中小メーカー企業の中国進出タイミングと具体的な3つの対策について<前編>【中国越境EC&インバウンドで成功するブランディング術】
いざ、中国進出!変化の速い中国市場に日本企業はどう対応したらいいのか?タイミングの見極め方と具体的な対策をご紹介します!
こんにちは、アイディール小林です。
当コラムでは中国でのブランディング手法を始めとして、越境ECやマーケティング、そして中国人消費者の心理などについて書いてまいりました。
中国で商品販売を行う際には、このように現地のあらゆる特徴を良く知り、適した手法をきちんと取る事が重要であるということから、かなり突っ込んだ手法論についても皆様にノウハウを公開しています。
そこで今回は実際に中国に進出するタイミングはいつが適切なのか、その際に大事なポイントが何なのかについて、2回に分けてご説明していきたいと思います。
◎中国企業の仕事のスピード感は文化の違いによるもの?
まず、現在の中国はあらゆる分野の事業がとんでもない速度で成長をしており、例えばalipayやWeChatPayを始めとしたスマホ決済などの金融領域、ドローンやスマホ、VRゴーグルなどの電子ガジェット領域、シェアハウスやシェアバイクなどのシェアリングエコノミー、TaobaoやJDに基本搭載されている生放送動画を活用したライブコマースなど、明らかに日本が後れを取っていると言わざるを得ないビジネス領域がかなり増えてきました。
このように今の中国ビジネスにおける市場環境は、日本では想像できないほどスピードが速いのは疑いようのない事実ではあり、ある日テレビで放映された画期的な製品が1週間後には深センの工場でモックが製造されて同等の機能が実現できる所まで進んでしまっていたというのも、決して笑い話でなくなってきています。
そもそも、こういったスピード感の違いは、スタートアップへの投資マネーが集まりやすい環境や、国家として新規ビジネス領域への後押しがある事も大きな理由の1つではありますが、日本企業と中国企業では仕事の進め方が大きく異なるという点も挙げられます。
日本企業は良く言えば思慮深く慎重ではありますが、例えば日中間の協業に関する打ち合わせで盛り上がったとしても、その後の進行は「まずは本社の決済を」「まずは機密保持契約書を」といった話になることが多く、そのスピード感に中国企業側がやきもきするというケースが良く見られます。
担当者が出張ベースで日本から来ている場合、次に会えるのが数ヵ月後であるといった事もざらにあり、なかなか思うように仕事が進んでいかないという事を(これは中国企業側のグチとして)聞くことも多くあります。
この違いについては、日本企業の場合はまずは「上手くいかなかったケースを最大限想定」する傾向があり、逆に中国企業は「上手くいくことだけを想定」する傾向がある事が要因です。
特に大手企業の場合、よく見られるのは情報収集と同時にリスクを査定し、そのリスクを探し尽くすことに精力を使いすぎるという事象です。
こういった仕事に対する文化的視点の違いによる失敗事例について、実例を見てみましょう。
A社の失敗事例
TmallやJDなどで越境ECサイトを複数運営しているEC系大手の中国企業が、A社のメーカー旗艦店を運営したいと打診。
TmallやJDなどの大手プラットフォームへの出店は年々審査が厳しくなっており、メーカーが直接「商標の使用を許可」し、「正規取り扱いの許可証」「旗艦店運営の授権証」を発行しなければならない。
しかしA社には中国法人があり、伝統的に中国企業との契約は中国法人同士で締結することになっており、日本本社とは契約ができないという状況が発生。さらに契約をしていない企業には許可証や授権証の類の発行ができないという事で、本件の中国企業はプラットフォームへの申請がとん挫。
A社の日本本社では、数か月に渡り本件の可能性(リスクの排除)について検討したが、その間に本件の中国企業はA社のライバル企業の旗艦店運営を始めることになり、A社は有力な中国企業との協業による中国進出のチャンスを失う。
B社の失敗事例
B社は、自社製品の中国総代理店を任せるために、中国の大手ディストリビューターとおよそ1年かけ何度かの出張やメールなどで打ち合わせを重ねてきたが、ようやく契約の基本合意が固まってホッとしていた。
契約書のドラフト制作を同時並行しながら、社内の在庫を確保し、契約締結をもってすぐに輸送できるよう社内のすり合わせや稟議、準備などを進行させ、あとはドラフトの最終確認と捺印という状況になったある日、中国企業から合意内容の見直しの依頼が入る。
すでに準備が終わっていたB社は後に引く事が出来ないため、基本合意内容のまま進めたいと打診をするものの、すでに焦りが伝わってしまった事で中国企業側はB社の足元を見ながらさらに厳しい合意内容を突きつけ、B社は内部で大混乱が生まれてしまった。
A社の事例の場合は、単純にリスクの勘案を重く見すぎてしまった事による弊害であると言わざるを得ません。
そしてB社の事例は、ここ1~2年の間に世界的な日本の大企業ですら(!)同じように最後の最後に振り回されている姿を見かけた事があるはずです。
このような状況が起きた際に日本側から「やっぱり中国は信用できない」などのネガティブな意見に繋がってしまう事もありますが、これも実はシンプルに「文化の違い」なのです。
基本合意ではまだ「完全に契約が締結された訳ではない」のですが、日本企業側は「この内容が最終」だと考え、中国企業側は「もっとより良い基本合意を目指したい」と考えるかどうかの違いなのです。
ですので中国企業側の考え方を理解した上で、基本合意時点で「どこまで詰めて」、その後「何を詰めていくか」を戦略的に切り分けておくと非常にスムーズに契約に進んでいくことが出来ると考えていただけると良いかと思います。
つまり中国企業との大きな契約については、起こり得ることを想定の上、時間をコントロールして進行させる事が非常に重要であるという事です。交渉において「時間をあえて引き延ばす事ができる余力」を持ちながら、「相手のスピード感に合わせる」のが、コツなのです。
◎では、中小メーカー企業の戦い方とは?
しかし、日本の大手メーカー企業は、早い所ならばおよそ30年前から中国進出を始めており、さらにいざ契約が合意された後に動かす事ができる力としては、ここ数年でようやく中国進出を検討し始めた中小メーカー企業とは圧倒的な差があるのは事実です。
もし、日本の中小メーカー企業が大手メーカー企業と戦わなければならない場合、有効的に活用できるのは中国のスピード感を活かすことに他なりません。
例えば、中国ECの世界でも2015年には「動画コマース」が先進的とされていましたが、2016年から2017年にかけては「ライブコマース」が先進的とされるように変わっています。たったの1年で先進的な手法が移り変わっているのです。
グローバル時代においては情報の拡散はほぼ一瞬になりました。
これにより、「機をどう活かすか」という課題と向き合うのは日本の企業でも必須になっているはずです。
中国進出の「機」がすでに訪れていること自体はもはや、改めて論じる必要はないでしょう。
ただ、この中国進出を現実的に推し進めるためには、現場主義によるフレキシブルな意思決定の仕組みをもってして、動いていきながら問題点をリアルタイムに潰していくような方策が非常に重要になります。
しかし国を渡るという事は現実的に見えない部分に対しての恐怖心があるのも事実だと思います。
ですので、後編ではこの辺りの「中国進出における不安の解消」を具体的にどのように進めていけば良いのかをお伝えしていきたいと思います。
<筆者プロフィール>
小林 淳(Jun Kobayashi)
株式会社アイディール代表。 世界初のモバイルメールのメディア企業、某大手電機メーカー子会社、CRM系企業の役員を経て、2007年株式会社アイディールを設立。 現在は中国に向けた越境ECを中心に、日本のメーカー企業の中国におけるブランディングやセールスを行っている。
中国に向けた越境ECプラットフォーム運営の株式会社アイディール http://ideal-inc.com/
※記事作成アシスタント:株式会社アイディール オペレーションチーム 依田有里佳
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