中国IT動向をキャッチアップ!月刊中国ネットニュースまとめ【2018年12月号】
中国在住ITライター山谷剛史さんが現地で集めたネット関連ニュースをまとめてお届けします!
変化の速い中国の状況を把握するために、ぜひチェックしておいていただきたい中国のインターネット関連ニュースを現地在住のITライター山谷剛史さんがまとめてご紹介します!
今月も日本からはなかなかつかみきれないリアルな動向をまとめてキャッチアップ出来ますので、ぜひ最後までチェックしてください。
■中小スマートフォンメーカー、続々と脱落
中国のスマートフォン売り場で買えるブランドは限られてきた
IDCによると中国向け出荷台数では同3カ月間で前年同期比10.2%減の1億300万台となり、スマートフォンが以前より売られなくなっている。また旭日大数据によると、2018年第三四半期の中国スマートフォンの中国国内外を含むメーカー別出荷台数は、1位が華為(ファーウェイ)で5601万台で、以下OPPOが3212万台、vivoが3022万台、アフリカ市場などに強い伝音が2872万台、小米(シャオミ)が2838万台、レノボが1198万台と続いた。
元気なスマートフォンメーカーはここで名前が出たメーカーくらいで、以前は強かった金立(gionee)は破産を発表し、マニア向けで支持を得ていた錘子科技(Smartisan)は夜逃げのような状況となり、中国市場では華為、OPPO、vivo、小米の4強状態となっている。かつては人気だったサムスンも中国の同四半期では60万台しか売れなくなった。こうした中、小米は女性向けにカメラ機能を強化した美図(Meitu)と提携を発表を行い、今後美図が強い女性向けスマホをリリースしていくと発表。今後主要メーカーが特徴ある中小メーカーから技術を集めてスマホをリリースしていくだろう。
このうちスマート製品をリリースする小米は、美図と提供して女性向けスマートフォンを出していくだけでなく、Ikeaと提携をしたり、Kindle対抗の電子ブックリーダー投入を発表するなどスマートフォン以外の分野も強化している。
■TikTok中国版「抖音(ドウイン)」がショートムービー普及をけん引
2018年はTikTok中国版こと「抖音(ドウイン)」がけん引した年といえる。字節跳動(バイトダンス)は「10月までに日間アクティブユーザー数は2億超、月間アクティブユーザーは4億超」となったと世界互聯網大会で発表している。6月の段階でのアクティブユーザー数は日間で1億5000万、月間で3億となっていたので、今年下半期でも急激に利用者が増えているわけだ。
11月に発表されたネット動画に関するレポート「2018年中国網絡視听発展報告」によると、今年の6月までで抖音などのショートムービー投稿型SNSの利用者数は5億9400万人で、動画サイト視聴者数とほぼイコールになるほどショートムービー投稿型SNSは普及した。またショートムービー投稿型SNSの市場規模は前年比で倍増(106%増)の118億元(約1900億円)を記録するなど、市場が急拡大している。
中国国内では阿里巴巴(アリババ)や騰訊(テンセント)が競合する同種のサービスをリリースしたほか、中国国外では米国のAppStoreで期間的に最もダウンロードされたアプリとなる記録をつくるなど、世界にも影響を与えている。
ショートムービー投稿型SNSが快進撃の一方、政府のコンテンツ浄化キャンペーンにより、数十万または100万以上の不良コンテンツが削除されたというニュースも報じられた。
■テンセント、新規オンラインゲームライセンスが下りない中、微信向けゲームを強化
2018年後半はオンラインゲームのライセンスがおりない問題が発生していた。ゲーム最大手の騰訊(テンセント)も例外でなく、ロングランの人気のゲーム「王者栄耀」をはじめとした同社のゲームを運営するしかなく、そこに顔認証などの導入など「健康的なゲーム環境」の導入を進める動きがみられた。
一方で微信(WeChat)の小程序(ミニプログラム)から遊べるライトなゲームについては、無数のゲームが次々と新規登録されている。だがシンプルなゲームなので模倣作品が多く、クリエイティブな作品が少ないことが問題となっていた。そこでテンセントは、クリエイティブな作品に対しては、売上の分配の割合を10%上乗せする報奨金制度を発表した。同社はクリエイティブな作品を保護しクリエイターの利益を尊重する姿勢をアピールした。
微信から遊べる人気のゲーム「物理弾球」。
だがこれとそっくりなタイトルのゲームが多数リリースされている
■第2のECサイト「京東(JD)」に陰り
モールなどのリアル店舗も双十一セールを行った
「阿里巴巴(アリババ)」のECサイト「天猫(ティエンマオ)」や「淘宝(タオバオ)」に続くECサイトの「京東(ジンドン)」の勢いに陰りが見え、勢いに「(〓多多。〓は手へんに并)ピンドゥオドゥオ」が京東を超えるかもしれない。天猫と京東はB2CのECサイトであり、淘宝とピンドゥオドゥオはC2Cなので、ECサイトの種類としては若干異なり、またC2C人気は根強くあるといっていいだろう。
今年京東といえば、米国でのCEOの劉強東氏が女性暴行の疑いで逮捕されるニュースが話題となり、悪いイメージがついてしまった。四半期ベースで同社サービスのアクティブユーザーが増え続けていたのだが、7~9月の四半期では初めて減少した(9月末での利用者は3億520万)。企業の市場価値も下がり、ピンドゥオドゥオとの差はわずかとなってきている。
また11月に浙江省で開催された、世界における中国のインターネット強国ぶりをアピールする意味合いのあるイベント「世界互聯網大会(世界インターネット大会)」において、中国著名ネット企業の代表が一堂に会するのに京東の劉強東氏だけが欠席したことで、投資家が見切りをつけて同社の株価は大きく下落している。マイナス要素といえばほかにも11月に同社が他社に先駆けて開発していたスマートスピーカーについて、その開発部門を解散することが伝えられている。
とはいえ11月11日の双十一セールにおいて、前年を超す売上を見せるなど一定の存在感を示せた(同社は双十一セールと銘打って、10月20日から11月15日まで27日もセールを続けた)。また11月に同社の越境ECサイトを「海〓全球(〓は国がまえに屯)」とリニューアルしたうえで越境ECも強化する姿勢を見せている。
■盒馬鮮生で食品偽装、賞味期限切れの食品を再利用
2018年の中国のインターネット業界では、阿里巴巴(アリババ)提唱の「新零售(ニューリテール)」が話題になったが、その代名詞的な存在のスーパー「盒馬鮮生」で食品偽装が11月と12月にわたっておきた。食品偽装とは、食品について生産日時を偽装し、売れ残った商品を再度新しい生産日時に書き直して再販したというもの。盒馬鮮生サイドは最初に問題が報じられた際に、問題を発生させないと宣言したものの、その後も同様の現象が発生していて問題は解決できていない。
「スマホを利用したショッピングなどのスマート体験」「スピーディーな配達」「その場で買った魚を調理してくれて家族で楽しめるスーパー」ということで話題だったが、従来の小売りから発生していた、賞味期限に関する偽装問題のシステム的な解決は、新零售になっても解決できていなかった。小売りの信用が来年の新零售の焦点となるかもしれない。
■そのほかの大きなネットニュース
各所で報道されているので詳細は省くが、以下の話題もチェックしておきたい。
世界で報じられた新華社と捜狗による「AIアナウンサー」
・世界互聯網大会上で、本物と見間違えんばかりのAIによる司会者が登場し話題に。
・双11セール、11月11日の1日で、主役の天猫は2135億元(3兆5000億円弱)の売上、EC全体では3000億元(約5兆円)以上の売上を記録
・イタリアブランド「ドルチェ&ガッバーナ」が中国向け動画広告に端を発して炎上。中国市場から追い出される。
・重慶の路線バスが乗客のトラブルにより、橋上から転落し死者多数となった事件がネットで話題に。
・経営危機が報じられるシェアサイクル「ofo」、利用時のデポジット返金に即時対応できず1000万人以上が返金を求める騒ぎに
・テンセントの微信支付(WeChatpay)、日本でLINEPAYと提携
山谷剛史(Takeshi Yamaya)
フリーランスライター。
2002年より中国・アセアン諸国・インドのコンシューマーIT中心に、「ニュース+実体験」をもとにリアルな現地事情を執筆している。
連載は『中国トレンド通信(日経トレンディネット)』『ニーハオ!中国デジモノ(同)』『ミライチャイナ(ITMedia)』『アジアIT小話(ASCII.jp)』など多数。
著書は『中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立(星海社新書)』など。
Weibo公式の中国向け広告コンテンツ拡散支援サービス「WEIQ(ウェイキュー)」は
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