中国IT動向をキャッチアップ!月刊中国ネットニュースまとめ【2018年11月号】
中国在住ITライター山谷剛史さんが現地で集めたネット関連ニュースをまとめてお届けします!
変化の速い中国の状況を把握するために、ぜひチェックしておいていただきたい中国のインターネット関連ニュースを現地在住のITライター山谷剛史さんがまとめてご紹介します!
今月も日本からはなかなかつかみきれないリアルな動向をまとめてキャッチアップ出来ますので、ぜひ最後までチェックしてください。
■インシュアテック商品「相互保」が話題も販売停止命令に
左:相互保 右:支付宝では様々な保険商品が販売されている
アリババ系の金融企業のアントフィナンシャルは10月、同社の支付宝(Alipay)上で「相互保」という保険商品を販売した(その後相互保は相互宝に名前を変えている)。この相互保は、その名の通り加入者が相互に助け合う新しい保険であり、インシュアテック(インシュアランス+テクノロジーの合成語)の商品といえる。
これは保険加入者が重大な疾患にかかって治療を受けた際に領収書や書類を見せることで最高30万元の保険金を受け取ることができ、それに了解した無数の加入者が数角(1角=0.1元)程度の少額のお金を支払うというもの。申請人の芝麻信用の信用スコアが650点以上で、申請人が60歳未満で、一定の健康条件を満たすというのが条件。信用スコア650点というのは、中国人が普通に生活していれば普通に獲得できるハードルの高くないスコアであり、毎月1人あたり数角の負担で、将来最大30万元保険金が保証されるとあって、発表以降多くの先進的ユーザーが飛びついた。
ただし斬新な商品なのでか、中国銀行保険監督委員会は翌11月に販売停止を命令している。
■中国政府、海南省をブロックチェーン重点開発拠点に
10月16日に海南省が自由貿易区になると内閣に相当する国務院が発表した。海南省の自由貿易区では新興産業やハイテク産業に特に重点が置かれることとなり、特にブロックチェーンの技術が海南島で様々な入居する企業により強化される。先立つこと10月8日に海南省自由貿易区にブロックチェーン試験区ができた。
既に海南島のソフトウェアパーク「海南生態軟件園」では、バイドゥ(百度)、アリババ(阿里巴巴)、テンセント(騰訊)のBAT3社のほか、アントフィナンシャル、ファーウェイが入居している。ほかにもセキュリティの360など有力企業が入居予定となっている。
■国慶節でミニアプリ(小程序)利用が伸びる
左:同程藝龍のミニアプリでのホテル予約
右:紅包で同程藝龍のミニアプリ利用者を呼び込む
10月はじめからの国慶節の旅行シーズンに関する様々な報告があがってきた。中国旅遊研究院によると、国慶節初日となる10月1日の観光客数は前年比7.5%増の1億2200万人。またrumamaによると、海外旅行人気国は、今年も日本がトップで以下シンガポールとベトナムが続いた。10月の海外旅行の予約は7月からあったという。
ネットサービスにおいては、微信(WeChat)の小程序(ミニアプリ)内の、旅行予約サービスの利用が増えたのが今年の特徴だ。現在、携程、Qunar、Rumama、藝龍、同程など大手がいずれも微信内のミニアプリをリリースしている。特に11月26日に香港で上場した業界大手の同程藝龍は、微信からのミニアプリを活用したホテル予約が去年に比べ倍増したという。ミニアプリは平時は気軽に遊べるゲームアプリが人気だが、国慶節前には同程藝龍がミニアプリランキングで1位となった。アプリそのものはインストールせず、微信を立ち上げてそこからクラウドの同程藝龍ミニアプリを検索するなりして立ち上げて、旅行予約や現地情報をチェックするというわけだ。
これには微信小程序が微信利用者に認知されたという面もあるが、利用すれば利用するほど得する紅包(ラッキーマネー)や特価のホテルを用意するといった仕掛けが原因といる。紅包というと11月の双十一商戦のイメージがあるかもしれないが、旅行する人々は国慶節の旅行サイトにも注目しているわけだ。
■微博(Weibo)や人気のゲーム「王者栄耀」などで子供向けネットサービスの利用制限が加速
微博利用者数の推移(eMarketer調べ)
11月1日より微博(Weibo)において、14歳未満の登録ができなくなる。ただし近々14歳未満の子供向け微博をリリースするとしている。微博の月間アクティブユーザー数は4億4600万で、日間アクティブユーザー数は1億9500万だ。2017年微博用戸報告(Weiboユーザーレポート)によれば、18歳以下の利用者は、全体の15.7%と少数派だ。
王者栄耀の未成年者向け「健康系統」
微博が初めてではない。中国のゲーム最大手でもあるテンセントは11月、人気ゲーム「王者栄耀」に導入済みの未成年向けゲームプレイ管理システム「健康系統」をアップデートし、公安実名認証システムとリンクし、近い将来王者栄耀を筆頭に顔認証システムも導入すると発表した。健康系統は12歳未満はゲームは1日1時間、12歳以上の未成年者は1日2時間をプレイ時間の限度とするもの。また今年6月、課金額が大きい未成年に対して支払い元に確認をする専門チームをつくると発表している。
今年7月にはバイトダンス(字節跳動)の「Tik Tok」の中国版「抖音」において、課金に保護者の許可が必要となったり、コンテンツ配信体制も未成年向けにするといった対処を行うことを発表している。
■テンセントとビリビリが提携。コンテンツ相互補完関係に
騰訊視頻
ビリビリ動画
テンセントとビリビリが提携を発表した。ビリビリは安定した資金源をバックに抱えることになる。テンセントとビリビリは一定の条件下で相互の動画を配信できるようになり、また両社の状況を考慮してコンテンツ購入などを行い、また両社のコンテンツについてメディアミックスを積極的に行っていくという。
動画配信最大手であるテンセントと、日本のコンテンツを多く含み大都市の学生世代に人気の動画サイトであるビリビリが提携することにより、若い世代によりテンセントの動画がリーチできるようになる一方、テンセントでもビリビリが所有する人気の日本のアニメコンテンツが配信される可能性はある。
山谷剛史(Takeshi Yamaya)
フリーランスライター。
2002年より中国・アセアン諸国・インドのコンシューマーIT中心に、「ニュース+実体験」をもとにリアルな現地事情を執筆している。
連載は『中国トレンド通信(日経トレンディネット)』『ニーハオ!中国デジモノ(同)』『ミライチャイナ(ITMedia)』『アジアIT小話(ASCII.jp)』など多数。
著書は『中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立(星海社新書)』など。
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