセンジャーの「WeChat(微信)」の月間アクティブユーザーは前年同期比15.8%増の9億8000万、同じくメッセンジャー「QQ」の月間アクティブユーザー数は同3.8%減の8億4300万、最多同時利用者数は8.9%増の2億7200万、ブログ「QQ空間」アクティブユーザー数は10.0%減の5億6800万、課金登録ユーザー数は19.3%増の1億2500万となった。
コンテンツ課金は前年同期比51%増の421億2400万元で、うちゲームが268億元、SNS向けアイテムが152億に。ネット広告は48%増の110億4200万元で、うちSNS向けなどが69億元、メディア向けが41億元となった。
騰訊は自社サービスのコンテンツを拡充すべく、投資に力を入れることを発表している。
■微信(WeChat)内アプリから1年、微信のポータル化、プラットフォーム化が進む
WeChat(微信)内で専用のアプリを動かせる「小程序」スタートから1年が経過し、その利用者は年内に2億人に達するようだ。
微信(WeChat)の微信小程序(小プログラム) 最初から入っている定番アプリほか様々なアプリを追加できる
小程序は微信内にあるため、微信を起動した上でそこからアプリを起動することからひと手間かかる反面、「アプリをダウンロードせず利用できる」ことがメリットだ。しかもシェアサイクルの「Mobike」や配車サービスの「滴滴出行」やフードデリバリーの「美団外売」など定番のアプリが利用可能となっている。ちなみに支付宝(アリペイ)も同様に、支付宝の中で別の専用アプリを起動する仕組みを作っている。つまり検索してサービスを利用することから各サービスのアプリを直接利用するようになるように、電子決済アプリだけで全てを済ませることができるようになる。つまり電子決済アプリのポータル化が進んでいるのだ。
調査結果によれば、今年の4月以降に小程序の利用者が毎月数千万人単位で増えていき、夏以降は指数関数のように増えている。男女比でいえば43:57で女性のほうが多く、1級,2級と呼ばれる大都市に多く、フードデリバリーや果物や野菜の購入などに利用している。小程序提供側は、商業サービスやECサービスが多く、またアプリは用意していないが小程序はリリースするという企業が圧倒的だ。
■シェアサイクルサービスが淘汰、デポジットが未返却問題が浮き彫りに
かつて大量に投入されたbluegogoの車両。広州にて
シェアサイクルサービスが続々と終了している。「Bluegogo(小藍単車)」「酷騎単車」「小鳴単車」「町町」「3Vbike」「悟空単車」などのシェアサイクルサービスが経営破たんした。それらの多くが、いずれも進出している都市で、たまに車両を見る程度の普及度ではあるが、Bluegogoはそれなりに車両を展開していただけあって、同社の経営破たんは驚かれた。Bluegogoの投入車両台数は累計60万台で、2000万人以上がサービスに登録し、毎日300万以上の利用があったとしている。
これに伴い、利用前に支払うデポジットが返金されないという問題が明るみとなった。各社の100~200元(約1700~3400円)程度のデポジットや、1カ月・半年・年間などの利用金が未返却となっているのだ。こうした問題に対し、中国消費者協会(中消協)は12月5日、シェアサイクル大手のMobikeやofoなどに対し、デポジットをとらない方針にするよう指導を行っている。前述のBluegogoのデポジットは100元(約1700円)なので、2000万人が利用しているとして20億元(約340億円)のデポジットを企業は預かっていることとなる。
また今後の動きとして、信頼ある社会構築に動く中、こうした疑心暗鬼を生じさせるような動きがあるとして、行政処罰を行うことも考えている(「国務院関于建立完善守信聯合激励和失信聯合懲戒制度加快推進社会誠信建設的指導意見」の第十条「依法依規加強対失信行為的行政性約束和懲戒」より)。
破綻した小鳴単車の車両。広州にて
■アリババ、「新小売」推進で全国展開のスーパー「大潤発」などの経営会社の大株主に
EC大手のアリババは11月20日、全国展開のスーパー「大潤発」や「欧尚」を経営する高シン零售と提携し、アリババらが提唱する「新小売」を推進する。高シン零售は中国全土に446店舗を構えており、アリババが高シン零售の株36.16%を224億香港ドル(約3500億円)で取得した。大潤発は中国全土に1万店の代理店とB2Bで提携し、無人商店やオンラインショップとの提携をはかるといった計画があると伝えられている。
中国は日本と比べて小売りが弱く、オンラインで強い京東や蘇寧電器らが、実店舗を増やし、オンラインとオフラインの融合による「新小売」を進めているが、まだ試行錯誤の状況だ。
■国務院、インターネットと次世代製造業についての指導意見を発表
国務院は、インターネットと次世代製造業についての指導意見を発表した。同指導意見には、インターネットを様々な産業に行きわたらせる「互聯網+(インターネットプラス)」を推進し、各産業をインターネットで効率させる大まかな目標が書かれている。
各産業にくまなくインターネットによる産業効率化を行きわたらせるべく、速度の向上と利用費用の低価格化、プラットフォームの構築、工業インターネット標準体系の構築、産学提携によるイノベーションの加速、セキュリティの強化などを挙げている。2020年、2025年、2035年、21世紀中盤それぞれで目標を設定している。
具体的な文章は以下から中国語で確認ができる。
http://www.gov.cn/xinwen/2017-11/27/content_5242603.htm
■手続き全てがQRスキャンで済む病院が登場――四川省人民医院
四川省人民医院は中国で普及するQRコードとスマートフォンを活用したスマート化で効率改善を図る。100台設置された専用端末では、QRコードで、カルテ作成、順番待ち、支払い、薬の受け取りのプロセスを行うことができる。順番待ちだけではなく、QRコードによる電子決済までできるのが特徴となっている。
一般的に中国の大病院(特に公立病院)の利用はものすごく時間がかかり、また中国の大病院に限った話ではないが、様々な窓口と診察室をたらいまわしにされることがあるが、そうした患者側の負担も大幅に減るとしている。
山谷剛史(Takeshi Yamaya)
フリーランスライター。
2002年より中国・アセアン諸国・インドのコンシューマーIT中心に、「ニュース+実体験」をもとにリアルな現地事情を執筆している。
連載は『中国トレンド通信(日経トレンディネット)』『ニーハオ!中国デジモノ(同)』『ミライチャイナ(ITMedia)』『アジアIT小話(ASCII.jp)』など多数。
著書は『中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立(星海社新書)』など。
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