独自発展を遂げる中国の電子決済市場。ここからチャンスを見出すことが出来るか!?【中国越境EC&インバウンドで成功するブランディング術】
中国では今、日常生活の支払いすべてがスマホひとつで済むほど、電子決済が進化しています。主要な中国電子決済サービスを紹介するとともに中国の「生」の決裁市場を深堀りし、どこにチャンスが眠っているのか、じっくり紐解いていきます。
こんにちは、アイディールの小林です。
今更ながら言うまでもありませんが、日本のEC市場における決済手段はクレジットカードや代引きがまだ一般的です(オンライン決済、スマホ決済の動向整理 - 消費者庁 http://www.caa.go.jp/adjustments/pdf/160630shiryo1.pdf )
直近ではコンビニ支払いなど他の決済手段も伸びてきていますが、メルカリなどの一部サービスにおいては自社サービス内にエスクローサービスを内包し、販売した売上と購入時に支払うお金を1つにまとめるなど、新たな電子決済の広がりが見られるようになってきました。
中国でのスマホを用いた電子決済は、ECの世界だけでなく日常生活においても切っても切り離すことのできない状況になっており、日本とはだいぶ異質な環境になっています。
今回はこの辺りを深堀することで、中国ECのチャンスについて探っていってみたいと思います。
それではまず中国で一般的な電子決済についての紹介をします。
◎主要な中国電子決済サービスの紹介
・アリペイ(Alipay)/支付宝(https://www.alipay.com/)
阿里巴巴集团(アリバグループ)の関連会社が展開している電子決済サービス。電子決済市場ではシェアNo.1を獲得しており、割合でいうと、2017年現在約54%を占めています。日本では2017年1月よりローソンの全店舗でも使えるようになるなど、徐々に日本においてもその存在感を強めています。
・微信支付(https://pay.weixin.qq.com/index.php/core/home/)
腾讯(Tencent)社が運営している電子決済サービス。シェアはアリペイ(支付宝)に続いて2位で、約40%を占めています。腾讯社が提供している微信(WeChat)を通してお金のやり取りができることが特徴です。
支付宝と微信支付で市場の約9割を占めていますが、その他
・连连支付( http://www.lianlianpay.com/ )
・壹钱包( http://www.wanlitong.com/hd/2017/520pc/index.jsp?mcId=bz-PChead )
など、小さいものを入れるといくつかあります。
日本でもこれらに相当するサービスとしてLINE PayやAny Payなどが存在しますが、まだまだ中国ほど一般生活に浸透していないのが現状でもあります。
鶏が先か卵が先かといった議論にもなり得ますが、このようなスマホを用いた電子決済のユーザー数が増えたことは、中国ECの急拡大を後押しされたともされており、現在では街中でお財布を持ち歩く必要がないほどに生活に密着した決済手段に成長してきました。
実際に街中でどのように電子決済が使われているのか、当社がインタビューした内容を元に一例を挙げてみたいと思います。
◎中国での電子決済を通じた日常風景
【会社員A氏の日常】
≪朝≫
・家の近くの屋台に朝ご飯の肉まんを買いに行く。肉まん屋さんのおばさんとは個人アカウントを通して支付宝で支払い。
・会社に行くのに遅刻しそうだったからタクシーに乗車。支付宝で支払ったため、面倒な小銭のやりとりはしていない。
・タクシーの中で水道代、電気代、ガス代を支付宝で支払い。
≪昼≫
・お昼は饿了么(ele.me:中国の飲食デリバリーサービス。日本のデリバリーとは異なり多くのお店がこのサービスに加盟しており、安価且つ素早く料理を届けてもらえる。)でデリバリーを頼んだ。饿了么のアプリ上で支付宝にて支払ったため、料理が届いたら受け取るだけ。
・コンビニにコーヒーを買いに行く。支付宝で支払い。
≪夜≫
・仕事が終わり、会社の同僚と一緒にご飯。支付宝の割り勘自動計算機能を使い、面倒なやりとりを省いて楽々お支払い。
【学生Bさんの日常】
≪朝≫
・携帯に残っているお金が少なくなっていたため、学校に行く前に支付宝を通して携帯にお金を追加(中国の携帯はプリペイド式)。
≪昼≫
・学校で必要な教科書を休み時間に淘宝(taobao)で購入。支付宝を使用して支払い。
・週末、友達と北京の故宮博物院にいくので、そのチケットを支付宝アプリ内で予約。
≪夜≫
・支付宝を使って病院に行く予約をしていたので、授業終わりに診察をしに。予約をしていたから、並ばずに済んだ!薬代も診察費用も病院から自動的に引かれていた。
・帰りはmobike(現在中国で大流行中の、乗り捨て型レンタル自転車)に乗って帰宅。料金は支付宝からmobikeアプリにチャージしたお金で支払い。
中国で一般化した電子決済は、こういった生活風景を見てみると、日本とはまったく異なる発展形を遂げてきていることとがよく分かります。
さらに中国ではこのようなサービスはさらに進化をしており、日本国内ではまだ知名度はないものの、2015年頃からアリペイ(支付宝)などを用いたクレジット業務も始まっています。
◎進化が始まった中国のクレジット業務とは?
その「個人向けクレジット業務」はネット決済大手のアリペイ(支付宝)が提供する「花唄(huabei/ファーベイ)」というものです。
EC大手の京東(JD)社も同じく「白条(baitiao/バイティアオ)」という名の個人向けクレジット業務を提供しており、このようなサービスを通じて両社が中国ECで何を提供しているかというと、いわゆる「分割払い」なのです。
元々銀行やクレジットカード会社も「後払い」や「分割払い」を提供していましたが、中国の文化ではそもそも先払いが基本で、しかもクレジットカードが作れない消費者が多かった中、オンライン企業がECに最適化された信用取引を提供し始めたということなのです。
台湾ではこのような分割払いは利用者を急激に伸ばしていますが、中国大陸ではどうなのでしょうか。
まずはそれぞれのサービスを簡単に比較しながらご紹介します。
<情報出展>
・中国証券網
http://news.cnstock.com/industry,cyqb-197001-3940533.htm
・百度百科事
http://baike.baidu.com/item/花呗/16499878
http://baike.baidu.com/item/京东白条
・蚂蚁金融サービス
http://media.antgroup.com/article/news?category=花呗
・sina ファイナンス
http://finance.sina.com.cn/stock/t/20140927/020820428218.shtml
中国で先払いが基本だった背景を率直に言うと、サービス提供者が消費者を「信用」して取引を行うことが難しかったからです。
ではそれを第三者が算定して、その信用を客観的な物にしたらどうか、と立ち上がったのが「芝麻信用」です。実は前述の「花唄」は、この「芝麻信用」と組み合わさる事で最強の決済プラットフォームになっています。
◎中国で生まれた最強の決済プラットフォームとは!?
「芝麻信用」はアリペイを提供するアリババのグループ会社で、アリペイの使用履歴などのビッグデータを元にした機械学習によって信用ランクを自動発行するサービスです。
300点から950点までのスコアがあり、個人情報の開示/ソーシャルグラフ(人との繋がり)/支払い・返済能力/過去の信用情報/行動などを元に算出されており、特にソーシャルグラフまでもが信用スコアに換算される点は、日本とはまるで異なった文化を感じます。
前述の分割払いの場合、600点以上のユーザーのみが使用できるなどの他、点数によって様々な便益を受けることができるようになるため、若者の間ではこの点数を自慢したり競い合うなどの現象も起こっています。
また、このような信用のビッグデータ解析サービスについては、アリババ社以外にも複数社が運営しており、今後はどこのデータが最も整合性が高いのか。などの議論が産まれていくものと思われます。
いずれにしても日本製の商品は地場メーカーと比べると、品質やサポートなどのクオリティはさておき、価格面だけで言うと(貿易コストも加味され)どうしても高額になっていきます。
高額な値付けに対して納得感があるような品質があれば、必ず中国消費者もそれを欲しいと考えるようになります。しかし購入するかどうか悩む…という場合には、このような分割払いは非常に有効であると言わざるを得ません。
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最後にTaobaoなどでの分割払いサービスの導入についてお話すると、サービス提供者がTaobaoで分割払いを導入したいと考えた際、基本的には誰でも導入することができます。
消費者が利息を払う必要がない分割払いを提供することもできますが、そもそも導入することのできない種類の商品もあるので、事前に下調べが必要です。
ただし、買い手はなんでも分割にできるというわけではなく、600元以上購入することで初めて分割払いを選択することができます。
花唄や白条などのクレジットを活用して分割払いを提供しているECサイトはTaobaoやJDだけではなく、唯品会(VIP SHOP)、聚美优品(ジューメイ)、一号店、亚马逊(AMAZON)などの主要な会社への導入が広がっており、高額商品については今後もさらに分割払いで販売するというスタイルが伸びていくことが予想出来ます。
日本でもジャパネットたかた社が分割手数料を負担して、お客様に購入しやすい環境を作っていることは非常に有名な実例ですが、同じように支払い方法をあえて分割払い中心にするなど、中国ではまだまだ勝負所のあるマーケティング手法が考えられると言えるでしょう。
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<筆者プロフィール>
小林 淳(Jun Kobayashi)
株式会社アイディール代表。 世界初のモバイルメールのメディア企業、某大手電機メーカー子会社、CRM系企業の役員を経て、2007年株式会社アイディールを設立。 現在は中国に向けた越境ECを中心に、日本のメーカー企業の中国におけるブランディングやセールスを行っている。
中国に向けた越境ECプラットフォーム運営の株式会社アイディール http://ideal-inc.com/
※記事作成アシスタント:株式会社アイディール オペレーションチーム 依田有里佳
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