中小メーカー企業の中国進出タイミングと具体的な3つの対策について<後編>【中国越境EC&インバウンドで成功するブランディング術】
変化の速い中国市場で日本企業がスムーズにビジネス展開するためにはどうしたらいいのか?具体的な行動プランの考え方をまとめてみました!
こんにちは、アイディール小林です。
前回は日本の中小メーカー企業が大手メーカー企業と中国進出で戦うにあたり、そもそも「今のタイミング」に「スピード感を持って」推し進めていく事の重要性や可能性について書かせていただきました。
前回記事:中小メーカー企業の中国進出タイミングと具体的な3つの対策について<前編>
【中国越境EC&インバウンドで成功するブランディング術】
https://monipla.com/china-smmlab/page/besttiming_1
このような大きな潮流が生まれていても、中国進出を目指す日本企業の中には、いまだに日本の法律や進め方を強要してしまうような会社もあります。
しかし、逆に中国企業が日本に進出してくる際に「中国の決まりではこうなっている」と言われると、ここは日本なのに……と考えるはずです。
この辺りの事から、前編では日本企業が中国で成功するためには中国の文化を知り、中国での仕事の進め方を覚え、現場主義によるフレキシブルな意思決定の仕組みを持つべしとまとめさせていただきました。
後編では、実際にこのような状態を作るにあたり、どのように不安を解消し進めていくことができるのかといった、具体的な行動プランについて書かせていただきたいと思います。
◎中国で仕事を進めるにあたってよく起こる勘違いとは?
そもそも中国は法律の概念が薄く、何か問題が起こり裁判になったとしても必ず日本企業が不利になるのではないかとお考えの方がかなり多いと思いますが、中国も法治国家なので決してこのような事はありません。
しかし本音と建前のダブルスタンダードが当たり前の中国では、「決まり(ルール)とちょっと違うのでは?」と感じる事が少なからずあるため、「法律なんてないものと同然」と勘違いされがちなのです。
前編でも契約関連のお話を少しだけさせていただきましたが、中国では契約書の意味がないという声を耳にすることもあります。
ただ、中国では民事裁判において過去の判例がまだまだ少ない事から、実は契約書に記載されている事がかなり重要視される傾向があるのです。ですので基本的な取り決めについては、作業が無駄とは考えずに、最低でも覚書として必ず何らかの形でエビデンスを残していくことを日本以上にご留意いただければと思います。
また、日本企業であっても中国でビジネスをするからには中国の法律に則るのが基本ですので、実際に物を売るためには中国の役所での許認可が必要不可欠になります。
しかし前述した通り、本音と建前のダブルスタンダードが当たり前の中国では、役人個人の裁量権が大きいのもまた事実で、1つの許認可に対して定型通り進めようとすると何故か壁に当たってしまって進まないことがあります。
このような場合も「中国は許認可を通すことが出来ない国だ」と勘違いされてしまうことがあるのですが、そもそも別の窓口に申請するだけで通過してしまう事もあります。
また、拒絶理由になっている書類の一部をその場で書き換えてすぐに提出し交渉することで通過させるというパワープレイが功を奏することもあります。
これらは、申請が通らずに営業活動を始められないくらいならば、何とかして申請を通して、それに沿って営業活動をカスタマイズしていく方が良いだろうという合理的な考え方な訳です。
そのため中国での営業活動においては、現地のパートナー企業などに「一定の裁量を与える」ことが出来なければ、基本的にはうまくいく事はあり得ません。
ただ、この考え方をそのまま受け入れる必要はありません。なんでも自由にやらせれば良いという事ではないからです。
そのため、これは中国企業との交渉時にも有効な考え方ですが、自分たちが絶対に譲れないポイントを予め決めておくということが重要になってきます。
例えば、日本で賃貸物件を探している時に、「日当たりも良くて間取りも広く、トイレ・風呂は別で、駅からも近くて2階以上で…」といった形で理想を語っても、何かを諦めた経験があると思います。
これと同じで、全てのリスクを排除することは出来ないけれど、これだけは徹底的に守ろうというポイントを決めてから、実際に進めていこう、という事です。
•モノ作りならば最終的には身体への危害を避けることに注力する…。
•会社としてのダメージを最低限にしたいなら、別法人化でヘッジする…。
•商品のクオリティならば徹底した製造コントロールを目指す…。
ここはぜひ頭を絞っていただきたいところです。
そして、ここまでの下準備ができたら、次は実際に不安の解消(=リスクの排除)という行動について具体的に考えてみましょう。
◎ブランディング前の不安解消(=リスク排除)について
前編でもお伝えした通り、日本企業の考え方はよく言えば慎重すぎる傾向があり、(当社の過去事例でも)あるカテゴリの製品について、中国で販売が禁止されていない事を証明しなければならない、という話があがった事があります。
しかし、禁止されていないという事は、そもそもそんな法律は存在しない訳です。
存在しない事を証明するというのは客観的には不可能です。
このような場合、どのように合理的判断をしていけば良いかを考えていくと、不安の解消(=リスクの排除)は以下の3つの行動に集約されます。
1.自社製品のカテゴリにおける製造や販売の経験者に話を聞いてみる
シンプルで、当たり前のことでもありますね。製造を委託しているOEMメーカーのご担当者でも良いかもしれません。自社で分からない事を聞く相手としては経験者が最も有効ですので、思い切って連絡してみましょう。
2.カテゴリが同じ他社製品をランキング10番目くらいまで全て買ってみる
それらにはどのような注意書き表記があるのか、などを調べることで必要なことを全て明らかにすることが出来ます。同一カテゴリにおける大手メーカー企業の製品ならば、事例としてなお良いでしょう。淘宝(Taobao)やAliexpressなどストレスなく国外配送してくれるサービスがかなり増えています。すぐに研究商材を集めてみましょう。
3.疑問があれば役人にも聞いてみる
冷たく対応されることが多いのも事実ですが(笑)、少なくとも最終的に許認可などの意思決定する役所の担当者に必要なルールを聞いておくことも大事なことです。意外に丁寧に教えてくれることもありますよ。
リスクを徹底的に排除したい気持ちは非常に理解できるのですが、そもそも100%のリスクの排除は不可能なことですので、「何も起こさないこと」が主目的になっているような海外進出の仕方では、グローバル時代に勝つことは難しいのは誰の目で見ても明らかです。
海を渡るという事は、そのリスクを超えた先にある「まったく新しい世界の創造」であると思います。
世界的に見てもこれだけ購買力がある中国には、世界中から「物」が集まってきているのが事実です。慎重さが仇になり、この波に乗り遅れてしまえばグローバル時代のナンバーワン市場を取り逃がすことになる事は明確でしょう。
本当に素晴らしいプロダクトを作れる日本だからこそ、徹底してチャレンジして欲しいと切に願うのみです。
<筆者プロフィール>
小林 淳(Jun Kobayashi)
株式会社アイディール代表。 世界初のモバイルメールのメディア企業、某大手電機メーカー子会社、CRM系企業の役員を経て、2007年株式会社アイディールを設立。 現在は中国に向けた越境ECを中心に、日本のメーカー企業の中国におけるブランディングやセールスを行っている。
中国に向けた越境ECプラットフォーム運営の株式会社アイディール http://ideal-inc.com/
※記事作成アシスタント:株式会社アイディール オペレーションチーム 依田有里佳
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