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中国IT動向をキャッチアップ!月刊中国ネットニュースまとめ【2017年11月号】

 

中国在住ITライター山谷剛史さんが現地で集めたネット関連ニュースをまとめてお届けします!

 

中国IT動向をキャッチアップ!月刊中国ネットニュースまとめ【2017年11月号】

 

変化の速い中国の状況を把握するために、ぜひチェックしておいていただきたい中国のインターネット関連ニュースを現地在住のITライター山谷剛史さんがまとめてご紹介する連載企画です!
日本からはなかなかつかみきれないリアルな動向をまとめてキャッチアップ出来ますので、ぜひ毎月チェックしてください。

 

 

■アリババ、1000億元を投資し世界各地で研究開発を進めると発表

 

ネット企業最大手の阿里巴巴(アリババ)は、本社のある杭州で同社展示会「云栖大会」を開催した。そこでの目玉は、同社の世界各地の研究所「達摩院(Alibaba DAMO academy)」での研究開発に3年で1000億元の投資を行うという発表であった。つまり世界中から量子コンピューティング、機械学習、ネットワークセキュリティ、自然言語処理、センサーなどの分野で優秀な人材を集い、同社の未来に向けて投資していく。

 

アリババの達摩院の発表にマスコミは大きく反応した

アリババの達摩院の発表にマスコミは大きく反応した

 

馬雲氏は達摩院について「阿里巴巴よりも長く残る」「20億以上の人々にサービスを提供し、1億人の就業機会を与える」「自立し、自身で稼げるようにする」と語り、世界に向けた投資であることをアピール。

阿里巴巴の発表だけに中国のニュースで大きく取り上げられたが、冷静に分析する記事も登場した。確かにこれまでの同社の投資は2016年度では170億元で、1000億元はとても大きい。またライバルの騰訊(118億元)や百度(101億元)と比べても大きい。一方世界企業と比べると、アマゾンの161億ドル、グーグルの139億ドル、マイクロソフトの123億ドル、華為(ファーウェイ)の110億ドルと比べると小さいという。

 

云栖大会

 

なお云栖大会は一般客も来場可能で、阿里巴巴のクラウドやビッグデータを活用したサービスや、阿里雲OS搭載のスマートフォンやスマートスピーカーをはじめとしたスマート製品、それにアントフィナンシャルの支付宝(アリペイ)を活用したフィンテック絡みのサービスに触れることができる。

 

 

■キャンペーンの上澄みで儲けようとする「羊毛党」撲滅へ

 

中国の新サービスローンチ時には、紅包なる金一封をはじめとした、何か利用することで得するキャンペーンを仕掛けることがよくある。その赤字覚悟の顧客獲得キャンペーンのお金をひたすら集めようとする人々を近年のネット用語で「羊毛党」と呼ぶ。例えばシェアサイクルのキャンペーンでは、位置情報をいじった上で、自転車に乗ったふりをして紅包を回収し続けるという。そうした羊毛党は20万人はいるといわれ、かつしばしば組織的であるそうだ。

 

羊毛党撲滅に向けて業界が動いた

羊毛党撲滅に向けて業界が動いた

 

さて北京市インターネット金融行業協会の情報によれば、P2P金融(ソーシャル金融)40社が「打撃羊毛党聯盟」を結成したという。これはP2P金融各社がユーザーを獲得するために貸方の利率アップキャンペーンを実施したところ、その利率が高いときしか利用をせず、高収益を得ようとするユーザーが目立ったとし、羊毛党的な行動に断固反対の意思を表明するというもの。特に悪意のあるユーザーや、組織的な羊毛党には法律による制裁や保護も考えているとした。また値引き合戦により共倒れになり、羊毛党だけがおいしい思いをすることを防ぐこと、それに悪用する利用者の情報を聯盟内で共有することなどが挙がった。ちなみに今年施行された中国安全網絡法(ネットワークセキュリティ法)によると、個人情報を許可なく第三者に渡すのは禁じられている。

 

 

■百度、北京汽車集団と2021年目途に無人自動運転車量産へ

 

ネット企業最大手の百度(バイドゥ)と中国の車メーカーの北京汽車集団は、2021年の無人自動運転車量産に向け、自動運転、クラウドサービス、コネクテッドカーなどの分野での戦略的提携を発表した。

百度は自動運転車に以前から注力しており、「アポロ」という自動運転車開発用オープンプラットフォームを発表している。また百度は同社の音声認識(AI)「DuerOS(別名プロメテウス)」にも力を入れている。百度の複数の最新技術を組み合わせることで、2019年にはほぼ手放しで運転が可能となるレベル3の自動運転車の量産を、2021年には完全な自動運転ができるレベル4の自動運転車の量産を目指す。

 

 

■フードデリバリー大手「eleme」も無人機投入

 

フードデリバリー(中国語で「外売」)大手のelemeが、エレベーター付きのオフィスビル内で自動配達するロボット「万小餓」を発表した。これにより、ビルの入口から注文者のいる部屋までの「ラスト1マイル」を解決する。80kg、3オーダーまで同時に載せることができ、一度の充電で最大8時間動くことが可能。

万小餓は、高さのある液晶モニター付きの掃除ロボットのような外見で、円筒形の保温空間に弁当を入れて運搬する。エレベーターに乗り、会社の受付など指定された場所まで行くと注文者に自動で電話をかける。注文者が来て弁当を取ったら、ディスプレイの指示に従って配送完了をタップすると、自動でビルの入口まで戻るというもの。ただし完全自動化ではなく、エレベーターの操作は人手がいるようだ。

 

アリババもラストワンマイルの無人配送機「菜鳥小G」を開発

アリババもラストワンマイルの無人配送機「菜鳥小G」を開発

 

■京東、完全な無人の物流センターを公開

 

EC大手の京東は、全工程で無人の物流センターを公開した。この物流センターは上海にあり、建築面積は40000平方メートルで、集荷、保管、運びだし、パッケージングの4工程が無人化されている。無人の物流センターが正式に稼働することで、一日20万オーダー以上を処理することができるという。

京東は自社物流により、複数の企業をビッグデータで最適化して配送を振り分ける阿里巴巴よりも、より素早く送れることが強み。また物流の強化は自動化倉庫にとどまらず、ドローンをはじめとした運送機器による配送実用化にも積極的だ。

 

 

■京東、ブランド品販売サイト「TOPLIFE」をスタート

京東、ブランド品販売サイト「TOPLIFE」をスタート

京東は、独立したブランド品販売サイト「TOPLIFE」のサービスを開始した。今年の6月に4億ドル弱でイギリスの世界的なアパレルECサイトのFarfetchを買収したことにより実現したサービスだ。Emporio Armani、Rimowa、Ports 1961、La Perlaなどのブランドを取り扱う。ECサイトの京東と異なる、中国人に高級だと訴えるモデル写真やサイトデザインほか、サポートにもこだわっているという。中国のブランド品の魅せ方の参考になるかもしれない。

また京東といえば前述の通り、自社物流が特徴だ。京東はTOPLIFE専用の自社倉庫を用意。よりセキュリティを強化しているほか、気温を一定に保つ恒温区と湿度を一定に保つ恒湿区を用意したという。

マッキンゼーの中国人のブランド購入調査レポートによると、2016年には760万家庭がブランド品を購入し、その消費額は平均で100万円を超す(7.1万元)としている。今後も中国でのブランドニーズが高まり、2025年には世界のブランド市場規模は2兆7000億元となり、そのうちの44%が中国人による購入となると予測している。

 

 

■有料動画コンテンツ利用者、緩やかな伸び

 

ネット企業最大手の騰訊(テンセント)によると、同社の動画サイトの有料会員数が4300万となった。2016年11月時点の2000万人から倍増したものの、動画視聴者数全体から見るとまだまだ少ない。騰訊は有料会員向けにコンテンツ強化を目指す。中国の動画コンテンツは無料の海賊版コンテンツが数年前まで当たり前に存在していたことから、ユーザーの有料会員化への腰は重いが、騰訊ほか動画サイトの有料コンテンツへの力の入れかた次第で、有料コンテンツ視聴が当たり前となるかもしれない。

 

 

■ECセール「双十一」に向け新サービス続々

 

11月11日に開催された中国の一大ECセールの「双十一」を前に、阿里巴巴やアントフィナンシャルや京東や騰訊などが続々とサービスをリリースした。

騰訊と同社の微信(ウィーチャット)で保険の販売を開始した。またアントフィナンシャルは消費者に対し、双十一での食品やベビー用品などの特定ジャンルにおける商品品質を対象とした保険の販売を開始した。またアントフィナンシャルの「芝麻信用」による信用スコアがそこそこ良いと、賃貸住宅での敷金が不要になる「信用租房」や、スマートフォンの宅配買取で配送前に買取金額が振り込まれる「信用速売」をリリース。また実店舗とネットの提携が進む中、京東はガソリンスタンド内のコンビニチェーン「易捷」での商品受け取りサービスを開始した。

こうした秋のEC関連の新サービス投入は毎年の傾向で、ネットのお祭りとなっている双十一のタイミングでサービスを利用してもらい、ユーザーを増やすのが狙いだ。

 

 

■シェアカーのEZZY、サービス突然終了デポジット戻らず

 

シェアカー。QRコードを利用するのはシェアサイクルと同じ

シェアカー。QRコードを利用するのはシェアサイクルと同じ

 

シェアカーのEZZYが突然サービスを終了させた。同社はBMWのエコカー「i3」ほか、ベンツやアウディなどの車を用意していた。母体会社は2016年にシェアカーサービスEZZYをスタートし融資を受けていた。同社CEOへの連絡がとれず、またデポジット料金が返金されない状況となった。

中国のシェアカーサービスは既定の場所に駐車するのが基本で、シェアサイクルと違って乗り捨てはできない。またシェアサイクルと比べて当然車両の単価が高いため、デポジット料金も高くなる。運転のハードルもさることながら、利用料金やルールによるハードルも高い。そのためシェアカーは、参入時の話題性と比べて実際は利用されていないのが実情だ。

 

 


中国ITライター 山谷剛史山谷剛史(Takeshi Yamaya)

フリーランスライター。
2002年より中国・アセアン諸国・インドのコンシューマーIT中心に、「ニュース+実体験」をもとにリアルな現地事情を執筆している。
連載は『中国トレンド通信(日経トレンディネット)』『ニーハオ!中国デジモノ(同)』『ミライチャイナ(ITMedia)』『アジアIT小話(ASCII.jp)』など多数。
著書は『中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立(星海社新書)』など。

https://about.me/yamayat


 

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