中国マーケティングラボ

中国ECで上手くいかない日本企業はユーザーからの信頼を獲得できていないかもしれない。という大事な話【中国越境EC&インバウンドで成功するブランディング術】

 

急拡大を続けている中国ECモールは消費者からどのように信頼を得ているのか?日本企業が中国消費者の信頼を得るためのヒントをご紹介します!

 

 

中国ECで上手くいかない日本企業はユーザーからの信頼を獲得できていないかもしれない。という大事な話【中国越境EC&インバウンドで成功するブランディング術】

 

 

こんにちは、アイディールの小林です。

本コラムが公開される5月中旬には、当社が中国ECモールで運営する「日本メーカー企業の旗艦店」3店舗目にあたる「株式会社アデランス」様のオフィシャルショップがサービス開始されている頃かと思います。

株式会社アデランス 京東国際 旗艦店 http://aderans.jd.hk/

当社では日本メーカー企業のブランディングを独自に行った上で、BtoBの卸販売から上記のようなBtoCの直販売まで「当社が費用を負担」して運営をしておりますが、なぜこのような活動をしているかというと「信頼を得なければ中国で商品は売れない」という中国人消費者の購買心理を重要視しているからです。

 

前回のコラム( 中国でのブランディングで知っておきたい3つの実践アイデア【中国越境EC&インバウンドで成功するブランディング術】 ) でも「一消費者としても、非合法の海賊品や粗悪品と戦い続けてきた中国人消費者だからこそ、ブランディングにおいてもいかに「信頼」を築いていくことがいかに大事なのか忘れないで頂きたいポイントです」と書かせて頂きましたが、今回のコラムでは現在急拡大を続けている中国ECのモールなどのプラットフォームがどのように消費者から信頼を得ているのか、というお話をさせて頂きたいと思います。

 

 

 

◎主要プラットフォームの整理

 

まず、中国の主要なBtoCの2大プラットフォームというと、アリババ社が提供する天猫(Tmall)と京東社が提供する京東商城(JD)となります。この2サイトで中国ECの90%を占めるほど寡占化されているのが実情です。

また、この2サイトに紐づく形で越境EC商品を取り扱う「国際」サイトがあります。

 

 

※主要2社が提供するプラットフォーム


 主要2社が提供するプラットフォーム

 

 

 

※プラットフォームシェア

中国EC BtoCプラットフォームシェア

出典:吉林新闻网「易观:唯品会居 “2016年第4季度中国网络零售B2C市场交易份额”第三」によるデータをi-DEAL社で作図

 

この2 サイトは「企業が消費者に商品を直接販売する」プラットフォーム(日本で言う「楽天」や「AMAZONマーケットプレイス」など)ですので、メーカー企業そのもの、もしくはメーカーから正式に運営権を授受した企業がECショップを運営しています。
特に、運営権を授受した企業には出店審査の際に「メーカーから発行された(旗艦店を運営する権利を与えた)授権証」や「メーカーや商品の登録商標」の提出が求められるなど「確実に販売権を持った企業が、確実に本物の商品を売る」事が担保させられています。

 

これらの出店審査の仕組みは年々厳しくなってきており、そもそも天猫国際についてはこの2~3年の間で中小メーカーにとっては事実上出店が不可能と言えるレベルでハードルが上がっているのもまた実情です。

 

 

いずれにしても、このような活動の背景を見ていただくとお分かりいただけるように、まずは「出店審査そのもの」を通じて、消費者に「信頼」を提供していることが見えてきます。

さらに天猫の場合、店舗オープンから一定の期間内に一定の水準の月間売上を上げなければ撤退させられるなどのルールもあり、このプラットフォーム内のEC店舗は消費者からも信頼を受けていることをますます前提としてきている訳です。

ECモールなら一見すると当たり前の行動ではありますが、より深くこの考え方を理解するために、CtoCマーケットの淘宝(タオバオ)ではどのような仕組みを用意しているのか見てみましょう。

 

 

 

◎売る場所で与えなければいけない「信頼」について

 

 

淘宝(タオバオ)では、購入者側の評価による信用制度を設けており、その信用度によってそもそも出品数や広告出稿などが制限されるなど、厳しくショップをランク付けをしています。

 

 

※淘宝(タオバオ)の店舗ランクについて


ハートから始まり、ダイヤモンド>銀の王冠>金の王冠とランクが上がっていく。

 

タオバオの店舗ランクについて
 
出典:开淘网「淘宝卖家信誉等级表解读」

※日本でもYahoo!オークションで信頼性が低い出品者とは取引をしないようにするなどの対策がありますが、淘宝(タオバオ)ではそれをより分かりやすく「店舗ランク」という形にし、さらに機能を制限するなどの対策を行っています。

 

これにより、消費者は自然とランクの高い所で購入するという行動を取るため、新規出店した店舗はオープン後の早い段階から売上を伸ばしていくのが非常に困難な仕組みと言えるかもしれません。

しかし、ランクが上昇した店舗が「わざわざ偽物を売ってランクを下げられたり、運営を停止されたりする」リスクを冒す必要やメリットが何もない、という環境を用意することで、消費者に「信頼」を提供している訳です。

アリババ社やJD社はそもそも偽物に対して厳しい取り締まりも行っているため、上述の通り、益々この2大プラットフォーム上で偽物を売る意味がなくなってきています(現在はスマホのマイクロECなど表面に出づらい所で偽物が売られるという流れに変わってきています)

 

ただ、それでも中国の消費者はECで商品を購入する際に「偽物があるかもしれない」「偽物に騙されたくない」といった気持ちが強く、ショップに対して警戒心が強い実情もあります。


そこで我々は「安心して購入が出来るECショップ」の存在として、「信頼の高いプラットフォーム×メーカー様の名前で運営されている旗艦店」を推進している訳です。

ブランディングのステップとしては、独自サイトよりもまずは「モール内の旗艦店」であるという事を1つ頭に留めておいて頂ければと思います。

 

では売る場所が決まった所で、サイト内で信頼を獲得するためにはどんな所に気を付けなければいけないのかを見ていきましょう。

 

 

 

◎購入時に与えなければいけない「信頼」について

 

 

そもそも中国人消費者は商品の品質に対しても非常に警戒心があります。ですので「他人のレビュー」を日本人以上に重要視します。ここで丁寧なコミュニケーションを行う事が「いかに信頼を得ていくか」の大事な戦略であると言えます。

購入者からは必ずレビューを書いてもらえるように1人数十元(数百円)程度のプロモーションコストを予算化しておく事は最低限として、中国ではレビューを買うこともできます。


しかし「ねつ造された」感のあるレビューについては警戒心を持たれることもあります。

 

また他の店舗でも同一の商品が売られていた場合、その値決めについても消費者心理を考える必要があります。
市場の平均価格よりも明らかに高すぎる場合は単純に購買意欲を与える事は出来ません。これは当然の事ですが、実は、逆に価格が安すぎる場合も中国人消費者には警戒心を持たれる結果に繋がりますので、安易に価格勝負で値決めをするのは気を付けてください。

安いなりの理由がきちんと説明されていなければ、偽物だから安いのではないか?と思われてしまう事はもはや説明の必要がありません。

 

 

購入時に与えなければいけない「信頼」について

 

 

このような複雑な消費者心理を目の前にすると、ではまずは何から手を付けたら良いのか?という事になりがちですが、当社では以下の3つを大きなステップとして考えております。

中国ECで上手くいかない日本企業様はこちらを参考にしていただくと良いかと思います。

 

 

1.ECモール内で面を取る事

 

いざ商品の検索をした時に販売している店舗が自社の旗艦店だけだったとして、これが人気のある商品に見えるでしょうか。卸販売は戦略上避けていたメーカー企業様も「面を取る」ためにあえて行うことも検討いただくと良いと思います。あくまで消費者から信頼を得るためです。

 

 

2.検索エンジンを制する事

 

こちらも先日のコラムで書きましたが「中国語のメーカーサイトや商品サイトを用意する事」や「Q&Aサイトや口コミサイトへのレビュー、使用動画など消費者が客観的な判断が下せるようなコンテンツをあらゆる所にちりばめる事」で、情報の裏取りを行おうとした消費者を安心させていきます。これもあくまで消費者から信頼を得るためです。

 

 

3.ファン組織を作る事

 

レビューを集めると言っても、そもそも卵が先か鶏が先かといった話になってしまいます。
そこで販売サイトがオープンする前から商品サンプリングやグループミーティングを積極的に行い、あらゆる意見を集め、実際に商品パッケージやプロモーションなどへも反映させていく、アンバサダーのようなファン組織を作るのが非常に好ましいと考えられます。
この運営は非常に泥臭いのですが、これもあくまで消費者から信頼を得るためです。


このようにそもそもメーカーや店舗側が一方的に発信する情報を疑ってかかるという行動パターンが存在する事で、中国EC市場では口コミなどを参考にする事が増え、網紅(ワンホン)などを活用したインフルエンサーマーケティングが有効に働くようになってきている事が分かります。

しかし同時に、裏を返すと単純なインフルエンサーマーケティングでは逆効果になる場合もあるという事ですので、売り場を作るのと同時に、いかに消費者から信頼を得ていくかを戦略的に考えていくと一貫性のあるマーケティングが実現していけるようになります。

中国では日本以上に信頼が大事であるという事。
これを忘れないでいただければと考えております。

   


<筆者プロフィール>

小林 淳(Jun Kobayashi) 株式会社アイディール代表

小林 淳(Jun Kobayashi) 
株式会社アイディール代表。
世界初のモバイルメールのメディア企業、某大手電機メーカー子会社、CRM系企業の役員を経て、2007年株式会社アイディールを設立。
現在は中国に向けた越境ECを中心に、日本のメーカー企業の中国におけるブランディングやセールスを行っている。
 

中国に向けた越境ECプラットフォーム運営の株式会社アイディール http://ideal-inc.com/  

 


 

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