<淘宝入門>淘宝ショッピングを支える決済サービス「支付宝(Alipay)」って一体何?
淘宝入門編の最終回は、淘宝躍進の立役者「支付宝」をご紹介します!
支付宝はキャッシュレス大国中国の2大スマホ決済サービスの1つ。簡単チャージで様々な支払いに利用でき、急速に中国の日常生活に浸透しています。
先月、中国・広西チワン族自治区のとある食品市場に侵入した泥棒の話がネットで拡散されていました。
一体どんな泥棒だったのかというと・・・
広西・柳州市の食品市場に深夜ドロボーが侵入。盗まれたものは「QRコード」 八百屋や肉屋などの店頭にあるQRコードを貼り替えたのです。店主たちはそれに気がつかず、客が決済する度にドロボーの元へお金が送金されることに…このキャッシュレス時代のドロボーは現在警察が捜査中。
さすがキャッシュレス大国・中国!
北京・上海だけでなく、地方都市の市場で野菜・果物を売っているお店でも既に、スマホアプリを使ったキャッシュレス決済が導入されているんですね。その代金受け取りのためのQRコードを貼りかえて自分にお金が振り込まれるようにするというこの犯罪、もちろんすぐばれるのですが、「そんな手があったか」と思わず呻いてしまいました。
●中国の食品市場に「QRコードを張り替える」新時代の泥棒が出現 | 財経新聞
上記ツイートの写真に写っているQRコードのうち、青い台紙のものには「支付宝」と書かれており、緑の台紙のものには「微信支付」と書かれています。支付宝は淘宝を運営するアリババグループが、そして微信支付はQQ・微信で勢い止まらぬ騰訊(テンセント)が運営しており、この2つが今、中国の2大決済サービスとして激しい火花を散らしています(この2つにデビットカードの「銀聯(UnionPay)」を加えて3大決済サービスと言う場合も)。
今回は「支付宝」についてみていきたいと思います。
売り手・買い手双方を保護する「支付宝」
インターネットで商品を購入する時、主にどのような決済方法を利用していますか。
総務省の情報通信白書(平成28年版)によると「クレジットカード払い(69.2%)」が最多。続いて「代金引換(39.0%)」「コンビニでの支払い(36.1%)」「銀行・郵便局での振込・振替(26.5%)」と続きます(2015年末時点/複数回答)。
一方中国でのクレジットカード市場は2002年以降と歴史も浅く、インターネットショッピング利用者が急増した初期の頃は、まだクレジットカードがさほど普及していませんでした。そんな中で淘宝ショッピングの決済手段としてアリババが2004年末にサービス提供を開始したのが「支付宝(ジフバオ)/Alipay」です。
日本では訪日中国人観光客の「爆買い」に絡み、量販店やドラッグストア、今年に入ってからはコンビニのローソンでも国内全店で支付宝決済が導入され、「アリペイ」の名が知られるようになってきました。
●ローソン、アリペイ導入の先にあるもの:日経ビジネスオンライン
そんな経緯から日本では「スマホ決済サービス」としての認知のほうが高いのですが、もともとはオンラインショッピングの決済サービス。欧米で一般的な「PayPal(ペイパル)」と基本的には同じ仕組みで、売り手・買い手双方のリスクをなくすものとなっています。
「普通の支払いとどう違うの?」
日本ではPayPalもさほどは普及しておらず、「少額決済にも便利」「海外の人宛のコストかからない送金」として一部の人が使っている程度なため、あまりピンとこないかもしれません。簡単に仕組みを説明しましょう。
●前払い・クレカ支払いだと購入者に、後払いだと販売者にリスク
まず銀行振込など前払い・クレジットカード支払いの場合、「商品が届かない」「偽物・写真と大きく異なる商品が届いた」となった際、購入者がそのリスクを被ります。店が誠実に対応してくれればいいですが、初めて利用するオンラインショップの場合、最悪「実在しない詐欺サイトだった」ということもありうるでしょう。クレジットカード支払であれば、商品不着などの場合クレジットカード会社に連絡し対応してもらうことができますが、まずは「当事者同士で解決してください」と言われ、調査にも時間がかかります。
ましてや淘宝は出店者の多くが個人事業主。
今でこそ減っていますが初期は偽物・粗悪商品が多く出回っていました。とてもとても売り手を信用しての前払いなどできない状況です。
それでは商品が到着した後の後払いだとどうでしょう。
日本では今でもこの支払い方式は多く、商品お届け時に銀行振込あるいはコンビニ支払いの用紙を同梱し、期日までに支払ってもらう後払いを採用するショップは珍しくありません。買い手が支払能力を有し、かつちゃんと期日を守って支払ってくれる性善説に基づいていますが、もちろん売り手にとって未回収リスクを伴うものです。買い手に悪意がなくても、支払い遅延すれば未入金管理や督促メール配信など手間もかかります。
そこで支付宝です。
●注文時から商品到着確認までの間、第三者が商品代金を一時キープ
支付宝は、事前にチャージして利用する電子マネーです。
淘宝で買い物をした際には、チャージされている金額の中からの支払いとなります。ただし注文時に即、買い手から売り手へとお金が渡るわけではありません。支付宝の預かりとなります。そして商品が無事届き内容も確認し、購入者が支付宝の管理画面で商品到着を報告して初めて、売り手への代金支払いが実行されるのです。
トラブル返品などの場合も、解決するまで第三者である支付宝がその代金をキープしていますので、「返金がなかなかされない」といった買い手にとってのリスクは大幅に減ります。
もちろん売り手にとっても、未回収リスクが大幅に軽減される大きな仕組みです。
また新規参入したばかりでショップとしての実績が少ない場合でも、この決済システムがあれば購入者側の不安も軽減されます。クレジットカード(デビットカード)が普及しておらず、玉石混交で偽物も多かった淘宝が大きく躍進した背景には、この支付宝という決済サービスがあったのです。
支付宝の利用手数料は基本無料です。2016年10月以降、2万元超の取引の場合、0.1%のサービス手数料が徴収されることになりました(2017年7月末時点の為替レートだと、2万元は約33万円)
チャージはオンライン銀行との連携で簡単
支付宝への充値(チャージ)も簡単です。
中国の銀行でインターネットバンキング利用の手続きを済ませておけば、あとは支付宝の管理画面から銀行アカウントとの連携を行い、好きな金額をいつでも銀行口座から支付宝へと移す(チャージ)することができます。
他にコンビニでプリペイドカードを購入してのチャージも可能です。
オンラインショップはじめ、支付宝を使って商品代金やサービス提供料を受け取る側の場合は、逆に支付宝から銀行口座への振替が必要になります。こちらも同様に、支付宝の管理画面から簡単に手続きが可能です。
ただ注意しないといけないのは、やはり2016年10月以降、2万元を超える場合に0.1%の手数料がかかるようになったことです。淘宝での売上金を日本で受け取る最も低コストの方法については、代行業者や中国進出コンサルタントのサイトに詳細解説記事もありますので、探してみてください。
携帯料金・水道光熱費の支払いから個人間の送金、リアル店舗での買い物まで
淘宝での買い物の際の決済サービスとしての支付宝を紹介してきましたが、それ以外にも様々な支払いに利用されています。
- 携帯電話利用料
- 水道・電気料金
- 賃貸料
- 納税
- 学費
- 出前サービス
- 列車チケット購入
- その他インターネット各種有料サービス
個人間での貸し借りや売買の際のお金の受け渡しにも利用できます。
中国では割り勘を「AA制」と言いますが(「All Average」などいくつかの語源説がある)、それにも使うことができます。
そして今、「支付宝」はインターネットショッピングの決済手段としてだけでなく、日常生活における様々な買い物・サービス利用で使われるようになっています。そう、「スマホ決済」としての活用がメインになりつつあるのです。
「支付宝」(アリペイ)の状況をみると、現在、全国のレストランと商店・スーパー・コンビニの200万店以上で利用が可能なほか、駐車スペース80万カ所とガソリンスタンド2万カ所以上でも二次元コード・バーコード読み取りによる利用が可能だ。このほか支付宝で全国のスポーツ施設など2万カ所の予約ができ、30省・自治区・直轄市の120都市の観光地で入場券を買うことができ、5万軒を超えるホテルで支払いをすることができる。
●中国、キャッシュレス社会へ=現金なしで外出「大丈夫」7割―中国紙 – Record China
支付宝、そして微信支付が2大スマホ決済サービスとなっており、コンビニやカフェ、そして冒頭で紹介した青果市場などでも、QRコードをスマホで読み取り支払実行すれば、それで終わり。「財布を忘れてもスマホさえあれば問題なし」と言われる超キャッシュレス社会がすでに始まっているのです。
●中国「超キャッシュレス社会」の衝撃、日本はもはや追う側だ | ダイヤモンド・オンライン
これは支付宝のスマホアプリのトップページです。
上部のブルー背景のところにアイコンが4つ並んでいますが「付銭」は「支払い」の意味、「収銭」は逆にお金の受取りです。
QRコード・バーコードのスキャンによって、支付宝上の電子マネーのやりとりが瞬時に行われます。
外国人である日本人も、パソコンあるいはスマホから支付宝のアカウントを作成することができます。
チャージには中国の銀行口座との連携などが必要となりますが、とりあえず作っておくことはできます。もし周囲に支付宝を使っている人がいれば送金をしてもらい、その残高を利用して買い物などしてみることも可能でしょう。
●[N]【上海レポート】でスマホ決済の現状を見てきたら他にも最先端がたくさんあった(モバイク・無人コンビニ)
支付宝・微信支付というスマホ決済サービスが一気に日常生活の中に浸透した中国。出張・旅行で渡航することがあればぜひ、上記記事など参考にして実際に体験してみてください。
和田 亜希子(Akiko Wada)
都市銀行、検索エンジン等を経て2001年独立。企業からの受託でクチコミを活用したマーケティング、アフィリエイト・プログラム導入運用支援などを行うかたわら、「東京ビアガーデン情報館」「台湾温泉ガイド」などの専門サイトを企画運営。主な著書「アフィリエイト・マーケティング実践マニュアル(翔泳社)」「ひとつの ブログで会社が変わる(技術評論社)」「ミニサイトをつくって儲ける法(日本実業出版社)」。
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