いま中国で影響力No.1の新メディア「ネット動画」の第一人者が語る中国市場の攻略法~テレビ東京ビジネスオンデマンド主催中国セミナーレポート~
中国最先端のマーケティング手法である「ネット動画」をテーマに、
実際に中国で活躍する3人のゲストを招いた、
テレビ東京ビジネスオンデマンド主催中国セミナーの内容をご紹介します!
ネット動画を制するものは中国市場を制する
~日本人が知らない中国ネット動画の全貌~
竹内 亮(たけうち りょう)氏
ドキュメンタリー番組の監督として、長年、日本のテレビ番組の企画・演出を手掛ける。テレビ東京「ガイアの夜明け」「未来世紀ジパング」、NHK 「世界遺産」「長江」等を制作。2007年「あれから10年〜山一社員たちは今〜」ギャラクシー作品賞受賞。2013年中国人の妻と共に南京市で映像制作会社「和之夢文化伝播有限公司」を設立。2015年中国で日本文化を紹介する番組「我住在这里的理由」の制作を開始、1年後に再生回数が一億回を越す。2017年 中国最大手SNSを運営するテンセントグループに、「最も影響力のある旅行メディアTOP100」に選ばれる。
最初の登壇者である竹内 亮氏からは、中国におけるネット動画の現状や、日本企業が中国でマーケティングをする時の注意点などが語られました。長年テレビの制作に携わってきた竹内さんでしたが、2015年に中国で大人気のネット動画制作者である山下 智博氏との出会いにより、中国ネット向けの動画番組制作を開始したそうです。
「それ以前から、中国で日本を紹介する番組を制作したいと思っていたのですが、テレビ局では一切相手にされませんでした。そんな中で、山下氏と出会い、『ネット動画』という方法があることに気付いたんです。
ネット動画はテレビ番組に比べると自由度も高く、すでに中国の若者たちは、テレビより動画配信を見ていそうだ。そこで、日本を紹介する番組なら、ネット動画のほうが影響力も大きいのでは?と思いました」(竹内氏)
しかも「中国は驚異的なスピードでIT社会へと変革しており、現在、経済活動の大半は、スマートフォンで行われています。買い物をするために外出しても、財布は持ち歩かずに電子マネーを使う人がほとんど。また、スマートフォンでネット通販を利用したり、新聞や雑誌、テレビなども利用せずにスマートフォンから情報を得ることが主流です。そんな中国では、もはやネットマーケティングは必要不可欠なものとなっています」と言います。
また、中国では、LINEやTwitter、Facebook、YouTubeなどは利用できませんが、それらに取って代わるWebサービスを運営しているのが、百度、アリババ、テンセントという通称「BAT」と呼ばれている3大インターネット企業。この3社が近年、動画に巨額の投資を行っているそうです。
「こうした大手インターネット企業の参戦もあり、中国のネット広告市場規模は、爆発的な飛躍を見せています。2010年に7000億円だったものが、2018年には3兆6000億円になるとの予想も。これは、中国ではネット動画がテレビCMよりも安価で影響力があること、あとは単純に『面白い』ことが要因ですね。中国のテレビはすべて国営で、さまざまな制約がある上、政府の宣伝を重視する傾向があります。一方、ネット動画は自由度が高く、何より視聴者を意識した番組制作ができる。その結果、大手の動画サイトは、テレビ局を超す影響力を持つようになりました」(竹内氏)
現在、竹内氏が中国で手がけているドキュメンタリーの旅番組「私がここに住む理由」は、日本に住む中国人、または中国に住む日本人を訪ねるというもの。台本無しのリアリティが視聴者の人気を呼び、14の動画サイトから専属枠を提供されるコンテンツに成長しました。こうした大ヒット番組を生み出したことから、「中国と日本のさまざまな違いに気付けた」と言います。
中国大手動画サイト「愛奇芸(アイチーイー)」に掲載されている
竹内氏制作の人気動画シリーズ「我住在这里的理由」
「中国人と日本人の笑いのツボは違いますが、感動のツボは同じ。さらに、ネット動画における技術力は、すでに中国のほうが上ですが、企画力ならまだまだ日本に分があります。あとは、『日本』という舞台を中国人の目線で撮ることが大切ですね」(竹内氏)
さらに、竹内氏は「日本企業が中国で動画マーケティングをする時には、自社に合う動画制作者を探すことが大切。フォロワーやシェア、コメント、動画クリック数だけでなく、どんな内容のコメントがついているのか、フォロワーはどんな人間なのかなど、しっかり確認することが重要」と、日本企業が中国で動画マーケティングをする時の注意点を語り、登壇を締めくくりました。
再生回数8億回!中国ネット界のカリスマが明かす、中国の若者の心をとらえる秘訣
山下 智博(やました ともひろ)氏
2012年9月より上海在住。2013年6月からは、空気人形「薇薇」との同棲を開始、一緒にコスプレをしてコミケに行き、中国国内にて度々話題となる。2014年7月に放送開始した連続ドラマ「日本屌丝」で人気が爆発。2014年12 月より日本の紳士な情報を伝えるバラエティ番組「绅士大概一分钟」を毎日更新し、中国の80后90后を中心に多くの若者から支持を集めている。2017年6月現在の微博フォロワー数は約100万人。動画チャンネル被登録数は200万人。動画の総再生回数は約8億回。2015年、中国最大の動画プラットフォーム优酷土豆が主催する第8回Tudou Festivalにて最優秀バラエティチャンネル賞を受賞。未婚。
2人目の登壇者は、中国SNSでフォロワー数100万人、中国動画チャンネルの登録者数200万人を持つ、大ブレーク中の在中日本人クリエイター、山下智博氏。山下氏からは、日本人から見た中国のネット界について語られました。
日本で仕事をするかたわら、現代美術のパフォーマーとしても活躍していた山下氏は、2012年に中国へ移住することを決意します。その背景には、アーティストとしてのジレンマがあったそう。
「日本でのアーティスト活動は、アーティスト同士の仲も良くて、伸び伸びと活動ができる環境にありました。僕は、そんな居心地の良さに物足りなさを感じていたんです。さらなる表現力を身に着けるには、自分にもっと負荷がかかるような環境が必要ではないかと思いました。そこで、日本人に友好的とは言えない中国へ移住することにしたんです」(山下氏)
そんな山下氏が、中国へ移って痛烈に感じたのは、「中国は、失敗が許されない圧倒的な学歴社会だった」こと。
「中国の大学受験は、浪人が許されないため、たった1回しかチャンスがない真剣勝負です。受験に合格する人もいれば、失敗する人もいる。それでは、失敗した人はその後どう生きるのか。日本では、勉強が苦手でも芸術やスポーツの道がありますが、中国ではそういった道もないため、将来を悲観する若者が多く、社会問題だと感じました。そこで、『たとえ勉強ができなくても、人生は楽しいものだ』ということを中国の若者に伝えたくなったんです。アートの効能は、社会問題を浮き彫りにすること。そして、その表現を見た人の価値観を変えることができます。僕は、中国人の持つ価値観を逆転させて、新しい価値観を伝えたいと思いました」(山下氏)
当時は、中国のインターネットがどんどん面白くなってきた時期。山下氏も動画配信をしようと考えたものの、中国語がしゃべれないどころか聞き取りもできませんでした。
「中国語を勉強し始めたのは、中国へ渡ってからでした。中国語を話せないなら、言葉を使わなければいいと思って、コスプレをすることにしたんです。奇抜なコスプレをしたり、ネットドラマが流行していたので、空気人形を使ったドラマを制作したり。もちろん、ドラマなんて作ったことはありませんから、音楽や編集など自分で勉強しながら作りました。これらの活動はすべて、学歴社会から外れてしまった人たちを笑顔にすることに焦点を当てて制作していたんです」(山下氏)
こうした山下氏の動画は、中国の若者から人気を得て、現在では「中国で一番有名な外国人ネットタレント」として不動の地位を築いています。しかし、人気が出始めた時には、ネガティブな声が大きくなることを覚悟をしており、また、その負担を自身へかけることでさらなるアート表現を身に着けようとしていたそうです。
「中国で認知され始めたら、『日本人が何をやっている。早く出て行け』という声が上がると思っていたのですが、中国人の反応は思いの外、友好的なものでした。自分に負荷をかけるために中国を訪れたのに、正直、肩透かしを喰らいました。ネット配信を見た人からは、批判よりも『日本文化をもっと知りたい』という声が大きかったんです。僕の思惑とはまったく違う反応に戸惑いましたが、反面、ここまで必要とされたこともなかったので、それなら、リクエストに応えられる番組を作ろうと決意しました」(山下氏)
山下氏の動画には視聴者から「弾幕」と呼ばれるコメントが多数書き込まれる
2015年に、日本文化を紹介する番組を制作し配信。ここで山下氏の人気は爆発的なものとなりました。現在、彼は中国の代表的なSNSコンテンツ「bilibili」「Weibo」「WeChat」の3つのプラットフォームで活動をしています。そんな山下氏からは、中国のネットライフ事情についても語られました。
「中国でのネット普及率はおよそ51%と、数字で見ると少なく感じますが、人口に置き換えれば7億人というユーザーがいます。さらにネット利用者の9割は、モバイルを使用した10代~30代の若年層。僕が利用している動画配信サイト『bilibili』は、知名度はそれほど高くないものの、ヘビーユーザーが圧倒的に多く、日本に特化していることが特徴。中でも、若者に受けるキーワードは、日本のアニメや漫画の二次元文化です」(山下氏)
山下氏は、こうした分析をもとに、「今後は活動をさらに発展させていく」とのこと。
「中国での活動も続けつつ、新しい活動として日本文化交流のプラットフォームを作ることに注力していきたいと思っています。これまでは、日本の文化をそのまま中国で紹介していましたが、これからは、お互いの文化交流ができるようなことがしたいんです。中国も日本も、メディアから得られる情報ばかりが先行していますが、現地で感じることはまったく違いますから」(山下氏)
そのためにも、「まずは、日本でチームを組んで中国の情報番組を作りたい」と山下氏。
「先ほど竹内氏もお話ししていましたが、日本の強味は企画力と、キャラクター力。この2つを活かすことで、きっと面白いものが作れるでしょう。番組を作ることで、人が集まり交流が生まれて、情報を届けられます。そして、そこに雇用が生まれて、文化の相互理解が深まると思うんです。相互理解に必要なのは、お互いの視点をよく理解していること。その点は、中国で中国人の視点を理解した日本人の僕なら上手にカバーできる」(山下氏)
「クールジャパンではなく、フールジャパン。両国の若者を笑わせて、相互理解を深めていきたい」と語る山下氏の今後の活動に、日本でも注目が集まりそうです。
中国人に直接届くネットマーケティング実例
鳥本 健太(とりもと けんた)氏
2005年より上海在住。2006年アートマネージメント会社 office339を設立。アートを軸に様々な領域を横断し文化的な価値を創造する企画をアジア各地で実施。中国ネット民が熱狂する「山下智博現象」のプロデュースにより、中国ベンチャーキャピタルより投資を受け、規模、スピードともに新しい展開に挑戦している。
最後の登壇者は、上海を拠点としたアートマネジメント会社「office339」を設立、運営を行っている鳥本健太氏。アートを軸とした文化的な価値を創造する企画をアジア各地で展開しており、中国で爆発的な人気を誇る山下智博氏のプロデュースも手がけています。そんな鳥本氏からは、実際の経験にもとづいた中国人の心をつかむネットマーケティングについて語られました。
現在は約15社で番組配信を行っている鳥本氏ですが、2014年には山下氏の動画配信を毎日行っていたそうです。「動画編集など未経験な部分も多かったため、更新には相当な体力と時間を消費しており、かなり大変でした」とのこと。また、一番つらかったのは収益がなかったことだと言います。
「更新を減らそうと思い、ファンへのアンケートを取ったのですが、そこでかなりの反対にあってしまって……。それならやるしかないと、毎日更新を続けていました。しかし、再生回数が5000万回を超えたあたりから、企業からタイアップのオファーが舞い込むようになったんです」(鳥本氏)
山下氏と企業のさまざまなタイアップ動画を制作するうちに、「中国人と日本人のさまざまな視点の違いに気付くことができた」と言います。
「さまざまな動画を作って気付いたのは、中国人の日本へ対する1番の興味がグルメだということ。あとは、アニメなどの二次元にも人気が高いように思います。また、動画を制作する時に非常に大切なのは、サムネイル写真とタイトルの文字。他にも、日本人には予想できないトラブルなどもありまして、これは経験してみないと分からないことでした」(鳥本氏)
また、プラットフォームに依存することが多い動画配信事業においては、突然のプラットフォーム規約変更も視野に入れ、多角的な展開が必要だと感じているそうです。
「現在は、動画配信のほかにも、四コマ漫画を制作するなどの多様化に力を入れています。また、オークション・ショッピングサイトである『淘宝(タオバオ)』では、実況中継による販売がとても流行しています。アカウント取得が難しいという点はありますが、こちらも注目していきたいですね」(鳥本氏)
さらに、「インフルエンサーが集まるECサイトを立ち上げました。そこではインフルエンサーたちのオリジナルグッズを制作、販売をしています。各インフルエンサーに固定のファンがついているため、需要が一定数見込めることがポイントですね。今後は、インフルエンサーのグッズ販売と並行して、日本の商品も紹介していきたいと考えています」(鳥本氏)
鳥本氏が山下氏らと開設した淘宝ショップ「網紅集結店」
また、インターネット上の有名人である網紅(ワンホン)の登用にも変化が見られるそうです。
「CGを使用したバーチャル網紅の台頭が始まりつつあります。もともとは日本で配信されていましたが、中国でも少しずつ人気が出てきました。バーチャル網紅のメリットは、生身の人間ではできないことでも実現可能である自由度の高さにあります。現在、弊社でも山下氏の3Dバーチャル網紅を製作しています」(鳥本氏)
今まで自由度が高かったネット動画は、若者を中心とした中国国民に大きな影響を及ぼすメディアとして確立しつつあり、その勢いを懸念した中国政府は規制を開始していると言われます。しかし、規制により多様化の傾向も見られるため、ECサイトがさらに充実することも予想されます。これからは、さらにオリジナル性の高い企画が必要になってくるかもしれません。
本セミナーでは、それぞれのゲストの視点から、中国におけるネット動画マーケティングについて語られましたが、共通して言えることは、現在すでに中国の動画市場は大変に盛り上がっていること。さらに、広告規制が開始されていることをマイナスばかりではなく、日本企業にとっては日本人が得意とする企画力で勝負出来る市場となりつつあるとも言える状況だということ。今後さらなる発展が予想される中国ネット動画マーケティングには、日本でもよりいっそう注目が集まるのではないでしょうか。
※本セミナー主催の「テレビ東京ビジネスオンデマンド」は、
登壇者の山下智博さんが出演された「未来世紀ジパング」を始めとした、
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詳しくはこちら→http://txbiz.tv-tokyo.co.jp/
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