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<淘宝入門>買えないものはない!?~淘宝・天猫ってどんなサイト?

 

中国の電子取引最大手アリババが運営する「淘宝(タオバオ、Taobao)」は、「見つからない宝物はない、売れない宝物はない」という名前の通り、8億点以上の商品が販売される、世界でも最大級のCtoC(消費者間取引)インターネットショッピングサイト。BtoC(企業消費者間取引)の「天猫(テンマオ、Tmall)」と合わせて、中国ビジネスを語る上では外せない存在です。この「淘宝(タオバオ、Taobao)」と「天猫(テンマオ、Tmall)」、二つのショッピングサイトを詳しくご紹介します!

 

 

 

<淘宝入門>買えないものはない!?~淘宝・天猫ってどんなサイト?

 

中国最大にとどまりません。
世界的にも最大級のオンラインショッピングモール「淘宝(タオバオ)」。ひと昔前まで、日本人が知ってる中国のウェブサイトと言えば「百度(バイドゥ)」がダントツトップでしたが、今は「淘宝」の名前のほうが先に出てくるかもしれません。

単に「聞いたことがある」だけではなく、最近では代行サービスなどを利用して淘宝でショッピングを楽しむ日本人も登場しています。また毎年11月に盛り上がる「独身の日セール」は越境ECに取り組む日本企業の売上に直結する一大イベントに。

まだまだ急成長の途上にある中国EC市場に挑戦するなら、淘宝もしくは同じアリババが運営する「天猫(テンマオ)」利用の検討は必須でしょう。今回から数回にわたり、淘宝および天猫の現状や機能、日本のショッピングモールとの相違点など見ていくことにします。

 

 

圧倒的シェアを誇る「淘宝」

 

中国のEC市場は今、急激な勢いで拡大しています。中でも圧倒的に強いプレイヤーはアリババが運営する老舗ショッピングモールの「淘宝」、そして同じくアリババが運営する法人店舗から構成される「天猫」です。年間流通総額は両サイトあわせて56兆円にも上ります。

●アマゾンが小さく見える……。中国Taobaoの流通総額は35兆円。Amazonグローバルの2倍! | ネットショップ担当者フォーラム

よく「中国CtoC(個人間売買)最大手」と紹介され、また日経新聞も長らく記事内で「中国最大手ネットオークションサイト」と表現してきたため、ヤフオク的なサイトのイメージを植え付けられてしまっている人も多くいますが、実態はヤフオクをはじめとするオークションサイトとも、またメルカリ的な個人間売買のプラットフォームとも異なり、楽天市場同様の総合ショッピングモールです。

 

 

確かに売り手には個人が多いのですが、「個人間売買」というよりは「個人商店が主に出店するショッピングモール」ととらえたほうがより実態に近い認識でしょう。

販売もオークション形式ではなく、商品ごとに価格が設定されています(中国ではチャットを活用した売り手・買い手間の値段交渉も活発ではありますが)。各店舗ごとに購入したい商品をカートに入れ、商品総額に送料を加えた額を支払って買い物をするスタイルです。

淘宝の誕生は2003年。
BtoBのマーケットプレイスを運営し成功を収めていた「阿里巴巴(アリババ)」が、個人間の通販サイトとして立ち上げました。

もちろん競合も次々立ち上がりました。2004年にはPC・家電を中心に販売する「京東(ジンドン)」と、既存オンライン書店を買収した中国Amazonがスタートし、その後も家電量販店などが次々とECサイトを開始しますが、淘宝・天猫というアリババ運営の2サイトがいまだ圧倒的なシェアを誇っています。

●2016年第三季度電子商務各細分行業発展状況|艾瑞网(中国語)

中国の主要ショッピングモール・ショッピングサイトについてはこちらの記事をご覧ください。

●<中国向けビジネス入門編>中国の主要ショッピングモール&オンラインショップいろいろ- SMMLab

 

 

淘宝からスピンアウトした法人店舗専用ショッピングモール「天猫」

 

ところで「天猫って何?」という方もいるでしょう。

淘宝はCtoCのマーケットプレイスですが、その中に法人の店舗からなる「淘宝商城」が作られ、2012年に「天猫」という新たなブランド名がつけられ、淘宝とは切り離されました。日本はじめ海外では「Tmall」の名で呼ばれることもあります。

 

 

淘宝は圧倒的な売り手の数と商品点数が強みのひとつですが、誰でも出店できるため、悪質な売り手・低品質の商品を排除しきれず、トラブルが多発し偽物も多く流通してしまい、ユーザーの信頼を損ない競合他社から攻撃されるポイントとして大きな課題になっていました。その解決策としてここ数年注力育成されてきたのが天猫です。

淘宝と異なり法人限定で、かつ出店には厳しい審査もあります。淘宝ほどの圧倒的な品数はなく、商品価格も比較的お高めですが、その分、クオリティと信頼という点で優っています。

 

 

ドメインもサイト名も異なる淘宝と天猫ですが、実はこの2サイトはかなり緊密に連携され、ユーザーはシームレスに行き来しています。というのも、淘宝で検索をした際の商品検索結果には天猫で販売されているものも含まれ、クリックすると天猫に飛ばされてしまうからです(上記画面の商品サマリーのうち、赤地に黒猫のいるアイコンマークがついているものは天猫取り扱い商品)。

ちなみにユニクロや花王などが出店しているのは天猫(天猫国際)です。
他にも数多くのメーカーやドラッグストアなどがここ数年で出店を果たし越境ECに挑戦をしています。

一方、天猫は出店審査が厳しいだけでなく初期費用やランニングコストもかかるため大企業以外では少々難しく、法人であっても淘宝に出店している企業も多数あります。

 

 

年に一度のネットショッピング大セール「双11」

 

日本でも数年前からたびたびニュースで取り上げられるのが、毎年11月11日に繰り広げられる「独身の日ネットショッピング大セール」でしょう。1が4つ並ぶ11月11日は「光棍節」で独身の日とされ、彼女・彼氏がいない寂しい独身者が自身にプレゼントを買うという趣旨のイベントです。

その日一日限りのセールでは、過激なほどのディスカウントで集客する「双11セール」が中国ネット業界全体で展開され、日付が変わった瞬間から数量限定のタイムセールなどに大量のネットユーザが群がる一種のお祭りとなっています。

 

 

双11セールはネット上のみならず、当然その後のリアルな物流にも大きな影響を与えます。
都市部では当日配達もあるため、11月11日以降は街中が大賑わい。連結したリヤカーに大量の段ボールを積み上げた自転車やバイクが街中を疾走し、荷物の受け渡し場所にも通販サイト名入りの箱が山と積み上げらます。

●双11セールに備え 宅配人員50%増へ - SankeiBiz(サンケイビズ)

これを最初に仕掛けたのが淘宝とされています。毎年、淘宝と天猫の売上総額の速報がリアルタイムに表示され、2016年は1,207億元となりました。前年の2015年が912元なので、3割も伸びた計算になります。日本円にするとなんと1兆8,882億円。

●アリババ、「独身の日」の売上高が過去最高を記録--前年比32%増の177億9000万ドル - CNET Japan

この金額には、日本企業も多く出店する越境ECモール「天猫国際」の売上も含まれ、国別では日本からの販売が一番多かったとのこと。日本にとっても「双11セール」は決して対岸のニュースではなくなっているのです。

 

 

課題は偽物撲滅~購入者評価・レビューが重要な決め手に

 

なんでも購入でき、しかも街中よりも安く、送料も僅か。そんな巨大ショッピングモール淘宝の最大の課題は、個人でも簡単に販売者(売家)となれるため「偽物だった」「サイト上の説明・写真と大きく異なる低クオリティの商品が届いた」というトラブルが多々発生することです。

実際そうしたトラブル回避のため、高額商品やブランド商品を買う場合には淘宝を避け、より信頼できる天猫や京東商城、Amazonを利用するという人は少なくありません。

淘宝でも「偽物撲滅」に力を入れており、悪質な店舗を排除し購入者を守るための施策を次々打ち出しています。

●淘宝グローバル(淘宝全球購)が偽物商品の取り締まり対策を強化。越境ECのさらなるクリーン化を目指す | 中国ビジネス情報マガジン | Business China

消費者も「良い商品(&本物の商品)を安く買う」ために、非常に厳しい目でネットショッピングに臨んでいます。その拠り所となるのは何といっても他ユーザーの声。

 

 

・金牌
・10年老店
・信誉 クラウン×5
・消費者保障:12,493元
・描述4.8 服務4.8 物流4.7

 

「描述」とは、届いた実際の商品とサイト上の説明等の間に食い違いがないかどうかです。

 

 

クリックするとさらに詳しい情報を確認することができます。
数字だけでは判断がつかない人も多いためでしょう。同業種平均と比べてどうかというところまで明示されている徹底ぶりに驚かされます。

ちなみにこの「クラウン×5」は、生半可にはとれない格付けです。
必要な評点は10,000,001点以上。
「好評」で1点が追加され、「差評(よくない評価)」を受けると1点マイナスされます。それが一千万を超えるには相当な年月と販売実績数が必要となります。もちろん高い商品クオリティや対応を維持し1点ずつ確実に積み上げていかなければなりません。

商品に関するレビューも多数集まっています。
中国人はその国民性もあり、買った商品に対してのクチコミを積極的に入れます。商品購入フロー自体にも到着確認という過程があり、その際に同時に店舗を評価し、商品のレビューを書き込むという自然な流れになっています。

レビューには実際に使っている写真などが挿入されているものもあり参考になります。中にはもちろんサクラ・やらせが混じっているケースもあるでしょうが、仮にそれがあったとしてもそれを信じてがっかりさせられた人が赤裸々なレビューをまた投稿しますので、バランスはとれていきます。

ショップもレビューには非常にナーバスになっており、低い評価をつけたユーザーがいると、個別にアプローチして補填・商品交換をするからレビューを修正してくれと頼んでくることもあるのだとか。

「実物を見ずに買うネット通販は不安」という日本人はまだ多いと思いますが、市中の店舗でも偽物が蔓延する中国では、「多数の網民(ネットユーザー)の購入後評価を確認して買い物ができるネットショップのほうが安全」という意見も納得できます。

淘宝に新規参入する企業にとって、この格付けと評価を初期にどう集めるかが勝負所になってきます。

 

 

日本企業・日本人も出店・販売ができる

 

淘宝は個人でも気軽に出店できると書きましたが、それは日本企業・日本人であっても同じです。オンライン書店で「淘宝」と検索すれば、淘宝出店の手引き本が何冊もでてくるはずです。

中国国内の携帯電話番号・銀行口座などが必要なので決して手軽とはいえませんが、中国国内で法人登記をしたり営業許可をとったりという必要はありませんので、ちょっと手間さえかければ、さほどの費用負担もなく開業が可能です。

「中国語ができない」

という問題は、翻訳支援サイトを使えばクリアできます。
また現在日本語を勉強するため日本に滞在している若い中国人はたくさんいますので、彼らを雇用してみるのもいいでしょう。日本語能力がさほど高くなくても、淘宝などネット通販に馴染み、SNSにも精通している若い世代なら十分戦力になるでしょう。

 

+++

 

次回以降は、淘宝のサイト内の機能やコンテンツについて、より詳しく見ていきたいと思います。

 

 


profile_wada

和田 亜希子(Akiko Wada)

都市銀行、検索エンジン等を経て2001年独立。企業からの受託でクチコミを活用したマーケティング、アフィリエイト・プログラム導入運用支援などを行うかたわら、「東京ビアガーデン情報館」「台湾温泉ガイド」などの専門サイトを企画運営。主な著書「アフィリエイト・マーケティング実践マニュアル(翔泳社)」「ひとつの ブログで会社が変わる(技術評論社)」「ミニサイトをつくって儲ける法(日本実業出版社)」。


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