中国ECの最大商戦日ともいわれる「独身の日」に向けて、日本のコスメブランド「エテュセ」が行ったプロモーション施策のポイントと成功の秘訣をご紹介します!
「ネ、ネ、知ってる?」と思わず誰かに伝えたくなる「カワイイけれどスグレモノ」がコンセプトの日本の化粧品ブランド「エテュセ」は、阿里巴巴(アリババ)が運営するECサイト「Tmall(天猫)国際」などに商品を出品しており、中国向けの越境ECを展開中です。
この度、Tmallの大規模セールが行われる11月11日「独身の日」に合わせ、アライドアーキテクツ支援のもと、中国現地インフルエンサーを起用した動画プロモーション施策を実施、商品の売上げが15倍に増加するなど、大きな成功を収めました。施策実施から数ヶ月たった今でも、その商品は売れ続けていると言います。
今回は、実施した施策のポイントと成功の秘訣を、実際に本施策を実行したアライドアーキテクツの担当者、沈天怡(チンテンイ)へのインタビューという形で、振り返っていきたいと思います。
沈天怡(チンテンイ)
アライドアーキテクツ株式会社グローバル事業部 アカウントマネージャー
■今回実施した施策の内容と結果
Weiboで100万人のフォロワーを持つ、papitube専属契約クリエイター 賴賴是Zoe(ゾーイ)さんを起用、エテュセ商品を使ったメイクアップやスキンケアの方法を実演、Zoeさんの言葉で使用感を語ってもらう形式の「商品開封動画」を制作しました。その動画をZoeさんがもつ17のSNSアカウントで投稿、さらに広告コンテンツ拡散サービス「WEIQ※」を利用して、美容に関する情報を発信している5人のインフルエンサーのWeiboアカウントから、合計フォロワー数約180万人に向けて一斉に動画のシェアを行いました。
papitube専属契約クリエイター 賴賴是Zoe(ゾーイ)が制作した微博動画
結果、動画は17媒体合計で255万回の視聴回数を獲得。また、17媒体から流入を促したECサイトにおいて、それまでは中国の消費者の認知獲得が課題だった商品「ラッシュバージョンアップ」が、動画施策後1か月間で15倍の売上となり、動画コンテンツ拡散によるターゲット層のECサイトへの集客と、販売促進を実現しました。
■今回の施策の成功ポイント その1~キャスティング
今回の成功ポイントは2つあると思います。ひとつ目は「適切なキャスティング」、ふたつ目は「コンテンツ設計」です。
まずひとつ目の成功要因「適切なキャスティング」ですが、ブランドとプロモーションの目的にしっかりあったインフルエンサーを選べたということです。中国には数多くのインフルエンサーがいますが、ただ単純に「フォロワー数が多い」「カテゴリ・ジャンルが美容関連である」という理由で選べばよいというものではありません。
もちろん、「フォロワー数」や「カテゴリ・ジャンル」は選択する際の一つの重要な要素ではありますが、それ以上に、まずはインフルエンサー本人に「本当の意味でのアクティブなファン」がついており、インフルエンサー本人がきちんと「ファンに対して影響力がある」かどうかを見極めることが大切です。
今回起用したZoeさんは、日常的な投稿に「いいね!」の数がとても多く、コアなファンがついていると判断できました。例えばプレゼントキャンペーンなどを実施すれば投稿の「シェア」はある程度獲得できる部分があるのですが、日常的な投稿にコンスタントに「いいね!」がついているかどうかは、コアファンがいるかどうかを見分ける一つのポイントだと考えています。
また、同様にコメント欄の反応もとても重要です。Zoeさんの場合は、ファンからZoeさんへのコメントでの話しかけ方が、まるで「友達」に話しかけているようなスタイルであり、ファンがとてもZoeさんに親近感を抱いていることが分かりました。
エテュセ様のブランドは、手が届かない「高嶺の花」というよりも、「可愛くてクオリティがよく、少し背伸びをすれば手が届く価格帯であり、消費者に親近感がある」というイメージに近いと理解しています。その点からも、Zoeさんのようなファンから親近感をもたれているインフルエンサーであれば、エテュセ様のブランドイメージとマッチするのではないかと考えました。
また、Zoeさん自身も、「エテュセ」のブランドに対して好意を持って喜んで案件を引き受けてくださり、実際にご使用いただいて愛着を持ってくださるようになったこともポイントでしたね。やはり、インフルエンサーが、本当に良いと思って実施することで、ファンに伝わる力が大きく変わってくると思いますから。
■今回の施策の成功ポイント その2~コンテンツ設計
ふたつ目の「コンテンツ設計」も施策成功の鍵を握る重要なポイントだといえます。
いかに良いインフルエンサーを選んだとしても、コンテンツそのものに魅力がなければ、影響力が全くないどころか、反感を買ってしまうことさえありえます。
今回は、「知られていないかも(?)日本のプチプラ化粧品を使ってみた」という「商品開封動画」形式の企画をアライドアーキテクツからご提案させていただきましたまた、Zoeさんからも賛同いただき、ぜひやりたい内容であると了承いただきました。
今回のプロモーションの目的は、W11という中国で最大といわれるオンラインセールスの日にしっかり売上げを作ることでした。したがって、変な意味での「いやらしさ」は排除した上で、動画を見たファンの人が自然と購買したくなるようなコンテンツを意識しました。くわえて、Zoeさんの普段の動画スタイルをきちんと踏襲する形の動画にし、きちんとファンが楽しめるようなコンテンツになるよう気を配りました。
さらにZoeさん自身が、動画の中で、メーカー様側から与えられた言葉ではなく、きちんと自らの言葉で商品の良さを語ったことで、ファンに受け入れられるコンテンツとなり、ファンからも「買いました」という写真付きのコメントが入るなど、とても好感の持たれる施策になったのではないかと思っています。
こうした意味でも、エテュセ様がZoeさんの世界観を理解し、企画そのものを信頼して任せてくださったことが、非常にありがたかったです。
■今回「インフルエンサー施策」を選択した理由
W11に向けた中国向けのプロモーションと一口に言っても様々な手法が存在します。例えば純広告、メディア掲載、リスティングなども手法の一つです。
今回、エテュセ様の施策の目的はW11での売上獲得にくわえ、中国国内でのブランド認知度向上でしたが、ブランドのキーワードで一般的な広告を出しても中国消費者に気づいてもらうのが難しい、という仮説がありました。したがって、まずは「影響力のある人=インフルエンサー」に伝えてもらうことで、商品への興味を持ってもらうきっかけを作ることがもっともコストパフォーマンスの良い施策になると考えました。
また、私自身が、初めて日本にきた学生時代から、ショッピングの時にエテュセ様のブランドが目に留まり、エテュセ様の商品をたくさん購入し使っていました。その使いやすさ、質の良さ、コストパフォーマンスの良さを知っており、とてもファンだったことも理由の一つです。世界観が可愛くてとても質がよく、中国人からも絶対に好かれる商品なのに、今はまだ中国人に知られていない、というだけ。その商品の良ささえきちんと伝われば、必ず売れる商品であると確信していました。
したがって、掛け捨て型の「純広告」よりも、SNS上で誠実に商品の特徴を伝え、アイテムへの愛を感じる「クチコミ」が波及・蓄積していくような施策の方が売上げに繋がりやすいと考えました。今回も、実際に複数のソーシャルバイヤーアカウントから自然発生のクチコミが生まれているのも見かけました。
また、インフルエンサー施策は、中国向けプロモーションに初めて取り組む方でも気軽に実施できるのも良い点ですね。公式のアカウントを用意したり、審査書類を準備したり、などの手間がかからず、1ヶ月程度あれば制作も完了できます。
■今後に向けて
今回の施策でエテュセ様の商品売上げに貢献できたことをとても嬉しく思っています。
今後、よりエテュセというブランドの中国国内での認知度を上げ、売上げを伸ばしていくために、継続的に適切な提案をしていきたいと考えています。また、より大きな規模で、インフルエンサーを含めたたくさんの人に商品の良さを知ってもらう機会を作っていきたいと思っています。これからも、エテュセさんのブランド・商品が、もっとたくさんの世界中の人に知られ、使っていただけるようになることを心から願っています。
<アライドアーキテクツ プロモーション実行担当者プロフィール>
沈天怡(チンテンイ)
アライドアーキテクツ株式会社にて、中国・台湾・香港・東南アジア向け等の
インフルエンサーマーケティングを担当中。
また、日本のクリエイター/YouTuber/タレントの中国向け活動を支援する
Vstar Japan株式会社の業務にも従事している。
<インタビュー構成・執筆>アライドアーキテクツ株式会社/Vstar Japan株式会社 小川 裕子