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KOLや網紅(ワンホン)だけじゃない!多様化する中国インフルエンサーを日本企業が活用するには?中国SNSコンサルタントに聞く課題と対策

 

中国マーケティングで今注目の存在「網紅(ワンホン)」に代表される中国インフルエンサーを日本企業はどのように活用したらいいのか?
日本企業でのマーケター経験もある中国人コンサルタントに聞きました。

 

 

KOLや網紅(ワンホン)だけじゃない!多様化する中国インフルエンサーを日本企業が活用するには?中国SNSコンサルタントに聞く課題と対策

趙 会娟(Chou Vivian)

【プロフィール】
日本の大学院を卒業後、大手メーカー日本企業へ就職し、アジアや中国市場のマーケティングを7年ほど担当。
その後、GlobisビジネススクールでMBAを取得し独立。自身の持つ、数千人規模のインフルエンサー・ネットワークを使った
マーケティングサービスを展開中。

 

 

中国ではSNS人気の隆盛とともに、ネット上の有名人である「網紅(ワンホン)」が多大な影響力を持つようになっており、中国人インフルエンサーは日本企業にとっても中国向けマーケティングの成功を左右する存在になりつつあります。

 

そこで、現在、アライドアーキテクツ株式会社および中国向け動画インフルエンサーマネジメント会社「Vstar JAPAN」で、日本企業の中国向けマーケティング支援を行っている中国SNSコンサルタントの趙 会娟(Chou Vivian)に、現在の中国市場とインフルエンサーの関係や、日本企業が中国向けインフルエンサー・マーケティングを行う際に注意したいポイントなどを聞きました。

 

 

 

日本企業がなかなか埋められない日中間の壁とは

 

――在日中国人であるあなたが、なぜ中国企業ではなく、日本企業に対してのプロモーション支援を始めたのですか?

 

Vivian:

私が日本の大学院を卒業してメーカーへ入社した頃はまだ、日本と中国の間には経済的な開きがありました。
私はそのメーカーで、中国を含むアジアのマーケティングを担当していましたが、当時は日本企業の多くが、中国を市場としてではなく生産地として見ていました。その頃から、すでに中国が巨大市場へ発展する兆しはあったものの、カントリーリスクなどから日本企業は中国市場への参入にあまり積極的ではありませんでした。
その後、中国経済は飛躍的に伸び始めたのですが、担当していた事業はタイミングなどが合わずに成果を出せなかったのです。日本企業が提案するものは、中国でも需要がありそうなものばかりだったのに、結果的にはうまくいかなかった。
この時から、「どうしたら日本企業のやりたいことをもっと中国へ上手に伝えられるのだろう」という模索を始めたんです。

 

――当時のマーケティングで成果が出せなかったことが、きっかけだったんですね。

 

Vivian:

はい。とは言え、当時は日本にそこまで思い入れがあったわけではないんです。
気持ちに変化が起こったのは、東日本大震災でした。この頃、すでに日本に12年ほど住んでいた私には、子どもも生まれ家族が出来ていました。日本に起きた未曾有の大災害にかなりの衝撃を受けたことで、自分は自分が思っているよりも、ずっと日本を愛していたことに気付いたんです。さらに、メーカーでの担当事業がうまくいかなかったことで、日本の良さを海外へ伝わりきれていないことへのジレンマも感じていました。そこで、もっともっと日本の良さを伝えたいと思い、独立しました。

 

 

――当時在籍していたメーカーでのマーケティングがうまくいかなかったのは、どんなことが原因だったと考えられますか?

 

Vivian:

日中間での情報に対するタイムラグがあったことと、中国人に合わせた手法が行えていなかったことでしょうか。

 

現在は、中国SNSの普及により、時間差がなくなり情報がダイレクトに伝えられるようになりました。この影響はかなり大きいと思います。そして、SNSによって中国人のライフスタイル、消費習慣及びプロモーション方法を理解することも出来るようになり、中国人に合わせた手法を実施できる環境がかなり整ったと思います。

 

 

 

 

中国でのインフルエンサー・マーケティングの盛り上がり

 

――現在の中国SNSでは、KOL(Key Opinion Leader)と呼ばれる著名人や有名人たちがかなり注目を集めていますよね。

 

Vivian:

中国SNSで活躍するKOLがインフルエンサーとして社会的な注目を浴びたきっかけは、「papi醤(パピちゃん)」という網紅(ワンホン)の存在ではないでしょうか。個人アカウントでの動画配信が人気となって多くのフォロワーを獲得したところ、投資会社が彼女に大規模な資金投資を行ったんです。この辺りから、網紅を含むKOLの存在が経済活動とリンクするという新しい潮流が生まれました。すると、一般人による動画配信もブームとなり、個人のSNSアカウントがメディアとして機能し始めたんです。

 

 

――KOLと網紅には何か違いがあるのでしょうか?

 

Vivian:

「網紅」の網はインターネット、紅は人気を指します。つまり、インターネット上の人気者という意味です。KOLは、インターネットに限らず、メディアや書籍出版などのオフライン発信でも影響力を持つ人たち、いわゆる文化人や業界人と呼ばれる人も含まれるので、専門家的な性質が強いKOLたちからすると、網紅たちは少し軽いイメージかもしれません。

 

――現在の中国では、こうしたKOLや網紅による経済活動が社会的に認知され、インフルエンサー・マーケティングが発達していますが、日本企業はまだ活用に積極的だとは言えないようですね……。

 

Vivian:

市場の成長が急速すぎて、気付いた時には大規模市場に発展しており、注目を浴びているインフルエンサーたちを使おうとしても、すでにキャスティング料がかなり高騰してしまっていました。また、当時のインフルエンサーたちには、曖昧で不透明な部分があったことにもリスクを感じたのではないでしょうか。

 

――つまり、市場成長やインフルエンサーたちの価値上昇のスピードが速すぎて、海外資本である日本企業には参入する隙がなかったということですか?

 

Vivian:

はい。網紅というこれまでない新しい存在が生まれて、SNSによるコンテンツがマーケティングに多大な影響を与えるようになったのは、ここ数年の出来事ですが、それまで曖昧だったKOLや網紅の存在価値が、企業のマーケティング活用によって明確化し、中国経済に変化をもたらしました。現在では網紅を取り巻く環境もかなり成熟してきたので、日本企業にとって導入の良いタイミングが来ていると思います。

 

 

――しかし、日本企業の中には、まだまだカントリーリスクを感じている会社も多いのではないでしょうか。

 

Vivian:

確かに現在は市場が安定してきたとはいえ、まだまだ中国に対して様子見をしている日本企業も多いと思います。例えば、韓国などは、新しい物事に対して積極的な出資や投資を行う企業が割と多いのですが、日本はまだ中国市場にまったく関与しないか、初めから中国本土に根付いてとことん事業を行うかの2種類に分かれている印象です。

 

ただ、中国でのマーケティングは、流行のサイクルがとても早いのです。ある日突然、新しいトレンドが現れることも珍しくないため、その都度やり方を変化させて、今までの経験にとらわれることなく、柔軟に対応していかなくてはなりません。他社が実施した参考事例が出てくるのを待っていては、この変化に対応することはできません。自分たちで新しい事例を作るくらいの挑戦が必要なのです。

 

しかし、これは逆に言うと、市場が成熟して安定しているように見えても、新規参入するチャンスがいくらでもあるということ。日本と中国では文化も違えば言語も違いますから、自社がやりたいことや伝えたいことを、いかに中国で理解してもらえるかがカギになってきます。

 

そこで、日本企業が成功するためのキーパーソンとして、KOLや網紅といったインフルエンサーの存在が重要になってくるのです。

 

在中インフルエンサーと在日インフルエンサーの違いについて語るVivian

 

 

在中インフルエンサーと在日インフルエンサーの違い

 

――なるほど。それでは、日本企業がパートナーにすべきインフルエンサーとはどんな人たちなのでしょうか。

 

Vivian:

今までは、中国にいる在中インフルエンサーの活用が主流でしたが、彼らに日本企業の意図を完璧に理解してもらい、マーケティング活動に協力してもらう体制を築くには、それなりのコミュニケーションコストが必要でした。

 

そこで私が現在提案しているのが、日本にいる中国人のインフルエンサーたちです。在日インフルエンサーなら、中国語と日本語を操れますし、何より中国文化と日本文化の両方を理解できますので、施策進行がよりスムーズだというメリットがあります。

 

――在日インフルエンサーと呼ばれる人たちは、どんな特徴があるのですか。

 

Vivian:

まずは、高学歴で若いことが新世代の在日中国人の大きな特徴ですね。それまでの在日中国人は、日本にいる中国人同士のある意味限定的なコミュニティーの中で生きていました。しかし、新世代の在日中国人は、多くが日本企業に勤務するなど一般的な日本社会に溶け込み、日本人の間のトレンドもいち早くキャッチできる環境にいます。

 

ただ、彼らにとってインフルエンサー的な活動は、本業やビザなどの問題もあるため、あくまで副業的なものとして捉えていることには注意が必要です。

 

――在日インフルエンサーたちは、KOLや網紅になりたいという気持ちはあまり持っていないということですか?

 

Vivian:

インフルエンサーの活動を本業にしたいと考えている人は少ないのではないでしょうか。

 

これまでは中国に住む人たちが日本について知るには、日本にコネクションを持っている在中インフルエンサーたちが発信する情報が頼りでしたが、越境ECの飛躍的なブームを背景に、より詳しい情報を直接日本からリアルタイムで発信する在日インフルエンサーの存在が注目されるようになりました。

 

しかし中国本土に暮らす人にとっては、在日インフルエンサーはあくまでも中国外に暮らすアウトサイダー的な存在で、在中インフルエンサーに感じる共感のような感情は持ちづらいようです。その点を在日インフルエンサー自身も認識していて、本業にすることの難しさを感じるのではないでしょうか。

 

ですから、在日インフルエンサーたちには、在中インフルエンサーのような爆発的な拡散力は期待できません。けれども彼らは、中国人でありながら日本人と同じ肌感覚を持っていること、情報収集力が高いことなど、日本在住ならではの武器を持っています。

 

 

 

 

日本企業にとっての在日インフルエンサーの重要性

 

――日本国内のマーケティングにおいても、ユーザーに刺さるメッセージを発信することを試行錯誤している時代であるように感じます。特に昨今はソーシャルメディアの台頭により、これまでの広告に対する価値観がガラッと変わっています。また、企業が考え発信してきた商品やサービスの価値とはまったく違う価値をユーザー同士で見出し、情報交換をするという現象も起きている中で、やはりインフルエンサーの影響力に注目が集まっています。この流れは、中国におけるインフルエンサー活用の機運と似ていますね。

 

Vivian:

在日インフルエンサーの中には、中国本土に住む中国人とビジネスをしていて、バイヤー的な役割を担っている人もいます。常に中国の流行を敏感にキャッチしている彼らの意見は日本企業にとって非常に参考になるでしょう。

 

また、在日インフルエンサーは、こうしたバイヤー的な目線の他にも、ユーザーとしての目線、インフルエンサーとしての目線を持っています。ですから、広告塔としてではなく、中国への訴求力のある商品価値を発見するために登用すれば、中国人視点での様々な示唆を得られるので、テスト・マーケティングなどにかなりの効果を期待できるのではないでしょうか。

 

 

――日本企業が在日インフルエンサーを登用するときの注意点はありますか?

 

Vivian:

在日インフルエンサーと一言で言っても、情報拡散力が高い人、コンテンツのクリエイティブセンスが良い人、リサーチ力が高い人、ヒアリング対象に最適な人など、さまざまなタイプがいます。どのインフルエンサーが何に強いのかをきちんと把握し、目的に応じて上手に使い分けないと、思ったような結果が得られません。

 

在日インフルエンサーは、徐々に増えつつありますが、まだまだ母数は少なく、貴重な存在です。彼らをどうやって発見して活用するかは、今後、中国マーケティングでの成功に少なからず影響してくると思います。

 

私たちは、こうした在日インフルエンサーと日本企業をつなぐことで、中国市場に参入しやすいマーケティングプランを設計しています。ご依頼いただいた企業の課題を精査し、中国へ参入するためには何が必要で何が足りないのかなどをしっかり分析して、最適な在日インフルエンサーをご提案しています。

 

多様化する中国インフルエンサーについて語るVivian

 

 

 

多様化する中国インフルエンサー

 

――日本でも今、インフルエンサーとして活躍する人が増えています。中国本土の方が情報ソースとして、よりリアルさを求めて在日インフルエンサーに注目したことを考えると、リアルな情報をリアルタイムに発信する日本人のインフルエンサーも注目されるのでは?

 

Vivian:

今後は日本人インフルエンサーに対する注目も確実に高まると思います。ただ、中国語を話せる日本人インフルエンサーの数は、まだまだ少ないですから、現状ではやはり言語の壁が課題になりがちです。

 

そこで「Vstar Japan」ではコンテンツの中国語翻訳や、中国本土で受け入れられるコンテキストのアドバイスなど、日本人インフルエンサーの中国向け発信を支援しています。

 

これからは商材やターゲット、在住エリアなどの条件に合わせて、在中、在日、日本人という3タイプのインフルエンサーを、組み合わせていくことが重要になってくると思います。

 

 

――日本企業が中国マーケティングに取り組む際には、適切なインフルエンサー登用プランを設計することが今後ますます重要になりそうですね。

 

Vivian:

そうですね。インフルエンサーはとてもクリエイティブな存在です。広告塔としてメガホン代わりに使うのではなく、パートナーとして敬意を払い、一緒にビジネスを展開していく姿勢が大切。インフルエンサーと日本と中国の間を取り持つ仲人的存在として上手に付き合うことで、日本企業が伝えたいメッセージを中国の生活者へと届けられるはずです。

 

<インタビュアー>藤田 和重 CNMLab 編集長

 

 

在日中国人SNSユーザーのクチコミを活用し、中国本土への情報発信を行うプロモーション支援サービスの提供を開始するため、当社独自の在日中国人SNSユーザーネットワークを構築いたしました。

 

アライドアーキテクツ、在日中国人SNSユーザーネットワークを構築

 

プレスリリース
http://www.aainc.co.jp/news-release/2017/01535.html

 

これにより在日中国人SNSユーザーを効率的に活用できるため、今後、より自由度が高く幅広い中国向けプロモーション支援が可能となります。中国でのプロモーションをご検討の際は、ぜひ一度ご相談ください!

 


 

Weibo公式の中国向け広告コンテンツ拡散支援サービス「WEIQ」
Weibo公式の中国向け広告コンテンツ拡散支援サービス「WEIQ(ウェイキュー)」は
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<サービス詳細>
https://www.aainc.co.jp/service/weiq/


 

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