中国IT動向をキャッチアップ!月刊中国ネットニュースまとめ【2018年10月号】
中国在住ITライター山谷剛史さんが現地で集めたネット関連ニュースをまとめてお届けします!
変化の速い中国の状況を把握するために、ぜひチェックしておいていただきたい中国のインターネット関連ニュースを現地在住のITライター山谷剛史さんがまとめてご紹介します!
今月も日本からはなかなかつかみきれないリアルな動向をまとめてキャッチアップ出来ますので、ぜひ最後までチェックしてください。
■美団点評が上場。BATに続く第4のネット企業に
左:「美団」 右:「大衆点評」
9月20日、口コミサイトやフードデリバリーなど主に食関連のネットサービスを手掛けるメイトゥアンディエンピン(美団点評)が香港証券取引所に上場した。上場日当日の時価総額は3500億元弱で、BATと呼ばれるバイドゥ(百度)、アリババ(阿里巴巴)、テンセント(騰訊)に続く第4の企業となった。つまりジンドン(京東)やシャオミ(小米)を上回る。
美団点評は、もともと美団と大衆点評という二つの口コミ・クーポンサイトが2015年10月に合併した企業で、現在こそテンセントが投資しているが、美団はアリババ、大衆点評はテンセントが投資をしていた。また2018年4月にはシェアサイクルのMobikeを買収している。
美団点評で知られるサービスのひとつとして、フードデリバリーの「美団外売」があるが、調査会社のDCCIによると、2018年第1四半期において、売上額でフードデリバリー市場の59.1%が同社サービスであるという。
■アリババとテンセント、TikTokが強いショートムービーに参入
TikTokが強いショートムービーに、アリババとテンセントがそれぞれアプリを用意し参入した。大手の参入で、TikTokが最大シェアのショートムービーのトレンドは変わっていくかもしれない。
左:アリババのショートムービーアプリ「鹿刻(ルック)」
中央・右:テンセントのショートムービーアプリ「騰訊微視(ウェイシ)」
アリババのショートムービーアプリは「鹿刻(ルック)」。アリババのサービスには動物の名前が付くのが定番で、このサービスにも鹿の字がつく。淘宝網の商品ページへ跳ぶことができるのが特徴だ。
テンセントのショートムービーアプリは騰訊微視(略称微視、読み方はウェイシ)。こちらはウィーチャット(微信)のモーメンツ(朋友圏)に実装された機能で、ウィーチャットからショートムービーを撮ってシェアしたり見たりできるというもの。以前アプリを公開していたが取り下げて9月に再登場し、AppStoreの無料アプリランキングでトップとなるほどの人気に。
商品やサービスを紹介するなら両アプリの活用も考慮する必要があるだろう。
■テンセント、スターバックス対抗のカフェと提携
テンセント(騰訊)が急成長を遂げ中国全土に展開するカフェ「Luckin Coffee(瑞幸珈琲)」と提携した。Luckin Coffeeは2017年11月に創立し、わずか1年弱で13都市に約1000店舗を展開。ネット上ではスターバックスをライバル視しているともいわれている。先月、スターバックスがアリババ系のフードデリバリーのelemeと提携し、デリバリーを開始した。
テンセントと瑞幸珈琲は、ビッグデータやモバイルインターネットやAIなどを活用するスマート小売ソリューションを開発する。たとえばウィーチャット内のミニアプリから専用アプリを起動し、スマートフォンで注文ができるようにしたり、テンセントのビッグデータを活用して各人のおすすめのテイストをお勧めするといったものが考えられている。
■シェアカー大手の「TOGO途歌」が損失がかさみ撤退
シェアカーの「MoreFun」と「GoFun」。QRコードが車体にある
シェアサイクルのように専用アプリからQRコードをスキャンして車を利用するシェアカーサービスの一社「TOGO途歌」が市場から撤退した。10数名のメンテナンス要員やガソリン代や駐車場代を未払いのまま、展開している南京市から突如撤退した。
南京だけではない、北京、深セン、広州などTOGO途歌の展開先の他都市においても、スタッフの多くが賃金未払いで離職し、駐車場代が払えない状況になっているという。
IT業界への投資が続く中で、2017年だけでTOGO途歌などシェアカーに764億元の融資をしている。また認知されて利用者が増え、街中でも見る機会がふえている。しかしレンタカーなどの他の交通手段と競合する中で、いまだ利益が出せずにいる。
■政府方針、ビッグデータやIoTなどに1000億元投資
中国政府発展改革委員会と国家開発銀行は、5年内にビッグデータ、IoT、クラウドコンピューティング、新型スマートシティなどに1000億元(約1兆6200億円)投入していくと発表した。専門の機構を設立し、重点プロジェクト中心に投資していくとしている。
■9月のイベントでテンセントやアリババなどが新発表
杭州で開催されたアリババ雲栖大会
インターネット系の大きなイベントとしては、上海で「2018世界人工智能大会」が、杭州でアリババによるクラウドサービス「アリババクラウド」関係の展示会「雲栖大会」、それに独創的な商品やスペースが展示される「タオバオメーカーフェア(淘宝造物節)」といったイベントが開催された。
こうしたイベントに合わせてネット大手各社も新発表を行った。世界人工智能大会では、テンセントがAIオープンプラットフォームを発表。雲栖大会においては量子チップを開発する傘下の半導体企業「平頭哥」を発表した。
基本的には毎年開催されるイベントなので、気になり参加してみたい場合は、早い段階で事前予約することをお勧めする。
山谷剛史(Takeshi Yamaya)
フリーランスライター。
2002年より中国・アセアン諸国・インドのコンシューマーIT中心に、「ニュース+実体験」をもとにリアルな現地事情を執筆している。
連載は『中国トレンド通信(日経トレンディネット)』『ニーハオ!中国デジモノ(同)』『ミライチャイナ(ITMedia)』『アジアIT小話(ASCII.jp)』など多数。
著書は『中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立(星海社新書)』など。
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