爆速で成長する中国のシェアリングエコノミーサービスから見えてくる中国ブランディングの可能性とは!?【中国越境EC&インバウンドで成功するブランディング術】
急発展している中国シェアリングエコノミーサービスが日本企業の中国ブランディングにどんな影響を及ぼすのか?可能性と活用のヒントを探ります!
こんにちは、アイディール小林です。
先日発売された週刊ダイヤモンド(7月15日号)でも中国の実態が大々的に取り上げられ、ここの所「人口規模があるから市場が大きいけど、日本よりもビジネス環境はだいぶ遅れているんでしょ?」という見方から、IT領域などにおける急速な産業競争力の向上により日本よりも間違いなく先進的でイノベーションが起きているという論調が強まってきました。
特にシェアリングエコノミー領域のサービスの発展については世界一と言っても過言ではないほどの速度であらゆるサービスが生まれています。
中国製Airbnbである民泊サービス「自在客」の巨大な規模感や、Mobikeやofoなどの自転車シェアリングサービスの急速な発展について各所で記事を見かけるようになってきていると思いますが、今回はこのような中国のシェアリングエコノミー領域のサービスが日本のメーカー企業の中国ブランディングに対してどのような活用方法があるのか、その可能性について探っていきたいと思います。
本コラムでは「シェアリングエコノミー」そのものの概念などについてはご説明を割愛させて頂きますが、まずは中国国内にどのようなサービスがあるのか、代表的なものをいくつかご紹介する所から始めて参ります。
◎中国シェアリングエコノミーサービスの紹介
<シェアハウス(民泊)>
・住百家:zhu bai jia(http://www.zhubaijia.com/)
いわゆる中国版Airbnbで、「場所のシェア」をできるサービスを展開。貸す側、借りる側も利用者を中国人に限定していることが特徴。範囲もヨーロッパ、北米、オセアニア、日韓、タイなど広範囲に渡る。また、貸す側が宿泊施設を登録する際には厳しい審査が課せられており、信頼を担保している。
・自在客:zi zai ke(http://www.zizaike.com)
こちらも中国版Airbnb。大陸、台湾、日本、韓国のみ取り扱っている。少ない国数ながらも8000もの民宿を取り扱っており、中国国内では最も台湾に強みを持っているサイトとして有名。
<シェアカー>
・滴滴出行:di di chu xing(http://www.xiaojukeji.com/)
こちらは中国版Uber。2015年にはライバル会社の快的打车と合併し、シェア88.4%を達成した。さらに2016年5月にはApple社から10億ドルの投資を受け、中国シェアトップの座を確実なものとした。
<シェアバイク(自転車シェアリング)>
・Mobike/摩拜单车(https://mobike.com/jp/)
都市の景色と生活方式を大きく変えたシェアバイク。専用のアプリを使って自分の好きなところで乗り、好きなところで乗り捨てることができるという便利な点がこれまでのレンタルサイクルとは異なり、高い評判を得ている。
・ofo(http://www.ofo.so)
黄色い車体が特徴のレンタルシェアバイク。Mobikeと並ぶ2大シェアバイクの1つ。最近映画のキャラクターであるミニオンズとコラボした自転車をリリースしたことでも話題になっている。
<シェアデリバリー>
・饿了么:ele me(https://www.ele.me/)
専用アプリ上で食べたいものを注文し、デリバリーしてもらえるサービス。ピザや寿司などが中心の日本のデリバリー市場とは異なり、個人商店やマクドナルドなどのファストフード、ジューススタンドまでもが参入している。アプリ上で決済できる点も非常に便利。
<その他>
・シェアスマホ充電器 小电 xiao dian(http://www.xiaodian.so/introduction.html)
・来电 lai dian(http://www.imlaidian.com/)
他にもバスケットボールのシェアや雨傘のシェアなども…。
ざっとご紹介させていただいた通り、現在はITスタートアップに多額の投資マネーが集まる中国らしく、ありとあらゆるものをシェアリングエコノミー化していくという非常にパワフルな状況になっています。
基本的には各サービス共にユーザーが自社サービスを使用することで収益を上げていくモデルで急成長していますが、すでにコラボレーションなどの取り組みを行っているケースも見られ始めており、まずはこの辺りに日本企業のブランディング活用の可能性があると考えられます。
一例としてofoが仕掛けたミニオンズとのコラボは「シェアバイクブランド戦争の開始」と言われており、まさにここに来て始まったばかりの動きです。
他にもofoは、女性が乗りやすい設計の自転車や、「筋肉自転車(肌肉车)」という愛称で呼ばれるバギー型自転車のリリースなど、自転車そのものに様々な付加価値を付ける工夫をしています。
中国では1つのビジネスモデルが成功すると、それに追随して類似サービスが次々とリリースされます。このように類似サービスが溢れる中で、他のサービスにはない「新たな付加価値」を付けるという考え方は中国ブランディングにおいても注目すべきかもしれません。
では、そもそもなぜ中国でこのように急速にシェアリングエコノミー領域のサービスが成長しているのでしょうか。
◎中国における社会と人の関係性の変化
中国で社会そのものを見た際に、現実的には「個」がいかに自立するかというのは非常に重要な事です。それは「自分(や、家族を始めとした身内)」がいかに経済的にも精神的にも満たされているかという「個へのフォーカス」であると言えます。
分かりやすい言葉に変えると「個人主義」と呼ばれる行動様式です。
そもそも個人主義の世界では組織へ帰属するかどうかは手段の1つであり、収入の選択肢を増やす(副業と言える範囲を超えて)のはごく一般的な事であると言えますので、ある時は「消費者」でも、ある時には「バイヤー」に代わり、そしてある時は「セールスマン」になるという、プロとアマの境界線の薄さは圧倒的に中国ならではの現象であると言えます。
そしてこのような「個人主義」をベースとした社会に「デジタル化」が進んだ事で、新たに個と個の関係性を定義づける「相互評価」の仕組みが生まれました。
当方が寄稿した「中国ECで上手くいかない日本企業はユーザーからの信頼を獲得できていない。という大事な話。」(https://monipla.com/china-smmlab/page/chinabranding-trust)でも書かせていただいた通り、モール内のECサイト側も評価値によって与えられる制限範囲が変動するため運営時に出来ることが変わってきます。淘宝(Taobao)のランク付けに関しては、個と個の相互評価が主立った軸になっており、「個で稼ぐ」には「きちんとサービスを提供しなければならない」という状況になっています。
中国は人脈(ストレートに言えばコネ)が非常に重要であると言われていて、これは決して間違った事ではないのですが、逆にこのコネに振り回される事がネガティブに映るようになってきたのもまた事実です。
故に、デジタル化による相互評価のシステムは、きちんとしたサービスを提供した人間が勝つというプロとアマの境界線が薄い中国人の行動様式と非常に親和性が高いのが事実です。
この心理こそがシェアリングエコノミー領域のサービスを押し上げる大きな要因になってきた訳です。
2008年の北京オリンピックを前後として、急速に発展が進んだ北京ではたったの数年間で多くの職で給与が40%もアップするという異常な経済成長を遂げ、収入がアップした一般人も当たり前のようにタクシーを使用するようになりました。
こうなると組織に属しているタクシードライバーは、放っておいてもお客は拾える上、自分の収入もどんどん上がっていく事になります。結果として乗車拒否などを当たり前に行うようになり、目を疑うようなサービスレベルの低下が起きた時期がありました。
「個」で稼がなければいけない白タクの方が、よほどサービスが良いというのは当時の北京在住の仲間内では有名な話でもあります。
シェアカーのサービスが始まる前から、相互評価をベースとしたシェアリングエコノミーサービスが受け入れられる土壌が出来上がっていた訳です。
◎今後の中国シェアリングエコノミーサービスの活用について
まずは「自社の商品を持たせる」という既存の考え方から「シェア」させるという発想は可能性があると思います。
家電、家具、機械などの高価格帯の製品であれば、全て可能性は考えられると思います。
次にメーカー企業は常に消費者からの一方的な評価によってその価値を左右されてきた訳ですが、逆に消費者を評価することで互いの関係性のクオリティを上げていく事が出来ると考えるべきです。
例えば、Mobikeの場合、アカウント開設時に持ち点を付与して、返却エリアを守らないなどの行動を起こす度にポイントが減り、それがゼロになるとアカウントが凍結される仕組みを持っています。
ブラウン社の電動歯ブラシで見る好事例(※)のように、スマホと連携を取れるIoT家電として設計を行えば、製品の利用実態などによってユーザー評価を行い、優良顧客としての付加価値を与えていくといった活用が考えられます。
※オーラルBアプリ
https://www.oralb.braun.co.jp/ja-jp/product-collections/oral-b-app
つまりシェアリングエコノミーサービスから見えてくるメーカー企業の取り組みとしては、問題が起きた場合デジタル特有の非常に速い速度で評価が下がっていくという事を頭に入れて、クオリティの高いカスタマーサポートを行う事に全力で取り組むべきであるという事以外に、能動的に逆評価を行っていくような仕組みを持つ事で良質な顧客組織を作っていけるという事に目を向けるべきなのです。
ミニオンズのコラボのように、規模感が大きく注目度の高いシェアリングエコノミーサービスをプロモーション使用するだけでなく、こういったサービスから相互評価をどう活用してブランディングしていくのかといったヒントが見えてくるのではないかと思います。
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<筆者プロフィール>
小林 淳(Jun Kobayashi)
株式会社アイディール代表。 世界初のモバイルメールのメディア企業、某大手電機メーカー子会社、CRM系企業の役員を経て、2007年株式会社アイディールを設立。 現在は中国に向けた越境ECを中心に、日本のメーカー企業の中国におけるブランディングやセールスを行っている。
中国に向けた越境ECプラットフォーム運営の株式会社アイディール http://ideal-inc.com/
※記事作成アシスタント:株式会社アイディール オペレーションチーム 依田有里佳
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<サービス詳細> https://www.aainc.co.jp/service/weiq/
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