中国IT動向をキャッチアップ!月刊中国ネットニュースまとめ【2019年1月号】
中国在住ITライター山谷剛史さんが現地で集めたネット関連ニュースをまとめてお届けします!
変化の速い中国の状況を把握するために、ぜひチェックしておいていただきたい中国のインターネット関連ニュースを現地在住のITライター山谷剛史さんがまとめてご紹介します!
今月も日本からはなかなかつかみきれないリアルな動向をまとめてキャッチアップ出来ますので、ぜひ最後までチェックしてください。
■初となるVPN使用で逮捕者
広東省南雄市で中国から中国国外への繋がらないサイトにアクセスする、壁越えサービスの「Lantern Pro」を利用したとして1000元(約16000円)の罰金となった。これまでネットの壁越えを実現するVPNの開発者や販売者の逮捕や行政処分はあったが、利用者の逮捕は初めて。行政処分を受けた朱氏は、2018年8月から12月にかけて同サービスを利用し、行政処分前の1週間で487回利用したとしている。この数字だが、切断され再接続したことも含まれるかもしれず、多いか少ないかはわからない。
中国コンピュータネットワークとインターネット管理規定によれば、中国国外のインターネットに繋げるには、国家公用電信キャリアが提供したサービスを利用しなければならないとしている。
■微信は動画でのやり取りが普及、微信支付は交通の活用としても普及
テンセント(騰訊)は、2018年の微信(WeChat)データ報告を発表した。これによると、微信によるアクティブユーザー数は10億8200万だった。2018年と2015年で最も大きく変わった変化は動画の活用で、微信によるビデオチャット利用者が5.7倍増加し、微信のブログ的な機能「朋友圏」での動画投稿数は4.8倍増加した。この背景にはデータ通信料金の大幅な低下により、動画を投稿するハードルが下がったことがある。また微信で繋がる「好友」の数は、1.1倍増となった。
またキャッシュレス決済の微信支付(WeChatPay)の利用状況についても触れている。これによると、去年と比べ月に1度でも微信支付で買い物をする人は1.5倍、外食など食事にかけた人は1.7倍となった。微信支付でバスや地下鉄に乗る人数は4.7倍に、高速道路の利用に微信支付を利用する人数は6.3倍に、医療の支払いに微信支付を利用する人数は去年の2.9倍となり、買い物や食事以外での利用が増えているとした。
3年前の2015年と比較した会話の内容について、1990年代生まれ(90后:ジョーリンホウ)はより生活の話題が増え、1980年代生まれ(80后:パーリンホウ)は3年前と変わらず政治に関心があり、55歳以上は健康の話題が増したという。
このレポートでは「すべてのデータは匿名化して分析している」と補足している。しかし中国のネット管理に抵抗があるメディアは、テンセントは「ユーザーのチャット記録は保存していない」とはいっているものの、このレポートの結果から、ログを保存し検閲をしているのではないかと疑いをかけている。
■Ofoのデポジット返金騒ぎに1000万人以上が参加
シェアサイクル自体はピーク時より減ったがなくなってはいない
シェアサイクルofoの苦しい状況が連日報道され話題となった。シェアサイクルofoを利用するために、サービス開始からしばらくは当初は必要だったデポジット金について、返金を求めるリアルとネットの行列ができ、その参加者は1000万人を超えた。これはofoがデポジット返金順番待ちシステムにより残り人数をカウントできるようになり判明したもの。
解放日報の取材によれば、上海の1消費者がデポジット返金行列に12月19日に並び、1124万人が前に並んでいたが、1月19日の段階で1086万となっていた。このペースで返金が進むとなれば単純計算で3年以上待つことになると同メディアの記事では分析している。またあるネットユーザーが、外国人のふりをして英文で返金を申請したところ、すぐに返金されたことが話題になった。
黄色のofoだけではない。オレンジのMobikeは2018年4月に美団に買収されたが(そのため名称は「美団単車」へと変更され、美団のアプリから利用することになる)、買収時の情報公開で明るみになったところでは、2018年の4月4日から30日までについて4億700万元の赤字が発生したとしている。単純計算すれば1日あたり1500万元(約2億4000万円)、1年で55億元(約880億円)もの赤字がでている計算となる。加えて同社は海外にも展開しているが、進出先のひとつであるドイツのベルリンでEU一般データ保護規則(GDPR)に違反したとして調査を受けている。
経営不振ばかりが話題になるが、利用自体は可能だ。道には故障車も目立つが乗れる車両もあるので興味ある人は乗ってみよう。
■中国当局、ゲームタイトル認可再開へ
2018年後半は中国政府(国家新聞出版広電総局)によるオンラインゲームの認可が停止する異常事態であったが、同年12月末よりそれが再開された。1月25日までに4回発表されているが、人気ゲームベンダーのテンセント(騰訊)やネットイース(網易)のタイトルは少ない。ゲームの認可が再開したとはいえ、元の状況に戻ったとはいい難い。
■12月12日のECイベント「双十二」、リアルショップを重視
12月12日はアリババが仕掛けるオンラインショッピングの日「双十二」だ。よく知られている「双十一」がB2CのECサイト「Tmall(天猫)」をプッシュする日なら、「双十二」は「タオバオ(淘宝)」やクーポンサイトの「コーベイ(口碑)」やフードデリバリーの「アーラマ(餓了me)」をプッシュして、これらサービスを認知してもらうセール日だ。利用すると割引になる特別なクーポンを配布するキャンペーンに200万店が参加し、0時から正午までにコーベイの利用数は800万と双十一よりも2割多い利用数を記録した。こうしたリアルショップと連動したイベントは2014年よりはじまり5年目となる。来年も同じイベントが開催されるので、中国在住者はもちろん、中国での飲食業に携わる人にとっても見逃せないイベントとなる。
ECサイトについては、どうも各ECサイトがいい成績を残せていないのか、結果を公表していない。これについては11月11日の双十一で既にほしいものを十分に買い、買わなければいけないような状況にないからという分析がある。ここで気を吐いたのが、ライブストリーミング(直播)やTikTok(抖音)などのショートムービー(短視頻)を活用した販売だ。一番上の微信の記事でも書いたが、ECにおいてもスマートフォンでのリッチコンテンツが受け入れられやすくなった。
ピンヅドゥオドゥオの双十二戦略は農産物だった
また双十二で存在感を見せたのが2018年にメジャーなECサイトに躍り出た「ピンドゥオドゥオ(pin多多)」だ。ピンドゥオドゥオはタオバオよりも安かろう悪かろうな商品が多く若者に人気というイメージがある。そのピンドゥオドゥオが双十二に仕掛けたのが貧しい農村からの「農産物」の販売だ。同サイトは「多多助農」という1コーナーにおいて、去年の双十二の4.3倍増となる国家級貧困県の農村の農産物を販売。公益性とおいしい野菜の販売に成功した。確かに生鮮食品はすぐに消費するので双十一での買い物に影響しないので売れる要素があるわけだ。
山谷剛史(Takeshi Yamaya)
フリーランスライター。
2002年より中国・アセアン諸国・インドのコンシューマーIT中心に、「ニュース+実体験」をもとにリアルな現地事情を執筆している。
連載は『中国トレンド通信(日経トレンディネット)』『ニーハオ!中国デジモノ(同)』『ミライチャイナ(ITMedia)』『アジアIT小話(ASCII.jp)』など多数。
著書は『中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立(星海社新書)』など。
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