中国70兆円市場の鍵を握るインフルエンサー「網紅(ワンホン)」活用術《「Schoo(スクー)」オンライン授業Web再現》
アライドアーキテクツ「中国マーケティングラボ(CNMLab)」編集長の藤田和重と、中国向けインフルエンサーマーケティング支援会社「Vstar Japan」の執行役員 チョウ・ビビアンが講師を務めた、中国インフルエンサーマーケティングについての「Schoo(スクー)」オンライン授業。第2回の講座をWeb再現でご紹介します!
中国におけるインフルエンサーマーケティングの最新動向を紹介する「70兆円市場の鍵を握る『チャイニーズインフルエンサー』」の第2回は、中国人インフルエンサー「網紅(ワンホン)」の活用術がテーマです。「網紅(ワンホン)」に関する基礎知識やプロモーションの事例、マーケティング施策のポイントなどを解説します。
司会:それでは今日もよろしくお願いします
藤田、趙:よろしくお願いします。
藤田:本日は「網紅(ワンホン)の活用術」をテーマにお話しします。「網紅(ワンホン)」とはどういった存在なのか。また、「網紅(ワンホン)」を取りまくSNSのトレンドや、「網紅(ワンホン)」を活用したウェブプロモーションの事例も紹介しましょう。最後に「網紅(ワンホン)」を活用してプロモーションを行う企業が押さえておくべき注意点をについてご説明します。
中国人インフルエンサー「網紅(ワンホン)」とは?
藤田:まずは「網紅(ワンホン)」とはどんな存在なのかについて説明します。「網紅(ワンホン)」は簡単に言うと「インターネットで人気のある人」。語源を知るとわかりやすいですが、「網」は「網絡(もうろ)」、つまりインターネットという意味です。「紅」は人気者を意味する「紅人(ほんれん)」という単語が由来です。
「中国のインフルエンサー」イコール「網紅(ワンホン)」というわけではありません。世間に対して強い影響力を持つ人のことを「KOL(キーオピニオンリーダー)」と呼び、その中でも特にインターネットやSNSで人気が高い人のことを「網紅(ワンホン)」と呼んでいます。キーオピニオンリーダーは芸能人や文化人なども含めてさまざまですが、そういった人たちの中で特にインターネットを活用している人が「網紅(ワンホン)」だと考えていただくとわかりやすいと思います。
中国のインフルエンサーには大きく5つのタイプがあります。①芸能人②専門家③ネット有名人④WeMedia(自媒体)⑤リアル体験者の5種類です。どんな人たちなのか順番に説明します。
趙:まずは芸能人や俳優、歌手、モデル、芸人、TV司会者などですが、例えば、元シンガーのXue Zhi qianの「微博」のフォロワー数は3000万人以上、日本の中国茶飲料のテレビCMにも出ていたことがある芸能人のFan Bingbingはフォロワー数が5700万人以上います。
藤田:次に「専門家」というのは、文化人や評論家、ドクター、作家など、特定の分野で高い専門性を持つ人たちです。美容のことが好きで化粧品に詳しい美容研究家や、旅行が大好きで人気の旅ブログを書いているような人もここのジャンルに分類されます
趙:「網紅(ワンホン)」になる専門家は、自分が持つ知識や情報をシェアしたいという意欲が強いです。誰かの役に立ちたいとか、なにかミッションを持っている専門家が「網紅(ワンホン)」になっていくわけです。
藤田:次に「ネット有名人」ですが、これはブログやTwitterのような短文SNS、静止画で影響力を発揮する人たちです。
趙:初期の「網紅(ワンホン)」です。例えば、代表的な一人のパピ・ジャン(Papi醤)は、いろんな商品やサービスに対して毒舌で論評する動画が中国でものすごく人気になりました。元モデルのジャン・ダーイー(张大奕)が動画でファッションアイテムやコーディネートを紹介すると、通販サイトや実店舗でその商品が飛ぶように売れます。
司会:「網紅(ワンホン)」はどういうコンテンツを公開しているんですか?
趙:以前は画像とテキストが中心でしたが、最近は動画やライブ配信が増えています。
藤田:前回の講義で説明したように、中国はこの5年ぐらいの間にインターネットがすごく急速に発達しました。高速回線が普及し、Wi-Fiもすごく発達しているので、みなさんカフェなどでモバイル動画を視聴します。だからインターネットのコンテンツがどんどんリッチ化しているんです。
趙:そして4つ目の「WeMedia(自媒体)」は、SNSアカウントが「個人メディア」になった人たちです。中にはアカウントをチームで運営している場合もあります。ライターやカメラマン、ディレクター、記者などがチームを組むんです。2~3人でやっているチームから10人以上まで規模はさまざまです。
そして、強い影響力を持つアカウントは、ビジネスでも存在感を放っています。メディアとして認知と信頼を獲得した「WeMedia(自媒体)」のアカウントが、芸能人にインタビューしたり、記者会見に参加したりすることもあります。また、商品を販売するためのアカウントも増えています。
メディアを運営するにはお金がかかりますが、中国では「WeMedia」に投資する企業があるんです。いいメディアは儲かるので投資の対象になる。先ほど紹介したpapi醤(パピジャン)のような影響力のあるアカウントには数億円が投資されました。彼女のアカウントをメディアとして活用し、そこで流す広告に1本何千万円という値段がつくんです。
藤田:初期の網紅(ワンホン)は漠然と自分のライフスタイルをただ無料で配信していただけでしたが、フォロワーの数が増えてくるとビジネスになるわけですね。
藤田:最後に5番目の「リアル体験者」ですが、これはレビューなどで影響力を持つ一般ユーザーです。フォロワーはそれほど多くはないものの、自身の深い体験などを積極的に発信し、周囲の人たちに影響を与えます。
趙:身近なライフスタイルの情報などを日々投稿しています。例えば、日本在住の中国人が、日本でどんな生活をしているのかリアルに伝えています。タレントのように影響力があるわけではありませんが、そこで発信する情報は中国在住の消費者にも影響を与えますから、これも一種のインフルエンサーということになります。
藤田:日本で生活している中国人の商品レビューは、中国在住の消費者にとってすごく信頼性が高いわけです。
アジェンダの1つ目をまとめます。網紅(ワンホン)とは「インターネットで人気のインフルエンサー」のこと。最近は主に動画やライブ配信を活用し、個人がメディア化して活躍しているのが特徴です。そして「KOL(キーオピニオンリーダー)」の1つの形態であることを押さえていただければと思います。
網紅(ワンホン)を取り巻くネットトレンド
藤田:次は「網紅(ワンホン)」を取り巻くネットのトレンドについて説明します。ポイントは①生配信②ライブコマース③インターネットラジオの3つ。順番に説明しましょう。
まず、中国では生配信が今すごく熱いんです。ゲームばかり配信しているチャンネルもあれば、トレンド情報をずっと流していたり、可愛い女の子がなんとなくDJみたいなことをしていたりと、さまざまなコンテンツが流れています。日本の「ニコニコ動画」のように文字のテロップが出るものも人気になっていたりして、それぞれ特徴がはっきりしています。
人気のライブ配信アプリを6つ上げました。「一直播(イージューボー)」は2016年の5月にサービスを開始した生放送アプリなんですが、ローンチからわずか9ヶ月間で1000万人のユーザーが毎日視聴する人気アプリになっています。1回の配信で最大450万人が同時視聴することもありました。急成長した背景には、開始当初から300人以上の有名人が生放送を行ったため、芸能人の生放送を観たいユーザーがどんどん集まってきました。そして、ライブ配信を「微博」上で観やすい仕様にしていることも人気の要因です。ライブ配信しながらEC機能で商品を売るなど、ショッピング系のマーケティングにはすごく重要な役割を果たしています。
藤田:次に「ライブコマース」ですが、これは生配信とEコマースを組み合わせた取り組みです。「イージューボー」もそうですし、タオバオという中国最大のショッピングサイトもライブ配信ができるシステムを導入しています。「淘宝直播(タオバオジューボー)」というんですが、配信主はファッションアイテムなどを見せながら、ユーザーから寄せられた「その商品裏側を見せてください」といったコメントにその場で応えていくんです。そして、「いくらなんですか」といった質問にもその場で答えてどんどん商品を売っていく。
趙:ライブコマースで商品がものすごく売れています。インフルエンサーはマーケターでもありますから、今何が流行っているのか、自分のファンが何を欲しがっているのかをとても良く知っているんです。だから表現もそうですし、商品のPRのポイントもしっかり押さえています。
藤田:テレビショッピングをイメージしていただくとわかりやすいかなと思います。しかも、視聴者とリアルタイムでコミュニケーションを取りながら売っていくわけですから、すごく面白いですよね。
そして3つ目のトレンドは、ちょっと意外に思うかもしれませんが「インターネットラジオ」です。
趙:中国では「ヒマラヤ」と「デーダォ」という2つのサービスが人気を集めています。知識にフォーカスした情報を配信しているのが特徴です。従来のワンホンはエンターテイメント系の配信が多かったですが、インターネットを使って知識を得たいと考えるユーザーのニーズも高まっていて、知識に対してお金を払う習慣がこの2つのアプリによって生まれているんじゃないかなと思います。
藤田:ちょっと解説を入れますと、中国である程度のステータスとか、ある程度のキャリアを持った人たちは車で通勤することも多いです。車を運転しながらSNSは見られませんから、代わりにインターネットラジを利用するようです。
網紅(ワンホン)プロモーションの事例
藤田:「網紅(ワンホン)」のプロモーションの事例を紹介します。「網紅(ワンホン)」を起用したプロモーションには、さまざまな方法がありますが、一番シンプルな方法はテキストと画像を投稿してもらうやり方です。スポンサードコンテンツとして、影響力の高いアカウントに商品紹介のためのコンテンツを投稿してもらいます。
さらに発展すると動画になります。例えば、アイジゼルさんというママブロガーが日本のマタニティウェアを紹介しながら、友達と一緒にディスカッションする動画を投稿しました。彼女は「すごく動きやすいわよ」とか「おしゃれで痩せて見えるわね」とか「見て、こんなに伸びるわよ」とか、商品の着心地やスペックをすごくわかりやすく紹介してくました。その結果、商品の人気に火がついて中国の通販サイト「TMall」でマタニティウェアの売り上げが倍増したんです。そういった動画の作り方は上手だなと思います。
そして生配信の事例ですが、日本の政府観光局(スライドには「日本政府旅行局」JNTO)が依頼したコンテンツは、旅行者が熊本県のホテルで食事しながらライブストリーミングを行う内容でした。これが生放送時間中に187万回も視聴され、コメントは4000件近く付いています。視聴した中国人が「熊本県の天草に行きたい」っていうことですごく盛り上がった成功例です。
こちらは高級ブランドの「Coach」の事例ですが、昨年のニューヨークのファッションイベント中に中国の「網紅(ワンホン)」がニューヨークから「美拍(ミャオパイ)」というアプリを使ってイベントを生配信しました。「これが先ほど紹介された新作ですよ」「この色が今年トレンドです」といった具合で紹介したところ、視聴回数は合計300万回、コメントやいいね!は700万以上ついて、すごく盛り上がりました。
これも生放送の事例ですが、昨年のファッションウィークで「Tommy Hilfiger」というブランドが、ファッションショーを生配信しながら網紅(ワンホン)が解説を入れ、しかも紹介した商品を「TMall」で販売して売り上げにつなげました。
藤田:コンテンツを作る際のポイントですが、「網紅(ワンホン)」のルックスやキャラクター、パーソナリティー、専門性といった個性を生かすことが大切です。「網紅(ワンホン)」の個性とクリエイティブをどのように掛け合わせていくのか。ライブ感や臨場感をどのように演出するか。そこを踏まえてECとの連携を上手く掛け算していくと「網紅(ワンホン)」の効果はより高まっていくと思います。
網紅(ワンホン)プロモーションの3つの注意点
藤田:最後のアジェンダは「網紅(ワンホン)」のプロモーションを行う際の注意点です。中国のインフルエンサーに依頼するときの注意点は大きく分けて3つあります。①インフルエンサーを決定する前の準備②依頼するときに押さえておくべきポイント③インフルエンサーが投稿した後の対応--という3つのポイントについて説明しましょう。
インフルエンサーを決定する前の準備
藤田:プロモーションを行う商品やサービスに適切なプラットフォームはどれか、最適なジャンルは何かということをまず考えなくてはいけません。その上で、インフルエンサーマーケティングのゴールを明確にしていくことが大切です。「網紅(ワンホン)」を起用する目的は「販売」なのか「ブランディング」なのか「商品の魅力を伝えること」なのか、こうしたことをまず明確にします。そして目的や予算、商品ジャンル、ターゲットを踏まえて「網紅(ワンホン)」を選びます。
趙:「網紅(ワンホン)」はフォロワーとの信頼関係を大事にしますから、自分がいいと思っていない商品やサービスを紹介することを拒否することもあります。ですから、「網紅(ワンホン)」を決定する前に、ある程度はマーケット調査をすることも必要だと思います。それがわからないという企業さんも多いですが、そういうときは弊社に相談していただければと思います。
藤田:「網紅(ワンホン)」のフォロワーの人数だけで判断してはだめなんです。その「網紅(ワンホン)」が今までどんなコンテンツを発信してきたのかを調べることが大切です。
依頼するときに押さえておくべきポイント
趙:「網紅(ワンホン)」に依頼するときは、後々トラブルにならないように依頼内容を明確にしておくことが大事です。そして、情報発信のやり方や拡散のやり方は「網紅(ワンホン)」ごとに異なりますから、その辺りを尊重することも大切です。ファンのことを一番理解しているのは「網紅(ワンホン)」自身ですから、情報発信の方法を決めるときは「網紅(ワンホン)」の考え方もある程度参考にした方がいいと思います。
また、コンテンツに盛り込む情報を絞り込むことも大事なんです。インフルエンサーへの依頼は高額な場合もあるので、できるだけたくさんの情報をコンテンツに盛り込みがちですが、そうするとフォロワーに不自然な印象を与えてしまいかねません。そういう意味では、依頼側の希望を無理に押し込みすぎないことも大事だと思います。
インフルエンサーが投稿した後の対応
藤田:インフルエンサーが投稿した後は、ファンへの回答のフォローを行います。あまり露骨に「記事のリンクをみんなクリックしてね」とか、そういうやり方はファンの反感を招きやすいので気を付けた方がいいと思います。
趙:中国の広告の法律について少し触れておきます。みなさんが一番気になるところは「ステマ問題」だと思います。企業からお金をもらって情報発信する場合は「広告です」「スポンサー案件です」ということを明示する義務があります。ただ中国ではまだ、多くのインフルエンサーは明示していないのが現状です。ただし、多くのインフルエンサーは自分のファンを大切にしたいという思いがありますので、ファンを欺くような行為はあまりしません。自分が好きなものだから嘘をつかずに、多くの人に教えたい、広めたいという気持ちでやっています。
藤田:ファンはインフルエンサーに対して「この人は企業に魂を売って私たちを欺いたりしないだろう」という信頼感を持っているんですね。だから、性善説な感じもすると思うんですが、現状は本当にそういう感じです。企業からお金をもらって生配信していることもありますが、それはファンもなんとなく暗黙の了解でわかっているんです。そして、ファンの人たちは、「『網紅(ワンホン)』はそれで生活しているわけだし、一所懸命自分たちに良い情報伝えてくれているから応援しよう」と考えるわけです。ある意味、パトロンのような目線でフォロワーが付いている人は、本当の意味で良い「網紅(ワンホン)」なのではないかと思います。
藤田:第2回目は以上です。次回7月12日水曜日は、1回目と2回目の内容を復習しながら、学んだ情報を上手く活用して中国でマーケティングを行うためのブレインストーミングのようなこともやってみたいと思います。ワークショップのようなイメージです。
次回までに今日紹介したワンホンのアカウントやWeMediaのアカウントを実際に見たり、生配信アプリを触ったりしていただいて、「自分ならどう使うか」といった視点でアイデアを考えておいていただくと、第3回目をより楽しんでいただけるのではないかと思います。次回もぜひご覧ください!
【生放送】第3回放送予定はこちら!
70兆円市場の鍵を握る「チャイニーズインフルエンサー」
第3回「リアルタイム企画会議 -中国消費者に刺さるコンテンツとは-」
日程:2017年7月12日(水)19:00~20:00
授業詳細 https://schoo.jp/class/4023
※生放送はオンライン動画学習サービス「Schoo(スクー)」の無料会員登録のみでご覧いただけます。
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