中国IT動向をキャッチアップ!月刊中国ネットニュースまとめ【2019年4月号】
中国在住ITライター山谷剛史さんが現地で集めたネット関連ニュースをまとめてお届けします!
変化の速い中国の状況を把握するために、ぜひチェックしておいていただきたい中国のインターネット関連ニュースを現地在住のITライター山谷剛史さんがまとめてご紹介します!
今月も日本からはなかなかつかみきれないリアルな動向をまとめてキャッチアップ出来ますので、ぜひ最後までチェックしてください。
■地図SNS「SPOT」が話題に
地図を活用した新SNS「SPOT」がAppStoreのSNSで1位となり、若いヘビーユーザーの間で注目が集まっている。ロケーションベースのSNSというとフォースクエアのようだがちょっと違う。
アプリ画面には基本的にポップにアレンジされた地図が表示され、そこに繋がっている人々がどこにいるか、何をしているかが表示されている。仲のいいチャット仲間がどこにいるか視覚的に表示されるので、知り合いが近くにいれば食事や遊びに誘うといった使い方が想定されている。そのほかにもスタンプのように短い音声ファイルを送る音楽スタンプなど新しい仕掛けを用意している。
人気ナンバー1の国民的アプリ「微信(WeChat)」とは違うメッセンジャーSNSが今年に入っていくつも登場している。これまで登場したのは、リリース開始だけ注目されそのあと引いていったので、SPOTが人気になるかどうか継続してチェックする必要があろう。
■IT業界の長時間労働「996」問題が明るみに
馬雲氏の996問題に対するメッセージ
中国のIT業界において長時間労働が常態化している。「朝9時から夜9時まで週6日勤務する」仕事ライフを例に「996」と呼ばれるそれは、中国のネット上で大きな話題となり、プログラマーが勤務実態をさらし、長時間労働の現状に対し不満を表明した。中国のメディア各社はプログラマーたちの運動を取り上げ、さらされた労働環境を拾い上げ、IT企業の中で常態化していることを紹介した。その中にはアリババ(阿里巴巴)やバイトダンス(字節跳動)など著名な企業が含まれていたし、多くのスタートアップ企業も含まれていた。
こうした中でアリババのジャックマー(馬雲氏)は、「むしろそれだけ働けることはラッキーであることで、多くの人が働こうと思っても働けない」というコメントをしている。
■中国の政治イベント「両会」でネット業界代表の提案続々
両会のネット業界の提言だけを集めたサイトも.それだけネット業界の代表の提言は注目されている
中国の一大政治イベント「両会」で、インターネット業界を代表する企業のトップからも様々な政策提言が出た。
近年人工知能や無人運転車に力を入れる百度のトップ李彦宏氏は、人工知能(AI)に関する法律の立法を進めるよう提言。また国のバックアップにより、スマートシティの交通面でのデータシェアとデータ使用ルールについて定め、各地での導入を進めるよう提言した。
テンセントのトップ馬化騰氏は、伝統的な産業へのインターネットテクノロジーの導入を進める「インターネットプラス(互聯網+)」を農業や工業や建築業などで特に推進するよう提言。また将来に備えてIT人材教育の強化や、ライドシェアのドライバーや宅配スタッフなどの新しい職種の労働者にも適応される社会保障システムを実現するよう提言した。
スマートフォンなどで知られるシャオミ(小米)の雷軍氏は、IoTに力を入れることから、産業用IoTや、農業のIT化による脱貧困、医療向けIoTを進めるよう提言し、また宇宙産業関連立法を進めるよう提言した。
ECの京東(ジンドン)の劉強東氏は、農村部でECが普及し、貧困脱出をサポートできる環境づくりを官民で行うよう提言。大手ポータルサイトで越境ECにも強い網易(ネットイース)の丁磊氏は、教育と人工知能の融合を進めるよう提言した。ほかにも多数の人が提言をしていて、提言の一部は時間を経て立法化されるなど、実現されることになる。
■2019年春データ、ECは淘宝・天猫、旅行は携程(Ctrip)が人気
ECのアプリ利用者とミニプログラム利用者を足したユーザー数(QuestMobile)
QuestMobileは、中国のスマートフォンなどによるモバイルインターネット利用状況についてまとめた「中国移動互聯網2019春季大報告」を発表した。報告によると、モバイルインターネット契約数は11億3800万で、これまでに比べて緩やかな増加となった。
一方変化が目立ったのは利用時間で、1日のモバイルインターネット平均利用時間が、2017年3月には269.1分(4時間超)、2018年3月には312.8分(5時間超)だったのが、2019年3月には349.6分と6時間弱まで利用時間が増えたという点だ。これは、近年データ通信が価格面で安くなり、利用しやすくなったというのがあるだろう。利用時間増加の背景にはショートムービー(短視頻)の利用時間増加が背景にある。
ベンダー別で分けると、テンセント(騰訊)系アプリが43.8%、バイトダンス(字節跳動)系アプリが11.3%、アリババ(阿里巴巴)系アプリが10.6%、バイドゥ(百度)系アプリが6.9%となり、この4社(BATT)で72.6%を占める結果となった。この中で中国版TikTokのドウイン(抖音)の影響か、昨年と比べてバイトダンスの割合が高まった。WeChat(微信)などから起動するミニプログラム(小程序)についても、去年と比べて多くのアプリを利用するということはなかった。ミニプログラムについても決まったアプリだけを日々利用するようだ。
旅行アプリの月間アクティブユーザー数(QuestMobile)
一部ジャンルのアプリの利用数について抜粋すると、ECアプリでは、アリババ系の淘宝と天猫双方が利用できる「手机淘宝」が2位3位の「ピン多多(ピンは手偏に并)」「ジンドン(京東)」にダブルスコアを付けて人気で、それに続いて女性向けに特化した「唯品会」、アリババの中古取引の「閑魚」が続いた。ゲームではFPSのオンライン対戦ゲーム「プレイヤーアンノウンズ バトルグラウンズ(PUBG)」とオフラインでも遊べるパズルゲーム「開心消消楽」が特に人気に。また動画アプリについては19~24歳の都市部の消費者を中心に、有料会員になる割合が高いという。旅行では「携程(Ctrip)」のアプリ利用者数が昨年同期と比べて73.5%増と旅行系では唯一急増し、他サービスの利用者数に差をつけた。
■ゲーム最大手テンセント、子供向けゲーム対策を強化
中国ゲーム最大手のテンセント(騰訊)は、3月1日より同社の人気ゲーム「王者栄耀」など一部ゲームタイトルにおいて、一12都市で試験的に新たに「チャイルドロックモード(自動鎖摸式)」をスタートした。
チャイルドロックモードは、13歳以下のネットユーザーが初めてゲームに登録する前に、保護者の強制登録を求めるもの。ゲームの初回登録時に保護者の身分証画像や許可を宣言する動画などをアップして、認可されれば遊べるようになる。テンセントは、親に子供のゲームに関する状況や、利用時間や費用を認知することができ、合理的な保護者によるコントロールができるとしている。
またチャイルドロックモードが解除されていても、システム側で1日のプレイ時間は1時間に限られ、夜9時から翌朝8時までは遊べないなどの制限は継続するという。
■シェアサイクル「Mobike」、海外から撤退
左:Mobikeは今、美団のアプリから利用できる
右:Mobike自体はあり、今も利用は可能だ
シェアサイクルの代名詞的なMobikeが海外から撤退すると発表した。
Mobikeはネット大手の「メイトゥアン(美団)」が2018年4月に買収を発表したが、そこで厳しい収益も明らかに。2018年4月から同年末までの売上は15億元(約240億円)で、45億5000万元(約730億円)の損失となっていた。シェアサイクルの利益化はまだまだ難しいようだ。
山谷剛史(Takeshi Yamaya)
フリーランスライター。
2002年より中国・アセアン諸国・インドのコンシューマーIT中心に、「ニュース+実体験」をもとにリアルな現地事情を執筆している。
連載は『中国トレンド通信(日経トレンディネット)』『ニーハオ!中国デジモノ(同)』『ミライチャイナ(ITMedia)』『アジアIT小話(ASCII.jp)』など多数。
著書は『中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立(星海社新書)』など。
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