ライブコマースから見る日中EC市場における消費者心理の比較とブランディングへの活用【中国越境EC&インバウンドで成功するブランディング術】
Eコマースの新しい売り方として国内外で注目されている「ライブコマース」
日中の現状をまとめ、活用のヒントを考えてみました!
こんにちは、アイディール小林です。
過去に寄稿したコラムでもお話した事がありますが、当社の重要なミッションは「日本製品を中国に販売すること」なので、「販売する」ための手法は「本当に売れる」ものでなければならないという当たり前の背景があります。
そのためEC領域に限る事なく、実店舗やTV通販、雑誌通販、ライブコマースなど多岐に渡る販売手法と販売網を構築しているのが実情です。
結果としてあらゆる販売手法に対する知見が貯まっていく訳ですが、その中でもライブコマースについては数多く実施を行って参りました。
日本国内では最近になってようやく事例を学び始める状況になってきていますが…、中国では2016年3月から大手ECプラットフォームであるアリババ社の「タオバオ(Taobao)」がオプション機能としてローンチした事で一気に火が付き、日本よりも早い時期からスマートフォンを使った生放送型のライブコマースが盛り上がってきています。
※中国のライブコマースの基礎知識については、以前に寄稿した記事にも詳しく書かせていただいております。
ぜひ合わせてお読みください↓
中国マーケティングラボ/稼いでいる人はもう始めている!
ライブ動画配信興隆期の「今」知るべき中国ライブコマースの基礎知識
https://monipla.com/china-smmlab/page/china_livecommerce
◎保存版/ライブコマースのサービス紹介
直近の未来予想においては、ネットの普及なども後押しとなり、個人のエンパワーメントが最大化され、組織で稼ぐ時代から個人で稼ぐ時代に移り変わっていくと言われ始めています。
そういう世界の中で、発信力がありコンテンツを生み出す力のある個人が情報をネットで配信し、広告収益やEC収益を上げていくというのは必然でもあります。
日本国内でもメルカリ社の「メルカリチャンネル」、Candee社の「LIVE SHOP!」、SHOWROOM社の「SHOPROOM」など次々とライブコマースプラットフォームがローンチされており、タレントやインフルエンサーなどを中心にファッションやコスメなどのライブコマースが盛り上がってきています。
まずは、日本国内のライブコマースサービスについて、どんなサービスがあるのか見てみましょう。
■メルカリチャンネル
https://www.mercari.com/jp/mercari-channel/
メルカリチャンネルは、ライブ配信をしながら売ったり買ったりを楽しめる、ライブフリマ機能。ライブ配信ライブ配信中の取引も、メルカリの安心なシステムを通して楽しめる。購入者はその場でライブ配信者に質問をできる。
配信権限はランダムに与えられる。配信権限が与えられなければ、配信をすることができない。
■Live Shop!
Live Shop! は、モデルやインスタグラマーといった出演者が、ライブ配信で流行のファッションやメイクなどを紹介し、気になったアイテムを視聴者がその場で購入できるアプリ。配信中に視聴者がコメントし、出演者がアンケート作って、その結果にそって配信を進めるなど、と双方向にコミュニケーションがとれる、モバイル時代ならではの買い物体験ができる。
■Shoproom
https://www.showroom-live.com/shoproom
SHOPROOMはライブストリーミングで商品を紹介し、視聴者はリアルタイムで商品購入できるサービス。アイドルやアーティストのライブ動画ストリーミングプラットフォームSHOWROOMが展開している。
ライブストリーミングで商品の特徴などを紹介しながら、ECサイトに誘導して商品購入につなげていく。尚、次回配信日は未定。
■Laffy
「作りながら売ろう」をコンセプトとした、クリエイターのためのライブコマースアプリ。ハンドメイド作家をメインにイラストやフィギュア作成、音楽制作といったクリエイターがライブで商品の特徴や制作過程を配信しながら、視聴者とコミュニケーションをとれることが大きな特徴。誰でもライブ動画が配信できる。
■PinQul
東大発ベンチャーがリリースしたライブコマースアプリ。「PinQul」はInstagramなどで人気のモデルやインフルエンサーがアプリ内でライブ配信を用いて商品の紹介を行い、ユーザーは気になるアイテムを配信中に購入することができる。販売商品は3つに分けられる。1つ円はインフルエンサーの私物、2つ目は提携ブランドの商品、3つ目はインフルエンサー自身がデザインし、弊社が提携するODMメーカーなどで商品化したもの。
■BASE LIVE
ECプラットフォーム「BASE(ベイス)」に登録している店舗が商品や店をライブ配信で紹介できる。店舗をフォローする顧客との間で、リアルタイムで双方向のコミュニケーションを取ることもできる。
上記のように、AMAZON、ヨドバシカメラといった大手ECベンダーがライブコマース機能を加えるのではなく、ECの中でも比較的CtoCに寄ったプラットフォームが新サービスとしてローンチしたり、ライブコマースに特化した単独アプリらのローンチが目立っているのが1つの特徴かもしれません。
一方、中国でも红豆角直播(Hon dou jiao) http://www.hongdoujiao.com/ といったライブコマースの単独アプリもあるにはありますが、タオバオが提供するライブコマース機能が市場を独占しているのが実情でもあります。
■红豆角
誰でもライブ配信をすることができる。ライブ配信中に質問をすることができ、配信者と直接コミュニケーションをはかることができる。
単独のアプリとして、ある程度目立った活動が出来ているのはほぼ1社であるという実情からも、タオバオの独占的な状況が非常に良く理解できると思います。
◎ライブコマースで避けたい失敗事例とは?
タオバオがライブコマース機能を開始する前は、直播(ZhiBo)と呼ばれるライブ配信アプリ(日本ではニコ生やLINE LIVE!などと同等のライブアプリ)の中から、人気のある配信主が自身のタオバオやWeChatモールに誘導して商品販売をしていました。
しかし、このような場合、生配信アプリを閉じてECアプリを立ち上げなければならないため誘導のハードルが高いことが課題でした。
実際に、我々が一直播(YiZhiBo)という直播アプリ内でインフルエンサーに商品を紹介して貰い、京東商城(JingDong/JD)のショップに誘導させようとした事例では、コメントも活性化し100万回近く視聴されたにも関わらず、結局10件程度しかアクセスがなかったという、単純なアクセス誘導実績としては失敗に繋がったケースもありました。
つまり、ライブアプリからECアプリに遷移させる事がいかに難しいかという実例です。
一方でタオバオのライブコマース機能は、放送画面を立ち上げたまま購入ページに進めるなどのシームレスな連動が可能になっており、またそもそもECアプリに集まるユーザーは購入意欲が高い傾向が強く、成果も上がりやすかったという背景があり、前述の通りライブコマースのプラットフォームとしてはタオバオに集約されてきた訳です。
また、実際に中国でライブコマースが流行った背景としては、生放送特有のウソや加工のしにくい特性が、商品購入時に「まずは、騙されたくない」と考える中国人消費者心理と圧倒的に親和性が高かったこと。実はお祭り好きで、他人を応援するのが好きな国民性も大きかったと考えられています。
みんなで盛り上がるようなライブコミュニケーションを取りながら「あと1つ売れたら目標達成だ!誰か助けて!」「よし、それなら俺に任せろ!」「おおーっ!」と進んでいく感じは、まさに中国人の国民性にぴったりな訳です。
毎年のW11(独身の日/11月11日)のセールがなぜあれだけ盛り上がるのか?という背景には、実はこういった国民性があることも1つの理解として覚えておくと良いかもしれません。
◎ライブコマースのブランディングへの活用方法とは?
当然ながら(AMAZONなどで検索をして)直接指名した商品しかECで購入をしないといった方やケースもあるとは思います。いわゆる目的買いです。
ライブコマースは、配信者と消費者が双方向のライブコミュニケーションを行っていくエンターテイメント性の高いショッピング体験なので、ある意味ではまったく真逆に位置しているとも言えます。
しかし、この特性は「今まで知らなかった商品に出会う機会を創出できる」ものであり、日本のメーカー企業はブランディングにおいても存分に活用すべきであると考えられます。
そもそも当たり前の話ですが、知名度がなければ自社のブランド名で検索されることはありません。
単純にECショップに商品を掲載するだけでは、結局は多大に広告コストをかけ続けていかなければ決して売れることがない訳です。そして認知率が低い状態でECサイトにアクセスをさせてもそもそも騙されたくないという消費者心理を持った中国人ユーザーは簡単には購入ボタンを押してはくれません。
購入が増えなければ、レビューが増えることもなく、レビューがなければ売れることもない。こうして中国でよい成果が上げられずに「中国市場は難しい」という判断に繋がっていくことになる訳です。
ライブコマースの場合、このようにブランド認知が低かったとしても能動的に商品紹介を行っていくことができます。
特に売り出したばかりだったり、進出したばかりのブランドで、レビューがまったくない状態で商品を売るとしたら、このようにライブコマースによる初期購入と初期レビューの促進を行っていくのが良い方法です。
その後は消費者の購入モチベーションが上がる時期に(大きなセールのシーズンなど)、購入意欲を後押しできるようなメディア展開などを行うことでブランドを浸透させ、恒常的に売上が作っていける設計に仕掛けていくことこそが望ましい訳です。
ライブコマースは単純に販売手法の1つだと見られていますが、なんとなく単発で行うのではなく、長期視点でマーケティング設計に織り込んでいくと、正しい成果を出していけると思われます。
※アクセス環境によってはリンク先が正常に表示されない場合もあります。
<筆者プロフィール>
小林 淳(Jun Kobayashi)
株式会社アイディール代表。 世界初のモバイルメールのメディア企業、某大手電機メーカー子会社、CRM系企業の役員を経て、2007年株式会社アイディールを設立。 現在は中国に向けた越境ECを中心に、日本のメーカー企業の中国におけるブランディングやセールスを行っている。
中国に向けた越境ECプラットフォーム運営の株式会社アイディール http://ideal-inc.com/
※記事作成アシスタント:株式会社アイディール オペレーションチーム 依田有里佳
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