中国IT動向をキャッチアップ!月刊中国ネットニュースまとめ【2018年3月号】
中国在住ITライター山谷剛史さんが現地で集めたネット関連ニュースをまとめてお届けします!
変化の速い中国の状況を把握するために、ぜひチェックしておいていただきたい中国のインターネット関連ニュースを現地在住のITライター山谷剛史さんがまとめてご紹介します!
日本からはなかなかつかみきれないリアルな動向をまとめてキャッチアップ出来ますので、ぜひ毎月チェックしてください。
■今年の春節はインタラクティブなスマホ向け広告が焦点に
中国の大型連休「春節」が到来。春節には中国人旅行客のインバウンドが話題となるが、試験的なネットサービスがリリースされるタイミングともなる。休み期間で人と人とが新年の挨拶をするタイミングで、ネットの面白ネタを求めているタイミングだけに、様々な試みが行われてきた。例えば過去にはアントフィナンシャルのアリペイ(支付宝)やテンセント(騰訊)のウィーチャットペイ(微信支付)の残高が増える紅包を、テレビでは中国版紅白こと「春晩」で、また企業がばらまいたことにより、電子決済の普及が加速した。
今年の春節は、HTML5を使ったH5と呼ばれるゲーム感覚のインタラクティブな広告が、次々と投じられ話題となった。ウィーチャット(微信)でシェアしたくなる仕掛けがあることが特徴だ。この春節での広告合戦により、今後は面白くてシェアしやすくなる広告でないと話題になりにくくなるだろう。
今年も、5億元を出したアリペイのアントフィナンシャル、10億元を出したアリババ(阿里巴巴)のタオバオ(淘宝網)、2億元を出したテンセントのインスタントメッセンジャー「QQ」をはじめとして、多数の企業が紅包を用意し客寄せを行った。また定番アプリの多くについて、春節前に赤色ベースのお正月ムードのアイコンに変化した。定番アプリが春節仕様にアップデートするならば、変化しないアプリは物足りなさを感じてしまうわけだ。
次々に投入される様々なH5広告
■ショートムービーでMCNが急増。クオリティが顕著に上昇へ
2017年の後半から、移動通信のデータ通信使い放題プランがキャリア各社から投入され、データ通信がより身近になってきた。こうした中で動画などのリッチコンテンツを地下鉄やバス内で見る人を以前に増してみるようになった。中国の動画トレンドのひとつに、数秒程度の「ショートムービー(短視頻)」があり、IT系メディアの「36kr」のショートムービーに関するレポートによると、2017年の第3四半期においてショートムービー利用者の視聴時間は前年同期比4.1倍となったという。春節期間中も、暇をもてあます人がショートムービーアプリを視聴し、SNSで知り合いと、リアルで親族や友人らとシェアした。ショートムービーの定番アプリは「秒拍」「西瓜視頻」「快手」など複数あり競争状態にあるが、どれも素人から玄人まで面白動画を投稿し、ショートムービーアプリは入れて当たり前という状況になっている。
そうした中、動画投稿者を抱えサポートするMCN(マルチチャンネルネットワーク)の団体が中国で急増しているという。調査会社のAnalysys易観のショートムービーに関するレポートによると、2016年はMCN機構は980社だったのが、2017年には2300社に増加。2018年には4500社になると予想している。広告主がMCNに依頼し、短いながらも見る人にインパクトを与えるショートムービーの広告が今後より目立つようになる。
ちなみに同レポートによると、MCNはショートムービーに限らず、様々なプラットフォームで存在し成長しているとしている。
■アリババ、ブロックチェーンを越境ECの信用向上に活用
アリババ傘下で越境ECを扱う天猫国際(Tmall)と菜鳥(CAINIAO)は2月末、ブロックチェーンを活用した越境ECにおける配送追跡システムの運用を開始した。生産情報や配送情報や通関情報など全行程の情報のチェックが可能となる。すでに菜鳥がカバーする上海、深センなど保税区で実施されていて、50を超える国の3万種類の商品にこのシステムが適応されている。菜鳥は主にビッグデータを活用し、様々な荷物を適切な加入物流業者に自動で振り分けるスマート物流業者。
この動きの背景に、越境ECについて去年多くの偽装事件、ないし偽装のうわさが流れていて、信用が不十分という点が挙げられる。例えば外国のブランドシューズを注文したところ、中国の偽造業者が作ったシューズが、配送情報すら書き換えられてあたかも外国からのように届いたという情報がネットを駆け巡った。3月15日の世界消費者権利デーにおいても、一部メディアで、越境ECでニセモノが売られていることが多いと槍玉に上がっている。こうした中でできるだけ信用を回復し、健全な越境EC市場をつくるべく、ブロックチェーンが採用された。
■大手ECのタオバオでレンタルサービス開始。商品をシェアへ
EC最大手の「タオバオ(淘宝網)」でレンタルサービスが正式にスタートした。AndroidないしはiOS向けの淘宝網のアプリから「租」という文字で検索すると、レンタルチャンネルが表示される。
レンタル商品は多岐にわたり、スマートフォン・デジタル(一眼レフ)カメラ・PS4やPSVRなどのゲーム機・ノートパソコンといったデジタル製品のほか、コーヒーメーカーや空気清浄機などの白物家電、それにブランドバッグやアクセサリーなど。さらには赤ちゃん向けのおもちゃや搾乳機やイヤフォンなど、シェアには抵抗がある人がいそうなものまでレンタル対象商品となっている。
いくら中国でシェアビジネスブームとはいえ、それまでは中国人の多くが、汚れに抵抗を見せていたと記憶する。そうした商品のレンタルが行われるとすれば、人々の習慣は大きく変化したといえるが、なかなか前途多難と予想する。
写真左:タオバオのアプリから見られるレンタルチャンネル
写真右:タオバオでレンタルできるベビー用品
■シェアカーで本命となりうる大手IT企業が続々参入
中国でEV(電気自動車)を活用したシェアカーは、以前はベンチャー企業ばかりでシェアサイクルと比べて盛り上がりに欠けていたが、大手ネット企業の参入で盛り上がるかもしれない。去年下半期から配車サービスの滴滴(ブランド名。北京小桔科技が運営)や、モバイクや、フードデリバリーや地域情報大手の「美団」が参入を発表した。
滴滴は一部都市でシェアカーサービスを開始したが、2月には比亜迪や北京新能源や江淮汽車など中国車メーカー11社とシェアカーで提携を発表した。今までは中小企業がほそぼそとシェアカーを運営していたが、大手ネット企業の参入によりシェアカーが普及していく可能性はある。
シェアカーの「GoFun」。IT大手でないながら普及に努めた
■中国副首相「工業向けIoTを重点発展領域に」と強調
中国副首相(当時)の馬凱氏は2月11日、工業インターネットの展示会において、政府にとって工業インターネットは発展の重点領域であることを強調した。モノづくりの現場でのIoT導入をはじめ、生産体制の改革など、世界に通じるレベルにあげることなどを挙げた。
中国は2016~2018年の3か年計画において、モノづくりの現場でのIoT導入をはじめ、研究などを一定レベルまで引き上げることを目標としている。この発表は3か年計画実現に向けての念押し的な発言であったと推測する。こうした中で2月には黒竜江省で工業向けIoTとスマート製造に関する国家級産業モデル地区が新たにスタートし、上海では製造業のスマート製造への転化を目指したスマート製造産業協会が発足するなど、スマート製造に向けた動きが各省市で進んでいる。
山谷剛史(Takeshi Yamaya)
フリーランスライター。
2002年より中国・アセアン諸国・インドのコンシューマーIT中心に、「ニュース+実体験」をもとにリアルな現地事情を執筆している。
連載は『中国トレンド通信(日経トレンディネット)』『ニーハオ!中国デジモノ(同)』『ミライチャイナ(ITMedia)』『アジアIT小話(ASCII.jp)』など多数。
著書は『中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立(星海社新書)』など。
Weibo公式の中国向け広告コンテンツ拡散支援サービス「WEIQ(ウェイキュー)」は
中国向け越境ECや訪日中国人へのプロモーションに最適!
中国SNSのインフルエンサーの影響力を活用し広告コンテンツの拡散を強力にご支援します!
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